風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

ダニール・トリフォノフ ピアノリサイタル @東京オペラシティ(2月9日)

2023-02-13 00:43:10 | クラシック音楽



J.S.バッハ(ブラームス編):シャコンヌ BWV1004
J.S.バッハ:フーガの技法 BWV1080(全曲)
(*コントラプンクトゥスXIIとXIIIは基本形と転回形を両方、またXIVはトリフォノフによる完成形を演奏)
J.S.バッハ(M.ヘス編):コラール「主よ、人の望みの喜びよ」BWV147
C.P.E.バッハ:ロンド ハ短調 wq.59-4(アンコール)
W.F.バッハ:ポロネーズ第4番 ホ短調 F12-4(アンコール)


以前フレイレがインタビューで好きな若手ピアニストを質問されて「トリフォノフのショパン」と答えていたのを読んで以来、いつか聴いてみたいと思っていたピアニスト。
今回は残念ながらショパンは聴けませんでしたが、9日の東京オペラシティと10日のサントリーホールの両公演に行ってきました。
まずは9日の感想から。

本日はオールバッハプロ。
何よりまず、冒頭から私の知っているピアノの音(スタインウェイ、ベーゼンドルファー、ヤマハ、カワイ)と全く違うことに戸惑いました。どこのピアノ??と。
3階席からはメーカーの文字までは見えず、今回も休憩時間に一階まで降りて確かめたところ
「FAZIOLI(ファツィオリ)」
名前だけは知っていたけれど、こんなに個性的な音のピアノだったとは。。。
チェンバロぽいというか、純正律ぽいというか(←専門知識皆無の素人の勝手なイメージです)。
和音になっても音が混ざらず、各音がどこまでも真っすぐに届くような。
記憶が遠くなってきているけど、バレンボイム・マーネの音に少し近いかも。
ただ異なるのは、ファツィオリからは「音の色」が全くと言っていいほど見えないこと。
その点では、ファツィオリとファツィオリ以外に分けてもいいくらい、他のメーカーと違うように感じる(あ、ベヒシュタインは未聴です)。
もしこれがピアノの個性ではなくトリフォノフの個性なのだとしたら、ロシア系のピアニストでは非常に珍しい。彼の師匠のババヤンは、音の色がはっきり見えるタイプだったのだけれど。
今日の演奏、アンデルシェフスキのときと同じくらい色が見えませんでした。
でもなんとなく今回は、ピアノのせいが大きいような気がする
この答えはトリフォノフが別のメーカーのピアノを弾くのを生で聴ける機会がくるまで、おあずけかな(私の場合はネット配信だと色が見えにくいので)。
帰宅してから知りましたが、トリフォノフはファツィオリを好んで弾くピアニストなんですね。ショパコンでも、過去の来日公演でもそうだったと。

今日はこのピアノの音の個性に耳が慣れるまでに時間がかかってしまい、というよりも最後まで慣れたとは言い難いけれど、初めて聴いた「シャコンヌ(ブラームス編)」、とてもよかった。左手だけで弾いていること、全く忘れて聴いていました。昨年ババヤンで聴いたブゾーニ編のような華やかさはないけれど、素朴で誠実な感じのこの編曲、私はとても好き。バッハ、ブラームス、シャコンヌと私の「好き」が勢ぞろいしているので、好きじゃないわけがないですが。

シャコンヌから拍手を挟まずに「フーガの技法(全曲)」へ。
なんとこれも暗譜。
どういう頭の構造してるんだろう。私なら順番を間違えたり、一曲とばしたりしちゃいそう。と思いながら聴いていたら、途中で暗譜が少しとんだ(主題が不自然に崩れて、しばらく音が彷徨っていた)ように聴こえたのだけれど、気のせいだろうか
聴き慣れてる曲ではないので自信ないけど、一応自分用覚書として書いておきます。
いずれにしても、今日のトリフォノフはあまり本調子ではないような印象を受けました。
※追記:この曲に詳しいトリフォノフのファンの方が「11曲目で半端に休憩が入ったのが悪かったのか、13曲目で暗譜が怪しくなり、14曲目のコラール部分は丸々すっ飛んでいた」とツイートされていました。

また今日の演奏は、抑制的というか客観的というか、聴く者が高揚感を覚えるような感じの演奏ではなく。静かな高揚感という感じもなく。
これがトリフォノフの個性なのかな?とこの時は思ったのだけど、翌日のサントリーホールでの彼は別人二十八号だったのでありました(その感想は改めて)。

一度舞台袖に引っ込んでから弾かれた、本編最後の「主よ人の望みの喜びよ」。個人的には、この曲が最も今日のトリフォノフとファツィオリの魅力が出ていたように感じられました。
どこまでも純粋な響きの音がまるで教会にいるようで、とても美しかった。
この曲も、フレイレが来日で弾いてくれた曲だったな。フレイレ、「これからは沢山バッハを弾きたい」って言っていたのにな。。。

アンコール2曲は「バッハぽいけどバッハぽくない。誰の曲だろう?」と思っていたら、バッハの子供達の曲だったんですね。とても美しい演奏でした。
今日の本編の曲とともに、トリフォノフのアルバムに収録されているそうです。

ところでトリフォノフって、演奏を終えると、最後の響きがホール内で消えきるかどうか微妙なうちにすぐに立ち上がってしまうんですよね・・・。聴く側としてはもう少し余韻がほしいところです・・・。
意外と気難しいピアニストなのかも、とも。



Daniil Trifonov – Bach: Cantata BWV 147: Jesu, Joy of Man’s Desiring (Transcr. Hess for Piano)
ここではスタインウェイを弾いていますね。

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