カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『疾風ガール』誉田哲也 光文社文庫

2011-08-24 19:18:30 | 和物
 『ストロベリイナイト』などの誉田哲也の青春小説。主人公は女性ギタリストの夏美。インディーズバンドのペルソナ・パラノイアのメンバー。祐司は元バンドマン。今は先輩の芸能事務所に勤める。交互に二人の視点が入れ替わりながら物語は進む。リーダーでドラムの畑中、ベースを持っている時と普段が全く変わってしまうジン。ボーカルは美形の薫。その中で輝く夏美の才能に惚れた祐司。スカウトしようとするが、夏美は取り合わない。そんな時に事件が。薫が…。そこからはロードムービーである。それぞれの人生、魂を巡る旅。というと妙に妙にだが、夏美はやっぱりロッカーなのだ。何だか音楽が聞こえてきそうな一冊。☆☆☆☆。

『アクセス』誉田哲也 新潮文庫

2011-08-23 19:43:53 | 和物
 姫川シリーズが面白く、誉田作品をと見つけた一冊。ホラーである。どうもホラーは苦手で途中で読むのを止めてしまおうかと思ったが。女子高生の可奈子。真面目な普通の女子高生。従姉の雪乃は同じ高校生、美人で気楽に援助交際も。可奈子の親友の尚美が死ぬ。自殺とも言われ、悩む可奈子。尚美から教わった携帯料金をタダにするサイトと契約。雪乃、その友人の翔へと広がっていく。そこに突然の狂気が。携帯を通して、不思議なことが続く…。これがかなり過激であったりするが、そう来たかの展開で後半から引き込まれた。ホラーは好みじゃないけれど、結構面白かった。☆☆☆ほ。


『ソウルケイジ』誉田哲也 光文社文庫

2011-08-22 00:14:34 | 和物
 『ストロベリイナイト』で登場した女性刑事姫川玲子のシリーズ第二作。警視庁捜査一課第十係の姫川班を率いる。多摩川の土手で発見された左手首。死体無き殺人事件の捜査。十係からは日下班と姫川班が。この小説は人物像が面白い。過去にレイプされた経験を持つ姫川。直感派の刑事。日下は対照的に緻密な刑事。姫川はどうもそれが苦手。係長の今泉、部下の菊田、蒲田署にいて捜査本部で組まされたのが、前からの因縁らしき井岡。事件は過去に遡り、幾重もの筋が次第にほぐれていく。このシリーズはなかなか面白い。☆☆☆☆。


『ウォッチメイカー』上・下 ジェフェリー・ディーヴァー 講談社文庫

2011-08-18 21:08:33 | 洋物
 リンカーン・ライムとアメリア・サックスのシリーズ。通算7作目とか。セリットー、クーパーという面々。これに前回怪我をしたロナルド・プラスキーが「ルーキー」と呼ばれながら仲間に加わり、なかなかの味を出す。さらにキネシクスという尋問の専門家キャサリン・ダンスが人間嘘発見器として登場する。ウォッチメイカーという今回の敵役はなかなかのもの。筋立ても殺人事件が連続殺人へ、別件の自殺が他殺へ、さらには警官汚職へと広がり、サックスの家の歴史も浮かび上がる。あぁ、でどんでん返し、あぁ、でどんでん返しの連続。次作が待ち遠しい!という出来栄え。証拠絶対のライムが人間へのアプローチのダンスの登場で、新たな展開もありそう。☆☆☆☆ほ。


『フランキー・マシーンの冬』上・下 ドン・ウィズロウ 角川文庫

2011-08-17 14:35:49 | 洋物
 最近では『犬の力』、昔では1991年『ストリート・キッズ』、1992年『仏陀の鏡への道』などが創元推理文庫から出ている。角川で出て、あれ?変わったなと思ったのが『ボビーZの気怠く優雅な人生』あたりからか。フランク・マシアーノ。イタリア系。サンディエゴで餌屋、魚卸、リネン業を営む初老のサーファー。離婚した妻の面倒を見ながら、一人娘の学費を稼ぎ、愛人との関係を大事にするこの男は、フランキー・マシーンと呼ばれたマフィアの殺し屋だった。突然、襲われることで人生が一変、過去を探りながら必死の逃避行。東海岸のマフィアとは西海岸は少々違うよう。かつて自分も標的を追い詰めたことがあるフランクが、逃げながら、攻め続け…。軽快に読めて、展開もなかなかで、☆☆☆☆ほ。


