1950年代から60年代の移民政策。ブラジルに移民として送られ、政府にだまされて死んでいった移民たち。移民一世と二世による国家への復讐劇。衛藤という一人の移民の人生、それを中心に物語は進む。ブラジル、コロンビア、日本。それぞれの話が時を越えて語られていく。「悪党」というべきか、彼らをこうも魅力的に描くことができるのは垣根ワールドの真髄か。問題は実に深く、それをしっかり見据えて、それでいて面白い作品に仕上がっている。垣根代表作。☆☆☆☆☆。
火葬場に車椅子に乗った一人の男。5年ぶりに姿を見せた能見によって、波紋が広がっていく。公安警察、能見の妹夫婦とその子供達。秋葉の妻と暮らす元の仲間…。ヤクの捜査にあたった有働警部。その外部協力者。彼らが襲われたのは5年前。能見が帰ってきた。
5年前の復讐、死んだ筈の秋葉を「生き返らせ」、復讐は進む。公安警察の中にある闇。といった展開が、ぐいぐいと来る。細かな詰めもしっかりしていて、☆☆☆☆☆。鉱脈発見。
5年前の復讐、死んだ筈の秋葉を「生き返らせ」、復讐は進む。公安警察の中にある闇。といった展開が、ぐいぐいと来る。細かな詰めもしっかりしていて、☆☆☆☆☆。鉱脈発見。
くせぇ-、 という、とんでもない始まり。舞台は水戸。観光会社に勤める坂脇恭一。島根の漁師の息子。干拓で漁業が終わり、荒れた地から東京へ、そして上司を殴った後に今の会社。圭子。田舎の百貨店から出会い系で素人売春。そこでチンピラにつかまり美人局を。恭一は枠(フレーム)を感じ、それを乗り越える。落ちて落ちて落ちた圭子。運命は二人を結びつける。なんだか、ちょっと凄い飛躍もあるが、切なくて、ちょっといい。二人、ちょっと気になる上司の支店長といったちょい役がいい。あっという間に読み終える、ページターナーに☆☆☆☆ほ。
テレビの原作で有名になったというと、昔からのファンに怒られそうだが、東野のこれも映画の原作(だったかな)となった作品。誘拐物である。偶然、誘拐ゲームを始めることになる主人公。ところがそこに大きな罠が…、というもの。ただ、誘拐テクニックがわざとかもしれないが、ちょっとそれはIT時代に無理でしょうという気もして、もうひとつのめり込めず。主人公のキャラがちょっと肌があわないのもあって☆☆☆ほ かな。
リストラ請負会社の社員村上真介が主人公。真介もリストラにあい、その後、実際にリストラにあたった会社の社長からスカウトされる。いくつかの会社での仕事、その中での出会い。垣根作品は人物の造形がうまい。その中に人間像を描き出していく。読み心地もそれなりによく、どうということはないが、楽しませてくれるのは確か。ということで、☆☆☆☆となる。
『サイレント・ジョー』のT・ジェファーソン・パーカー、二度目のMWA(アメリカ探偵倶楽部賞の最優秀長編賞受賞作。この本も読ませる。老いた二人の兄弟。元刑事の兄と元新聞記者の弟。弟の「二人は間違っていた」という言葉から物語は1950年代に。舞台はカリフォルニアのオレンジ郡。まだオレンジの木が沢山あった頃の物語。四人の兄弟が、三人兄弟と決闘に。そこに小さな姉妹もいた。その後、四人兄弟は、神父、CIA、刑事、新聞記者に。CIAの次男はベトナムで戦死。再びかつての決闘相手の兄弟とその姉妹が人生の中に入ってきた。
事件は姉妹の妹、ミス・タスティンをつとめたジャニル・ボンの死で急展開に。そのカリフォルニア・ガールのまわりをいろんな人生がまわる。事件を捜査する次男。それを報じる四男。見守る長兄。60年代の世相の中で、事件は進む。
最後まで、ぐいぐい引っ張る。時代をうまく描きながら、物語は再び現代へ。読み物です。☆☆☆☆☆。ちょいおまけ。
事件は姉妹の妹、ミス・タスティンをつとめたジャニル・ボンの死で急展開に。そのカリフォルニア・ガールのまわりをいろんな人生がまわる。事件を捜査する次男。それを報じる四男。見守る長兄。60年代の世相の中で、事件は進む。
最後まで、ぐいぐい引っ張る。時代をうまく描きながら、物語は再び現代へ。読み物です。☆☆☆☆☆。ちょいおまけ。
垣根涼介のデビュー作。サントリーミステリー大賞受賞。旅行会社の主人公。お特異さんからの依頼は高校生の孫をベトナム旅行に連れていってくれというもの。少年の目的は行方不明になっていた父を見つけること。少年、主人公、そしてその友人という三人がベトナムのサイゴンに旅立つ。ベトナムのタクシー運転手は車狂、後の垣根作品に登場する人物とダブル。ベトナム人の娼婦。彼らのチームが少年の父を探す。途中から少年の存在感が希薄になってしまうのが今ひとつではあるが、ストーリーの展開は惹きつけるものがある。処女作ということで、☆☆☆☆。
「殺し屋」「押し屋」「自殺屋」。これに妻を殺され復讐に燃える?男。という設定。これらがグルグルと追廻を始める。悪徳勧誘セールスらしき会社の男。鈴木。これに蝉、鯨、そして槿と書いてあさがおという男。そして姿の見えない寺原という悪。どこか不条理な世界が進んでいくというのは伊坂ワールドとでも言うのだろうけれど、何だかちょっと疲れた終わり方。☆☆☆で。
『ヒート アイランド』の続編。徳間文庫に『ギャングスター・レッスン』があるが、第三篇というところか。今回の主人公は関根。柿沢らのグループから追い出された男。一匹狼となっている。コロンビア人の娼婦DD。これに桃井、そしてアキ。アキに新たに恋人が。DDに振り回される関根を中心に物語は回る。関根の闇、そしてそれぞれの人生。これが経糸と横糸となって紡がれていく。終局に向かって一気に進むスピード感は秀逸。☆☆☆☆ほ。
『笑う警官』(『うたう警官』改題)が面白かったので、佐々木譲を。『ベルリン飛行指令』に続く二冊目ということ。第二次世界大戦を舞台とする二作目でもある。スペイン内戦で戦う日系人斎藤の物語から始まる。舞台は日本へ。真珠湾攻撃に向けて進む中、これを探る米諜報組織。そこに南京虐殺で恋人を失ったアメリカ宣教師、択捉でロシア人との私生児として生きた女性などが絡む。いくつかのキャラクターが生きていて面白い。やや暗めなのは時代のせいか。☆☆☆☆。