カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『紙の城』本城雅人 講談社文庫

2021-05-25 20:08:02 | 和物
 東洋新聞社会部デスクの安芸。彼のまわりには安芸組という記者たちが集まる。親会社アーバンテレビがIT企業に買収をかけられる。IT企業、イナクティブはアーバンテレビが持つ東洋新聞の株を買い取ることを条件に買収から手を引くという。自分たちの新聞社が買収される。紙の新聞は時代遅れとするIT企業からの買収に動揺が走る。時代は確実に新聞の力を奪いつつある。最近では週刊誌の方がよほど権力の監視機能を持っている。即時性でテレビに、そしてネットに負けた新聞に未来はあるのか。新聞記者に期待するというのは著者の心情であろうが、読んでいて、どうしても新聞の未来を描くことができなくなった。☆☆☆☆。

『トリダシ』本城雅人 文藝春秋 LB

2021-05-22 17:21:58 | 和物
 「トリダシ」というあだ名を持つ男、鳥飼義伸、東西スポーツの野球デスクの一人を主人公とする七つの短編集。東西新聞の子会社、東西スポーツ。鳥飼は「記事を出せ」としつこく記者に求め続けることから「トリダシ」の異名をとる。存在感抜群、陰のGMとの異名も。女性記者の細谷、遊軍の江田島、元プロ野球選手で新人の笠原、東西新聞経済部デスクの湯上、鳥飼が東西新聞に出向時代の警視庁キャップ。ジェッツ(ジャイアンツがモデル)で選手上がりの広報二村、スポーツ東都(報知スポーツがモデル)のやり手紀野、三人いるデスクのもう一人で部長候補とも言われる石丸。それぞれの視点から、描かれていく。ニュースをつかみ取る。抜く、落とす。それが他紙だけではなく、身内の中でも。実に人間臭い、どろどろとした世界が描かれる。新聞社という特殊な世界ではあるが、人の動き、嫉妬、弱さ、そして人間味。いろいろと面白い。実に、何だか凄いな、である。☆☆☆☆。

『フリーター家を買う』有川 浩 幻冬舎文庫

2021-05-19 22:27:49 | 番外
 再読シリーズ。有川という人は、本当にうまい。どきっとするような所をついてくる。大学を卒業し、入った会社の新人研修でブラックであることに嫌気がさし、3ケ月で辞める。バイトをしながら就活も、うまくはいかない。国立大を出てそれなりの企業で「経理の鬼」の異名を持つ父親は酒乱でそりがあわない。ある時、母親が壊れた。突然実家に帰ってきた姉から知らされる驚きの世界。こうした展開にぐいぐいと引き込まれていく。それでいて、いい人間が出てくるのも有川さんの世界。応援しながら、いいよねって思えて、途中はあんなに辛かったのに。☆☆☆☆ほ。

『傍流の記者』本城雅人 新潮社

2021-05-16 21:40:52 | 和物
 2018年直木賞候補になった作品。舞台は東都新聞社。社会部同期の6人のエース達の物語。社会部にあって、「警視庁の植島」「検察の図師」「調査報道の名雲」「人事の土肥」「友軍の城所」そして「同期が認めたエースだった北島」それぞれの物語。記者として突っ走る。キャップとして後輩の尻を叩きながら走る。デスクとして率いる。それぞれの場所でそれぞれの力、それぞれの挫折と葛藤。新聞が輝いていた、そして最後の輝きの時代と言うべきか。政治部との軋轢、最も新聞らしいというのが社会部か。本城という人、サッカー、野球といったジャンルもいいが、この新聞という世界では息が詰まるほど。☆☆☆☆ほ。

『空飛ぶ広報室』有川 浩 幻冬舎文庫

2021-05-13 21:08:21 | 番外
 先にテレビドラマでみた。柴田恭兵の鷺坂室長、空井は綾野剛、稲ぴょんの稲葉は新垣結衣。はまり役でしたね。有川さんの得意なお仕事シリーズ。鷺坂室長(のモデルの方)からオファーがあったとか。文庫版では「あの日の松島」がある。これがあるということ、大事なこと。有川という人は、実に分かりやすく伝えることができる。これはすごいことだと。☆☆☆☆。

『オクトーバー・リスト』ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫

2021-05-11 22:28:32 | 洋物
 週刊文春で池上さんが☆4と1/2だったかな。読み始めたら、なかなかつらい。これ「第36章 日曜日午後六時三十分」から始まり、時を遡っていく。「第1章 金曜日午前八時二十分 二時間四十分まえ」まで。ちなみにこれは「第一部」なのだが…。6歳の娘を誘拐されたガブリエラ。異様な犯人ジョセフからの指示は「オクトーバー・リスト」と40万ドル。彼女を助けようとするアンドルー。本当に途中は退屈しかけて、止めようかとも思ったが、次第、次第に引き込まれ、何度も何度も、既読部分を読み返したり、ああそうだったのかといった具合。引き込まれました。そう来たのか。やあ、作者は楽しかったろうね。☆☆☆☆ほ。

『泥棒役者』三羽省吾 角川文庫

2021-05-09 16:54:38 | 番外
『太陽がイッパイいっぱい』以来の三羽ファン。久々に見つけて読んだ。不良仲間に取り込まれ、鍵開け名人になったはじめ。押し入った先で傷害沙汰になり、自らは傷害に加わっていなかったが、あえて語らず少年院に。工場に勤めながら、恋をしていた。そこに昔の不良から、「恋人にばらす」と新たな犯行に引きずり込まれる。押し入った先、留守の筈が絵本作家の住人が。そこに新米編集者や、空気の読めないセールスマンが加わり、歌手志望のyoutuberまでも。その大騒動の物語。尖り感がちょっとゆるくなってしまった気もするが、三羽作品、もっと読みたい。☆☆☆ほ。その後、映画版を見た。関ジャニの丸山君が主演でした。

『マエストロ』上・下 ジョン・ガードナー 創元推理文庫

2021-05-04 19:22:11 | 洋物
 『裏切りのノストラダムス』『ベルリン 二つの貌』『沈黙の犬たち』の三部作に続くハービー・クルーガーを主人公とするシリーズ最新作。といっても1993年。引退した筈のハービーは世界屈指のオーケストラ指揮者 マエストロ・ルイス・バッサウ、ナチやKGBとの関係が噂される人物の命を救い、さらに尋問することに。その壮大なドラマ。この本を読むために、先に揚げた三部作、さらに『スパイの家系』『オルレアン・ジグソー スパイの家系Ⅱ』を読んでおく必要がある。本当ならば日本では未刊行の『スパイの家系Ⅲ』も読めていたら。
 感想を書くにはあまりに壮大過ぎるということでしょうか。一気に読むのが楽しいです。マルタは受け止めてくれたでしょうか。☆☆☆☆☆