シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

わたしは生きていける

2014-09-01 | シネマ わ行

作品の紹介を読むと一風変わった設定だったので面白そうだなと思って見に行きました。主演のシアーシャローナンはとても注目している若手女優さんという理由もありました。

16歳のエリザベス(シアーシャ)はアメリカからイギリスに住むいとこたちに初めて会いに来た。彼女は父親のつけたエリザベスという名前が大嫌いで周りの人にはデイジーと呼んでと言っている。髪を金髪に染め鼻ピアスをし常にヘッドホンで音楽を聞いている反抗期まっただ中といった雰囲気のデイジー。空港に迎えに来たのはいとこ兄弟の次男坊アイザックトムホランド。なんだか田舎のダサい子って感じでフレンドリーに接してくるけれどデイジーは一切打ち解けようとしない。家に着くと妹のパイパーハーリーバードがデイジーの到着を楽しみにしていてまとわりついてくるが、それもデイジーにとってはうっとうしいだけ。唯一長男のエディージョージマッケイがカッコ良くて少しドキッとした。

3人の母親アンナチャンセラーは仕事に忙しく家は散らかり放題だが、子どもたちにとってはパラダイスのようで隣の家の男の子もいつも遊びに来ていた。一緒に釣りに行こうとか、泳ぎに行こうとかアイザックは一所懸命デイジーを誘うがデイジーは素っ気ない。しかし、エディーとの間に少しずつ恋心が芽生え頑なだったデイジーの心が開き始める。

いとこ同士でありながらエディーとデイジーは恋に落ち、2人を中心に子どもたちは楽しい時を過ごす。しかし、それもつかの間、ロンドンで核爆発が起き第三次世界大戦へと突入しようとしていた。3人の母親はスイスに出張中で、子どもたちだけで田舎でなんとか暮らしていたが、デイジーはアメリカ人ということで大使館から脱出のための航空券を渡される。しかし、デイジーはこれを無視しエディーたちと一緒にいる道を選ぶ。

彼らのいる田舎にも軍隊がやってきて女子と男子を引き離し、離ればなれにさせられてしまう。デイジーは別れるときにエディーが言った「何があってもここに戻って来よう」という言葉を胸に預けられた先で脱走の準備をし始める。

戦争が舞台となっていますが、これ完全に青春物語ですね。原作もハイティーンをターゲットにしたものなんでしょうね。このあとパイパーを連れて疎開先を脱走しエディーたちと住んでいた家に戻ろうとするデイジーとその周辺で起きている悲惨な状況の描写があり、最終的に甘ったれた反抗的な少女が自らの運命を強く受け入れて愛する者と行きていく決心をするまでが描かれる物語。

話しそのものは単純で確かに高校生向けという感じなのですが、子どもたちが自由に遊ぶ姿や惹かれ合うデイジーとエディーや、戦況がまったく分からないまま混乱に陥る人々など大人が見ても飽きることはありません。前半の牧歌的な部分と後半の悲惨な部分の対照がとても効果的でした。戦争や紛争、テロが起きて奪われるすべての物が前半に集約されています。突如訪れる戦禍の混沌が、現在の世界中の状況を見ていると他人事とは思えずぞっとする部分もありました。

それに何と言ってもシアーシャローナンが素晴らしい。登場人物はたくさんいるもののほとんどが彼女の独壇場と言っても過言ではないこの作品の中で、見事に1本の映画を背負って立っています。彼女はこれまでも複雑な役を演じているし演技の面ではすでにお墨付きだと思うのですが、いままでのイメージが清楚な感じだったので、このアイラインをぐるぐる入れた反抗期のアメリカンガールというのは意外なキャスティングでした。でもそれを何の違和感もなく演じてしまうところがやはりこんなに若くして演技派と言われる彼女だけあると思います。

原題は「How I Live Now」で、「今の私の生き方」「私はこう生きている」って感じなので、どうしてわざわざ「生きていける」という訳にしたのかは少し疑問です。題名だけではなくデイジーの最後のセリフにもなっているので「生きていける」にしたのは少し違和感がありました。

若い子の感性で見ればもっとビビットに感じるものがあるのではないかなぁと思います。



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