シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

白夜行

2014-08-26 | シネマ は行

ネットのレビューを見ると原作を読んだ方にはあまり評判が良くないような気がします。ワタクシは原作を読んでいませんので、純粋に映画だけを見た感想を書きます。

人間関係がややこしいので、あまり込み入ったあらすじは書かないでおきます。

昭和55年に質屋の主人が殺される事件が起きる。被疑者が浮かび上がるが死亡。被疑者死亡のまま事件は解決したということになっていたが、担当刑事だった笹垣船越英一郎はなにか腑に落ちないものを感じていた。

数年後その事件の被疑者でガス自殺した女山下容莉枝の娘雪穂堀北真希は、遠縁の女性の養子となり名門の女子高に通っていた。一方被害者の息子亮司高良健吾は売春のバイトをするようなすれた高校生に成長していた。

雪穂は美しく成長し、高校・大学時代の親友の恋人を略奪する形で資産家の御曹司笹塚一成姜暢雄と結婚し、義実家の事業を背負うほどの人物となっていったが、その雪穂の人生の中彼女の周辺では奇妙な強姦事件が続いていた。そして、亮司の人生の中でも奇妙な死亡事件が相次いでいる。笹垣刑事は定年を迎えてからも彼らの事件を追い続けた。

この笹垣刑事を演じる船越英一郎がとても良かった。正直、彼の印象は「2時間ドラマの帝王」というイメージしかなくて、2時間サスペンスドラマ系が嫌いなワタクシは彼の演技に関してあまり良い評価をしていなかった。しかし、この作品での彼を見て印象ががらっと変わりました。こつこつと事件の糸口を追っていく姿、事件に関連した子供たちに接する姿、定年後の少し寂しそうでそれでいて信念と長年現場の刑事を務めあげてきた矜持を感じさせる態度。クライマックスでの亮司への説得。どれをとっても素晴らしかったと思う。要所要所に登場する彼に説得力が、非常にこの作品にプラスに働いていた。

堀北真希ちゃんは非常に頑張っていたと思うし、演技は下手ではないと思うけど、年齢と容姿的に結婚後資産家の義実家でキャリアを積んでいこうとする雪穂には少し無理を感じたのが残念だった。ただ、最後に明かされる幼いころにひどい目に遭い心を殺して(殺されて)生きてきた雪穂という女性のゾッとするような内面の表現という意味ではよくできていたと思う。

どこかつながりそうでつながらない雪穂と亮司の人生の断片を見せられて、最終的に2人の壮絶な幼少期へと戻っていく展開にはゾクゾクさせられました。物語の結びとしては、一見あまりにもつらく救いのないようなもののであると同時に実は純粋な愛の物語でもあるというところが非常にうまくできていると思いました。もちろん、2人のしたことは「純粋な愛」などと呼んでしまうことは許されないのでしょうけれど、彼らを憎しみの塊に育てた大人たちの罪が非常に重くのしかかります。

このお話が終わったあと、亮司という手足を失ったモンスター雪穂がどのような人生を歩んでいくのかとても興味が湧きました。