シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

キャピタリズム~マネーは踊る

2009-12-14 | シネマ か行

これはちょっと見に行こうか迷った作品なんだけど、行ってみました。マイケルムーアという人のことは好き嫌いがあるだろうし、彼の主義主張についても賛成派反対派と分かれるだろう。ワタクシはどちらかと言えば、彼の作品は面白いと思うし、彼の主張していることに関して、間違っているなと思うことはいままでなかったと思う。“ドキュメンタリー映画”としては、彼の撮るタイプのものは彼の主張を全面に押し出したものであるから、ただ何かを捉えたというタイプのドキュメンタリー映画とはまた違うジャンルのものと言えるかもしれない。

毎回、突撃取材でお馴染みの彼だけど、今回も国民の税金をつぎ込んで立ち直った大手証券会社などに袋を持って、「僕たちのお金を返して」とやる。ご大層に現金輸送車まで借り出して、「これで直接財務省に返しに行くから」と。こういうところの演出が彼の映画の特徴なのだけど、やっぱり観客は笑わずにいられない。映画の最後のほうで彼がこれらの企業の敷地を例の「クライムシーン」と書かれた黄色いテープを張り巡らせていくシーンなんかはかなりクスクス笑いがひろがっていた。

そういったハタから見れば楽しいシーンや、工夫を凝らして過去のテレビ映像などを編集したシーンなど「資本主義に反論するドキュメンタリー映画」を見ていることを忘れさせるようなシーンと、さまざまなデータを持ち出したり、実際の被害者や活動家などの姿を映し出すシーンのバランスがとてもよく取れている。

サブプライムローンの破綻で家を追い出される人々、会社に知らないうちに生命保険をかけられていて、夫が死亡したことによって企業が儲けていることを知らされる人々、給料の支払を求めて会社に座り込みのデモをする人々、資本主義そのものがキリストの教えに反すると主張する司祭たち。上位1%の人たちが残りの99%の人たちの富を全て合わせたよりも多くの富を支配するアメリカで99%の人たちの反撃が始まる。上位1%が残りの99%全員の富よりも多くの富を支配するってやっぱり異常事態だよね…ロビンフッドとか、ゾロとか、日本で言うならネズミ小僧みたいな、金持ちのお金を盗んで貧乏人に配るみたいなヒーローってどこにでもいるけど、それを実際に主張すると「この社会主義者め!」っていきなり批難されちゃうんだよねー。確かに、社会主義勢力であった国々は崩壊してしまったわけだけど、社会主義そのものはそんなに悪い発想には思えないんだけどなー。まぁもちろん完璧なシステムではないと思うけど。

これは結果的にリーマンショックのアメリカを映し出した映画ということになったけど、実際にはリーマンショックは彼がこの作品を撮影中に起こったらしい。そして、その最中に大統領選があり、オバマ大統領が誕生する。人々は希望に胸を高鳴らせるが、これからオバマさんはアメリカをどこへ導いていくのだろう。このあたりのことは、これからってとこですかね。経済問題って難しくてよく分かんないんだけどね…一時期“デリバティブ”を理解しようとしたけど、まったくできなかったことがあって、この映画を見ていたら専門家が説明できないどころか、税務署に理解されないための商品であることが分かって変にほっとしたりなんかしてしまった。いや、と言うかほっとしてる場合じゃないよね。こうやって大企業にだまくらかされていくわけだから。

いろんな数字のデータとか、いわゆる“大物”たちの名前とか役職とか膨大な情報が次々と現れては消えるので、1回見ただけではちょっと分かりにくい作品かも。ただ、何回見ても面白い作品だと思うので、何度か見ることをオススメします。