カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『にごりの月に誘われ』本城雅人 東京創元社 LB

2023-02-26 23:38:01 | 和物
 主人公は元経済新聞の記者でフリーライターの上阪傑。ゴーストライターを務めることが多く、過去に三冊のゴーストライターを引き受けたIT企業会長から呼び出しを受ける。そこで依頼されたのが自伝。それも余命三ヶ月という宣告を受けてのものという。主人公上阪傑の章、釜田芳人の自伝、和泉日向の章と視点を変えながら進んでいく。過去の自伝執筆の際には明かされていなかった事実。空白の期間、ゴーストライターとして対象に成り代わって描いたことが嘘だった!ことも。そこにある二人の男達の若き夢の日々。現在の若者たちの夢と現実。それらが描かれる中で次第に明らかになっていくものが。そした最後にもうひとつのどかん。面白い。人というものが描かれている、謎の深まりとその謎解きもまた。これもまた新しい本城雅人の世界。☆☆☆☆ほ。

『ヨルガオ殺人事件』上・下 アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫

2023-02-25 21:08:23 | 洋物
『カササギ殺人事件』のアラン・コンウェイ、彼の悪行?はまだあった。編集者であったスーザン・ラインド、ギリシア人の恋人とクレタ島でホテル経営をする彼女のもとに、手紙が届く。もう一つの殺人事件と失踪事件のために。『ヨルガオ殺人事件』というコンウェイの本の舞台となったホテル。そこで起きた失踪事件。コンウェイの本にはそのホテルとホテルに関わる人々が登場する。オーナー夫妻の次女の突然の失踪。それを引き起こしたのがコンウェイの本。ということで招かれたスーザンが探偵役をつとめる。例によって作中にはアティカス・ピント名探偵の『ヨルガオ殺人事件』が挿入され、我々に種を示してくれている筈なのだが。ううむ、またしてもホロヴィッツのやりたいようにやられたわい。☆☆☆☆ほ。

『その裁きは死』 アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫

2023-02-23 21:52:17 | 洋物
 元刑事ホーソンとワトソン役ホロヴィッツのシリーズ第二作。離婚専門の弁護士が殺害された。大金持ちと人気作家の夫婦、妻は俳句も出版する日本人作家、性格最悪。その妻が離婚弁護士を罵倒した時と似た状況で殺害されていた。ここでホーソンが登場となる。ひとつの殺人にもうひとつの死がからみ、事態は複雑に。警察からは今回はグランショーというなかなかの女警部が登場し、ホロヴィッツを脅したり。謎のホーソンの世界にもホロヴィッツは迫ろうとするが、「解説」によればこのシリーズは10作が予定されており、その中で徐々に謎解きがあるらしい。ホロヴィッツという人、サービス精神満点で、自分をこの役とするとはたいしたもの。今回はホームズが隠れた重要配役か。☆☆☆☆ほ。そうそう、WOWOWでホロヴィッツ自身の脚本による『カササギ殺人事件』がやっているらしい。必見。

『メインテーマは殺人』上・下 アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫

2023-02-17 20:44:06 | 洋物
 再読。元刑事の探偵ホーソン登場の物語。そしてホロヴィッツも本人で登場。どこまで実際なのか分からない部分も込みで面白い。元刑事が作家を訪ねる。俺の本を書け。50、50での共作。老女が葬儀屋を訪れる。自身の葬儀の予約のために。その日、老女が殺された。その捜査に元刑事と作家が挑む。ぎくしゃくしながら、ぎくしゃくと。実にうまい。本当にうまく手の上でコロコロと転がされる気分。ああ、面白かったということで、ホーソンシリーズ第二作を読もうか。☆☆☆☆ほ。

『カササギ殺人事件』上・下 アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫

2023-02-15 20:18:20 | 洋物
 再読シリーズ。ホロヴィッツはホームズやボンドを書いたり、脚本も多数という人。もともとは子供向けスパイ小説を書いていたという。本書は小説の中に小説がある、重箱小説にして、その小説がまたミステリイで、しかも途中で終わっていて、で、出来がいい。実に面白い。実に巧妙。よくも、よくもというものでありまして、☆☆☆☆☆でしょうな。

