シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

東ベルリンから来た女

2013-02-18 | シネマ は行

アカデミー賞外国語映画賞ドイツ代表ということで見に行きました。

ベルリンの壁が崩壊する9年前の1980年、医師のバルバラニーナホスは東ベルリンの大病院から片田舎の小さな病院へ左遷される。彼女がなぜ左遷されたかははっきりと語られないが、この時代、東ドイツで左遷と言えば、東西冷戦の政治関連だろう。彼女には西側に恋人ヨルクマルクヴァシュケがいて、彼の元へと行こうとしているようなのでそれ関連かなということは想像がつく。彼女には左遷されてきたときからシュタージ(東ドイツの秘密警察)の監視がついている。彼女が2、3時間行方をくらませば、家宅捜索が待っており、女性の捜査官から体の中まで検査されるという屈辱に耐えなければならない。

西の恋人ヨルクが着々とバルバラの西側への逃走の準備を進める中、バルバラは同じ病院で働く医師アンドレロナルトツェアフェルトと少しずつ親交を深めていく。バルバラはシュタージに監視されるような特別な事情の女性であり、初めは彼女自身も同僚たちに馴染もうともしなかったのだが、この小児病院にやってくる患者を通してアンドレとの距離は少しずつ縮まっていった。

ある日、ハンナヤスナフリッツィーバウワーという少女が矯正収容所から逃亡中に病気になり運び込まれてくる。現在の国の状況から逃げようとするステラにバルバラは共感を覚え目をかけてやっていたが、病気が治るとステラはまた矯正収容所に戻されてしまった。

いよいよヨルクが用意してくれた段取りで西側へ逃げる日になったが、病院にはアンドレが担当している自殺をはかった青年の手術も待っていたし、ステラがまた逃亡してきて自分を頼ってきていて、バルバラは迷う。自分だけが西側に行って幸せになるべきなのか…結局バルバラは自分の代わりにステラを西側へ逃がして自分は東側へ残る決断をする。

お話としてはなかなか興味深いし、シュタージに監視される女性医師バルバラというシチュエーションはとても緊張感があるものなのだけれど、いまひとつ西側の恋人との歴史や想いの深さなどが語られないことや、東側の気になる存在であるアンドレにも少しずつ魅かれていってしまっているという描写が物足りないために、あまりにも淡々と進んでしまうのがちょっとツライところ。全体的にもっと良い映画になる素材だっと思うんですけどね。バルバラを演じたニーナホスも魅力的だし。アンドレがシュタージの手先みたいなこともしているっていうのがほのめかされていただけに、その辺ももっとサスペンスフルな展開にできたと思うのですが。

バルバラはそういう寡黙な性格と言ってしまえばそれまでなのだけど、あんな状況の中で黙って耐えているバルバラの心の奥には燃えたぎるような情熱があったはずで、それを垣間見せてくれるシーンがあといくつかあれば良かったのになぁと思います。ただ、あの当時の東ドイツの実情や空気感を自らの肌で経験した人たちにとってはバルバラやアンドレにもっと寄り添える作品なのかもしれません。