シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

マグノリア

2006-02-17 | シネマ ま行

この作品、取り上げてなかったんですね。もう取り上げたと思ってました。

これは群像劇を呼ばれる種類の作品なんだけど、こんなにたくさんの人間が登場する映画には辟易する人も多いだろう。映画を見慣れていない人が見ると軽いパニックに陥ってしまうのではないだろうか?

この作品はあまり筋を気にして追っていくタイプのものではない。それよりも全体的にかもし出される雰囲気や、それぞれの登場人物に注目して見るほうがいい。

まず、一番とっつきやすいのはトムクルーズ。なんと、セックスの教祖様。なんじゃそら?やねんけど、「誘ってねじ伏せろ」という本がバカ売れのモテなくて自信のない男たちのカリスマだ。彼がその男たちにセミナーをしているのだが、その内容が傑作。フェミニスト団体から思いっきり抗議されそうな内容のセミナーであるが、モテない男どもは熱狂。トムクルーズもノリノリなのであーる。このときのトムには素直に爆笑してください。嘲笑も入るかと思いますが…どちらにしても笑えます。アメリカにはこんな人、ホンマにいそう。この彼にも暗い過去があり、父親と確執がある。そしてその父親がいままさに死の床についていた。

次はジュリアンムーア。死にかけているトムの父の若い後妻。彼女はお金目当てに結婚し夫を裏切り続けていたが、死の床の夫を見て夫への愛に気付く。彼女は精神的に崩壊寸前だ。いわば、ジュリアンムーアのオハコな役。「めぐりあう時間たち」でも見せたあの張り詰めた緊張感なのだが、この作品の彼女は「めぐりあう~」の時のように上品ではない。"f-ck"という言葉を一つの文章の中に何個も入れて話す。実際何回言ったか数えたくなるくらいだ。

そして、恋する警官ジョンCライリーとコカイン中毒の娘メローラウォルターズ。不器用な彼と心に傷を持つ彼女。あぶなっかしくてハラハラしながら見守ってしまう。

クイズ番組に出演している天才少年ジェレミーブラックマンは父親マイケルボーウェンに食い物にされ、「もっと大切にしてほしい」と願っている。この少年が生番組の最中におしっこをもらしてしまうシーンがあり、あまりにも周りの大人が自分のことしか考えていなくてなんかクラクラしてくる。

すべてが絶望へと向かっているように見えたその時、奇跡が空から降ってくる。空から降ってくるのは天使ではない。ワタクシが宇宙で一番嫌いなあの生き物。それが大量にドカドカ空から降ってくる。(えっ、その生き物は何かって?ワタクシは宇宙一嫌いなのだが、世間では可愛いと捉えられている傾向があって、マスコットも多いあの両生類。あ~名前を書くのもおぞましいので割愛)いや~、この作品のポスターでさ、マグノリアっていう花からちょこっとヤツが顔を出していたからイヤな予感はしてたんやけどさ、それにしてもこんなに大量に降ってくるなんて…失神もの
昔、「Xファイル」で言ってたけどさ、テキサスかどっかでハリケーンに持ち上げられた奴らが大量に遠く離れたボストンに落ちたなんて話。それにしても、あんな大量はないやろ?

ともあれ、その大量に降ってきた奴らのおかげで色んなことが好転に向かうわけだ。ってなんであんなもんが大量に降ってきて好転に向かうのんかはさっぱり分からん。

まーーー、とにかく画面全体がピリピリピリピリしているような映画で、捻じ曲がった親子関係の話が多く、見た後も精神的にどっぷりと疲れますが、最後のメローラウォルターズの笑顔に救いがあると見るのが妥当なんでしょうなぁ。

他にもフィリップシーモアホフマンやら、ウィリアムHメイシーやら、とにかくクセもの俳優と呼ばれる人たちや大御所俳優たちが参加していて、それぞれの登場人物が細い糸でつながっているという群像劇のお手本のような作品です。