風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

群馬交響楽団 @すみだトリフォニーホール(10月29日)

2023-11-07 22:54:37 | クラシック音楽




来年末での引退を宣言されている井上道義さん。
聴くのは初めてでしたが、知人のオススメの指揮者さんであることもあり、はるばる錦糸町まで行ってきました。
久しぶりに4番を聴きたいこともあり(2008年のproms以来15年ぶり!)

【モーツァルト:ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488】
初めて聴く仲道郁代さんのピアノはあまり好みな音色ではなかったのだけれど(スミマセン…💦)、井上さん&群響との美しく温かな対話を聴かせてくださった3楽章、素晴らしかった
感動しました。
演奏後は涙を拭って井上さんとハグされていた仲道さん。そんな仲道さんを優しくエスコートする井上さん、ジェントルマン

【ブラームス :6つの小品 間奏曲 Op.118-2 イ長調(ピアノアンコール)】
優しく、でも深い想いを込めた音で弾かれた晩年のブラームスの間奏曲。
なんか、仲道さんから井上さんへ贈られている演奏のように感じました。
心に響く、素敵なアンコールだった。

(20分間の休憩)

【ショスタコーヴィチ/交響曲 第4番 ハ短調 作品43】
いやあ、、、

井上さん、ブラヴォーーーーーーー

素晴らしいとか、そういう言葉では表せないような、凄絶な演奏だった。
手が痛くなっても拍手し続けたよ!
そもそもタコ4という曲が井上さんにピッタリで、「井上さんそのものだ」と強く感じながら聴いていました。でも同時にちゃんと「ショスタコーヴィチそのもの」でもあり。
それを群響が井上さん指揮のもとで完璧に演奏しきってくれました。
巧さという点では群響より巧いオケはいくらでもあるだろうけれど、今日の演奏ができたのは群響だけと断言できます。
60分間、一瞬たりとも弛緩せずに、呼吸も忘れる状態のまま最後まで連れて行ってくださいました。

事前にyoutubeでこの曲についてのゲルギエフのコメントを聴いていたのだけど(下に動画を載せておきます)、その中で「個人的には、ショスタコーヴィチがスターリンのような暴君やドイツの独裁者にそれほど興味を持っていたとは思っていません。おそらく30歳にも満たない29歳の彼は、死が通常招かれざる客であり、この客が例外なく誰にでも訪れうることを知っていたのだと思います。この曲の後に私は拍手を望みません。それは不自然です」と語っていて、ゲルギエフがどこまで本心を語っているかはわかりませんが、この解釈は私も納得できるものでした。

そして、タコ4って井上さんの人生(ご自身がオペラにもされた一種独特の人生)そのもののような曲だな、と今日の演奏を聴きながら感じていました。
井上さんが引退までの間に今後タコ4を振られるのかどうかはわかりませんが、とても一言では言い表されない沢山のものが詰まったこの音楽も確実に前へと進んでいて、後ろに戻ることはない。
そんな確実に過ぎていく時間の瞬間瞬間を思いきり生きてきた、そして生きている井上さんの音に、とても大切なものを身をもって教えていただいているような気がしました。

演奏後は何度も呼び戻され、指揮台でクルクル踊るような仕草をしたり、ユーモアいっぱいな井上さん(ステージへの出方も独特笑)。
なんだか、すっかりこの指揮者のことが好きになってしまった。
11月の読響とのマーラー2番も伺います。

こちらは、本日終演後のご本人のコメント。やっぱり面白い人

そうそう、プレトークでご本人も仰っていたけれど、トリフォニーホールとショスタコーヴィチの相性は抜群でした


井上道義(指揮者)「人は何のために生きるのか 父母に捧げるオペラ」(明日への言葉…他人様のブログです)

「どれを聴く?」迷ったら→井上道義・ショスタコーヴィチ交響曲 コメント

 自分を肯定できるということが、自分を幸福と思える唯一の条件だと僕は思っています。ただし人さまにも神さまにもどう思われても良い!というくらい強い強い「自分の主観での肯定」でないと意味がないのですが。
 でも、言うは易し行うは難し。なにより肯定の前提の「自分の主観」を持つことが大変だ。僕は五十年をそのために費やした気さえする。・・・

 僕にとっては、日本でも米国でも欧州でも豪州でも、自分を生かせる場所こそが住む所。「日本人」として自分を定める根拠は「母が母国語」、今もそれだけ。あなたは「なぜ自分が日本人と言えるか?」という問いに何と答えますか?
井上道義『降福からの道 欲張り指揮者のエッセイ集』より @オペラ「A Way from Surrender ~降福からの道」のプログラム




Valery Gergiev introduces Shostakovich Symphony No 4
上で深く考えずにゲルギエフの言葉を引用しちゃったけれど、井上さんがゲルギエフ大嫌いとかだったらどうしよう💦と小心者の私は思わずググってしまったところ、昨年3月に東フィルとショスタコを演奏した後に、プーチンと懇意にしているゲルギエフが相次いで公演をキャンセルされていく風潮を懸念する内容のお話をされていたとのこと。
とはいえ音楽と政治の問題は本当に難しいですね…。特にロシアのような国では。

Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ジョルディ・サヴァール&エ... | TOP | 東京都交響楽団 第985回定期... »

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。