『分かれ道ノストラダムス』深緑野分 双葉社 LB

2023-02-12 22:47:21 | 番外
 ノストラダムスの大予言。1999年7月恐怖の大王が…、が間近に迫った頃のこと。女子高生は同級生の三回忌に行き、かつてのクラスメートの中で一人だけ青いネクタイでぷよぷよの仲間外れの気分となる。といったお話。深緑野分という作家は『戦場のコックたち』で驚いた人。日本人でしかも女性作家がこの本を!!!と。だから読んでみたのだけれど、この青春小説は私にはつらい、苦行でありました。若者に読むなとは言いません。されど、☆☆。

『流浪の大地』本城雅人 角川書店

2023-02-11 20:59:25 | 和物
 大手ゼネコン鬼束建設の新井と、中央新聞調査報道記者の那智、深谷、向田。それぞれの視点を移りながら、この国の未来をみつめる。IR(統合型リゾート)開発を巡る闇。ゼネコンの新井はかつて談合の疑いで逮捕された経験がある。中央新聞の那智は伝説の調査報道記者を叔父に持つ。深谷と向田は情報提供者を守れなかった負い目を持っている。両者の視点が目まぐるしく変わり、少々わかりづらいこともある。それでも様々な役者が味を持つ。仕事への誇りというのもテーマのひとつ。☆☆☆☆

『ヘダップ!』三羽省吾 新潮社 LB

2023-02-07 19:14:14 | 番外
 『太陽がいっぱい、いっぱい』以来の三羽省吾ファン。題名からはどんな話だか見当もつかない、と読み始めた。「Head up!」。今回も期待裏切らず、ぐいぐい引き込まれ、読み進む内に色んなことが見えてくる。主人公は桐山勇。高校を卒業し、故郷の関東から中部の県へ。サッカー選手、スポンサー会社のスーパーに勤めながらJFLの武山FCにアマチュア契約で所属する。さほど強豪ではない高校にいたが、県選抜にも選ばれていた天才型FW。ある事件がもとでJ1のチームとの契約が流れた桐山は武山FC監督の赤瀬に誘われ武山に来た。JFLチーム、されどJリーグ参入の資格は満たせずにいるチーム。大野、橘といった元Jリーガーが加わり、チームに新しい風が。そんな中で、チームが、そして桐山が壁に挑んでいく。そこにそれぞれの選手の世界が見えてきたり、時の経過とともに選手、チームの変化が語られ、サッカーファンとしてもとても楽しめる。サッカー小説として面白く、はたまた三羽世界である人間世界もしっかりと見えて、☆☆☆☆ほ。

『小麦の法廷』木内一裕 講談社 LB

2023-02-04 21:47:14 | 和物
 主人公はレスリングの元オリンピック強化選手にして新米の弁護士杉浦小麦。仕事が無く、楽な事件の国選弁護人を引き受けたつもりが、えらいことにはまり込んでいく。同僚を殴打、被害者と目撃者の証言で加害者の同僚は速やかに逮捕。そして罪を認めており、すんなり行く筈が、そこに大きな罠が隠されていた。法律に従うか、良心に従うか。そこで新米が踏ん張る訳ですが、小麦のキャラクターはまあまあ面白い。悪役が強烈。脇役が少々登場が少ないがこれまた魅力的。この本、1.5倍の分量で書いてくれたらもっと面白くなりそうな気がするのですが。☆☆☆ほ。

『ブラックガード』木内一裕 講談社 LB

2023-02-02 17:01:29 | 和物
 木内一裕の矢能シリーズ第5作。元ヤクザ、「探偵」業の後を継ぎ、その「娘」の栞を引き継いだ。このシリーズ、栞やもっとチョイ役の情報屋といった脇役が効いている。正岡なる怪しげな人物への2億円の要求、その引き渡しの仲介として名指しされた矢能。引き受けるつもりはなかったがまきこまれていく。孫娘からの依頼ということで動き出す、引き受けると栞が喜ぶ。途中、すっ飛ばし展開というのもあるが、シリーズとして楽しむのにはいいか。☆☆☆ほ。