風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

マニュエル・ルグリ Stars in Blue @東京芸術劇場(3月9日)

2019-03-17 03:00:59 | バレエ



ルグリ、スミルノワ、チュージン、アッツォーニ。
好きなダンサーしかいないこの公演。
とはいえ2~3月はピアノリサイタルの予定がいっぱい入っているし…と迷っていたら、ペライアに加えアンスネスまでが公演中止となってしまったため(ペライア大丈夫かなぁ)、3日前にチケットを購入。三千円也。
土曜日の午後にふさわしい、瀟洒なとても素敵な公演でした
歌舞伎の一幕見もそうだけど、一流の公演をこんな風に気軽に手頃な値段で観ることができるのって、最高の贅沢だと思う。

※3階C列右手

『ソナタ』
振付:ウヴェ・ショルツ
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ
出演:シルヴィア・アッツォーニ、セミョーン・チュージン
三浦文彰(ヴァイオリン)、田村響(ピアノ)
チュージンと踊るアッツォーニを観て、彼女は小柄なんだなあと、そして踊りや演技のタイプがリアブコにとてもよく似ているのだなあ、と改めて感じたのでした。
ただチュージンとアッツォーニって踊りの相性があまり良くないような(ルグリは二人の相性はいいと言っているけれど)。個性が違い過ぎるのかな。違う個性でも相性がいいと化学反応が起きてかえって面白いこともあるものだけれど。もしまたこの二人を観られる機会があるなら、今度は物語的なバレエで観てみたいなと思いました。

ニコロ・パガニーニ「ネル・コル・ピウ変奏曲」
演奏:三浦文彰(ヴァイオリン)
パガニーニの曲を聴くのは、実は初めてだったような。ヴァイオリンって色んな弾き方ができるんですね~

『Moment』
振付:ナタリア・ホレツナ
音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ / フェルッチョ・ブゾーニ
出演:マニュエル・ルグリ
滝澤志野(ピアノ)
ルグリが素晴らしかった。。。。。。。。
彼の動きが表現するものの密度、強さ、自然さ、魅せ方。そして美しさ。
私はこの人の踊りに対する免疫が少ないので、イチイチ新鮮に感動してしまう。主張しすぎることなくちゃんと主張していた滝澤志野さんのピアノも、ルグリの踊りによく合っていたように感じました。

『瀕死の白鳥』
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:カミーユ・サン=サーンス
出演:オルガ・スミルノワ
三浦文彰(ヴァイオリン)、田村響(ピアノ)
ロパ様もそうだったけれど、瀕死のスワンと白鳥の湖のスワンってダンサーの踊り方が違いますよね。瀕死の方はより鳥っぽさを感じる。
スミルノワの瀕死の白鳥は、登場の瞬間から死にかかっていることがはっきりとわかるリアル鳥系で、リアルな肉体の死が前面に出ているように感じられました。それでも品と気高さが失われないのはさすがスミルノワ。
飛ぼうとしても飛べないところ。自分の意思とは関係のない何かにふわあと空から引き上げられているように見えて、そしてガックリと地面に落ちる体。なんだかぞわっとした。
好きなタイプの瀕死かと言われるとそうではないけれど、新鮮でした。スミルノワって意外に現代的なダンサーなのかもしれないと思った。

(休憩20分)

『タイスの瞑想曲』「マ・パヴロワ」より
振付:ローラン・プティ
音楽:ジュール・マスネ
出演:オルガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン
三浦文彰(ヴァイオリン)、田村響(ピアノ)
やっぱりチュージンはスミルノワと踊るとしっくりきますね。今回はチュージンだけがソロがなかったのが残念でした。彼のソロ、観てみたい。

『ノクターン・ソロ』「夜の歌」より
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン 「ノクターン第21番」
出演:シルヴィア・アッツォーニ
田村響(ピアノ)

フレデリック・ショパン「ノクターン 第20番(遺作)」、「華麗なる大円舞曲」
演奏:田村響(ピアノ)

ノイマイヤーの「夜の歌」というのがどういう作品なのかは知らないのだけれど、アッツォーニが最晩年のショパンであるように感じながら観ていました。楽しかったとき、悲しかったとき、そういった人生の色々を思い出しているような。アッツォーニはこんな風に舞台で一人で踊ると体の小ささを完全に忘れさせますね。ルグリやアッツォーニの表現の密度の濃さは本当に素晴らしい。。

続いて田村さんのピアノのみによる「ノクターン第20番」。こちらはショパンが二十歳の頃の作品。『戦場のピアニスト』のイメージが強いけれど、この曲、最後の最後で長調に変わって終わるんですよね(ピカルディ終止というそうで)。アッツォーニが踊った人生を振り返るような最晩年のノクターン21番から青春時代の暗さや悲しみを感じさせるようなノクターン20番に移って、それが最後にふっと長調に変わって、それから「華麗なる大円舞曲」が始まると、なんだか切なくて泣きそうになってしまった。若くして亡くなったショパンの、一番生き生きと華やかだった時代を感じるようで。終わりよければ全てよしという言葉があるけれど、人生ってそういうものではないのではないか、と最近思います。たとえ終わりが悲しいものであったとしても、確かにあった楽しいときも紛れもなく人生の一部で、その人が生きた全ての時間がその人の人生なのだと思う。というようなことを感じながら観て、聴いていました。
今年はショパンの音楽を多く聴けて嬉しい。

モーリス・ラヴェル「ツィガーヌ」
演奏:三浦文彰(ヴァイオリン)、田村響(ピアノ)
気分が変わって、お二人によるツィガーヌ。楽しかった!
よくこうもぴったりと呼吸を合わせられるものだなあ。

『OCHIBA~When leaves are falling~』(新作 世界初演)
振付:パトリック・ド・バナ
音楽:フィリップ・グラス
出演:マニュエル・ルグリ、オルガ・スミルノワ
田村響(ピアノ)
簡単なストーリーがサイトに載っていたけれど、原作を読んでいない私には作品の言いたいことがわかるような、わからないような
スミルノワは生身の女性というよりも、絹の精のように見えました(そういう原作ではではないようだけれど)。絹を求めて遥々東洋に来た男性が女性と出会ってなんやかんやあって、最後彼の手元には絹が残った、的な?って観たまんまやん^^;
ルグリとスミルノワは意外に相性がいいように感じました。まあ相性云々いうほどがっつり一緒に踊ってはいなかったけれど。それにしてもどちらも品格のあるオーラがすごい。

最後は、三浦さんと田村さんによる軽やかな『美しきロスマリン』の演奏にのせてカーテンコール
4人のダンサー達のエレガントさにうっとり
そして三浦さん、田村さん、志野さんが加わった7人で、ポスターと同じにはいポーズ
このカーテンコールがこの公演の魅力をいっぱいに表していたと思う。瀟洒でセンスがよくて、でも決して薄味ではない。ツイッターで多くの人が「大人の公演」」と書いていたけれど、本当にそういう感じの公演でした。素敵だったなあ。
カテコではパトリック・ド・バナも登場
これからもこういう気軽に観に行ける素敵な公演、いっぱい企画してほしいな。

spice:マニュエル・ルグリ『スターズ・イン・ブルー』バレエ&ミュージック記者会見レポート
otocoto:バレエ界のレジェンド、マニュエル・ルグリに『スターズ・イン・ブルー』の新境地について終演直後に聞いた



9日東京公演後(otocotoより)


公式twitterより。17日名古屋公演後。


公式twitterより。志野さんによる撮影だそうです(上手い~


同上


同上。
スミルノワ、神々しい。


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