『のぼうの城』上・下 和田竜 小学館文庫

2011-08-16 08:36:50 | 和物
 『忍ぶの城』という脚本が城戸賞を受賞、それを小説化したのが本作。直木賞候補となったとか。本屋大賞の2位とも。舞台は今の埼玉県行田市にある忍城。戦国末期、武蔵の名族成田氏が北条氏の下、忍城をおさえていた。豊臣秀吉の北条攻めが始り、忍城も石田三成の軍に攻められる。「のぼう」とは成田氏の城主家の一族、城主とは従弟にあたる成田長親。百姓仕事に加わりたいが、不器用なので領民からは避けられながら、それでいて愛されている。「のぼう」とは「木偶の坊」の意味。忍城には、のぼうと幼馴染で一の家老をつとめる正木丹波守利英、丹波と並ぶ豪の者の柴崎和泉守、若年ながら兵法を極める酒巻靭負といった家老達、これに武勇と美貌の甲斐姫といった面々。圧倒的な三成軍には三成の友、大谷吉継、勘定高い長束正家らがいる。成田氏の当主は小田原城に詰めながら、秀吉との内通を計るが、のぼうのひと言で一戦に。不思議な物語。視線は丹波、三成など変わっていくが、のぼうの視線は無い。なかなか面白い。☆☆☆☆。

『ぼくとペダルと始りの旅』ロン・マクラーティ 新潮文庫

2011-08-15 00:11:56 | 洋物
 ロン・マクラーティという人は小説・戯曲を書きながら、役者で稼いでいたそうな。『セックス・アンド・ザ・シティ』にも出ているとか。彼の2004年の作家デビューが本作。「ぼく」はメイン州で両親の家から独立し、アクション・フィギュアのSEALサム製造会社で組立てラインを経て製品検査係を務め、体重126キロを越え、ビールが好きな独身男スミソン・アイド、スミシー。両親のフォード・ワゴンが中央分離帯に激突した所から物語は始まった。姉のベサリーは失踪中。アイド家の歴史がベサリーの病の歴史とともに明らかになっていく。突然、「別の声」に支配される姉。突然、橋から飛び降りたり、全て脱ぎ捨てて、ポーズをとり続けたり。スミシーはかつては走る子=ランナーで、やせっぽちだったが、それも過去のこと。お隣にはビア・マルヴィー家があり、そこには四つ下の一人娘ノーマがいた。ノーマはアイド家と親しく、アイド家の両親を父、母と呼ぶ。スミシーをしたっていたが、スミシーはわずらわしさを感じている。ノーマが事故に遭い、車椅子の人となる。スミシーはちゃんと声をかけられない。父の遺品の整理から、ベサリーがロスで亡くなっていたことを知る。かつて乗っていた自転車に乗って、西へ向かう。そんなロード・ムービーである。旅と明らかにされていく過去の事件、その中で、スミシーが体重を減らし、成長を始めていく。☆☆☆☆。

『ぼくを忘れたスパイ』上・下 キース・トムスン 新潮文庫

2011-08-12 18:26:41 | 洋物
 競馬好きの青年の父は、アルゼンチンの電機メーカーに勤めていた筈が、CIAの工作員だった。それがアルツハイマーの症状が出てきたことで、さあ大変。命が狙われる。というお話で、どうということはないが、元スーパーマンの父が時折正気に戻り、様々な混乱を切り抜けるというお話。気楽に読めてそこそこ可笑しくて、まあ☆☆☆ほという所。


『卵をめぐる祖父の戦争』デイヴィッド・ベニオフ 早川ポケット・ミステリー

2011-08-11 22:15:11 | 洋物
 『25時』の作者の作品。作者の祖父の話…というところから始まる物語。ユダヤ系ロシア人の祖父は、1942年包囲下のレーニングラードいた。17歳の祖父は秘密警察に捕まり、不思議な脱走兵コーリャと出会い、1ダースの卵を捜し求めることとなる。その中で、包囲下の世界、戦争の真実、パルチザンなどについて描かれていく。コーリャと祖父のレフとの不思議な組合せが物語りを悲惨一辺倒なものでなくしている。気がつくと、ぐいぐいと引っ張られていくような物語。☆☆☆☆。

『流星の絆』東野圭吾 講談社

2011-08-04 23:39:25 | 和物
 『新参者』に続いてまたまた文庫化が待ちきれず、東野圭吾テレビドラマ化作品。彼の作品は、実によく「描かれて」いるような。映像化は見事であったというのが第一印象。それぞれのキャラクターがよくあっていた。弟が少々軽いが。洋食屋を営む夫婦が殺される。その時、子供たちは家を抜け出して流星を見に出かけていた。帰ってきて両親の事件を知る。三人の子供が助け合いながら生きている。そこに犯人の手がかりが。警察は信用できない、事件を動かす。最初からの担当刑事が現れる。時効直前。この中で次第に追い詰められていく。そこに意外な展開が…。☆☆☆☆。うまいもんだ。少々、疑問があることはあるが、それを越えてしまうものかもね。