黒川作品の中でも早い頃の作品。病院で知り合った男にパチンコでのゴト師の手伝いを頼まれた所から、どんどんと転がっていく。友永、稲垣、ケン。三人でヤクザの組長を誘拐、身代金を奪うはずが、とんでもない騒ぎになっていく。何となく生きていた友永、一匹狼で頭が回るがどこか切れている稲垣、拳法が得意でほとんどしゃべらない(台詞がほとんどない)ケン。その三人組のつながりは不思議なもので、疫病神シリーズの二宮、桑原のコンビとは違った不思議な連帯がある。もう少し浮かび上がってくれたらいいなと思わないではないけれど、☆☆☆ほというところか。
警視庁強行犯係・第三班の班長樋口顕一のシリーズ第二作、樋口の妻が誘拐される。家庭を描くという警察小説らしからぬ展開。荻窪署の氏家と犯人を追う。信頼は厚い、それでいて、そのことに対して自信が無い、という不思議な刑事。一気に読ませてくれて、☆☆☆ほ。朱夏という言葉を初めて知った。
リンカーン・ライムとアメリア・サックスのシリーズ第5作。今回は、イリュージョニストが主役。稀代の才能を持つ手品師、イリュージョニストによる犯行。捕まえても、手をイリュージョンによってすり抜けていく。張り巡らされる伏線。イリュージョンの手法による犯行。周辺の脇役も味を出し、今回はカーラという女性が魅力的。ところどころにあっという展開を見せて、流石に流石にで☆☆☆☆。
『隠蔽捜査』の今野の警察小説。今野は多作家、しかも多ジャンル。『隠蔽捜査』で興味を持って、SF、伝奇系の作家であることも初めて知った。『リオ…』は正統警察小説。人間がよく描かれている。樋口は警視庁の警部補。周囲からは高く評価されているが、本人は何故か自信が無い。こういう刑事も珍しいか。殺人事件の捜査本部に加わったが、それが連続殺人事件に。樋口は昭和30年生れ。ポスト全共闘世代で、ずっとその尻拭いをさせられてきたという強い意識があるという。「高校では生徒会が無くなっていた。これを再建。大学でも学生会が無くなっていて、これも再建…」何だか多少分かる。樋口にすれば、その後から来たといわれるかもしれないが。「ポパイ」以降、学生が遊び始めるといったのもちょっと面白かった。このシリーズは読み甲斐ありか。☆☆☆☆ほ。
建設コンサルタントとして解体工事の前捌きを生業とする二宮と、二蝶会の金バッジの桑原というコンビ、第三弾。今回は、賭け麻雀から話が始まる。そこに東西急便(佐川急便を思わせますが…)の奈良東西急便を舞台とするどろどろに。巻き込まれる二宮、渦に飛び込んでいく桑原、これに大阪府警の悪刑事中川も存在感を発揮しだして、関西を舞台に東へ西へ。裏金、警察の腐敗、いろどりみどりに取り揃え、急展開の連続。相変わらずのコンビはお互いを信頼しているのかいないのか、不思議なコンビ感で続く。これも読ませるので☆☆☆☆☆となった。
建設コンサルタント二宮と、ヤクザの桑原というコンビ、第二弾。「堅気」の二宮。二蝶会の金バッジの桑原。腐れ縁、疫病神といいつつ、二人の絶妙コンビ。ヤクザをだました詐欺師を二人が追った先は、北朝鮮の平城。さらには国境を越えて羅津へ。不思議なコンビがのぞいた北朝鮮はひどいもんで、桑原は相変わらずのイケイケを。途中、どうなってるんだという冗長感があったが、一気に展開し始めると、ぐいぐいと惹き込まれた。ページターナーという言葉を思い出させて、寝ないで読み上げたということで、☆☆☆☆☆としとこうか。
刑事・鳴沢シリーズの第一作。この作家、スポーツ小説と警察小説が二本柱とか。警察小説の第一作とも。新潟県警捜査一課の主人公、父は湯沢署の署長、捜査一課時代は「鬼の鳴沢」とうたわれた人物。祖父もまた警察官。捜査一課長、中署長を務め、かつて「ホトケの鳴沢」と慕われた人物。祖母、母はともにいない。アラサーで独身、元ラガーマンの主人公の成長物語とも。湯沢で老婆が殺された。背景に新潟の戦後の混乱期の事件が…。主人公に対して共感できるか、というのがこのシリーズを好きになるかの鍵だろうが、少々鼻につく。ということで☆☆☆か。このシリーズこの一冊でいいかな。
姫川という女性警部補が主人公の警察小説。高校時代にレイプ被害にあった姫川、その時の女性刑事との出会いが警察への道に。ノンキャリながら若くして警部補に昇進し、警視庁捜査一課の姫川班を率いる。勘の鋭さは抜群。姫川班の面々、敵役ともなるガンテツなどほかの刑事達。インターネット社会のひずみをテーマとしながら、謎解き。少々早めに筋が見えもしたが、脇のキャラが面白く、シリーズとして読んでもいいかなという気分。第二作目以降に期待ということで、☆☆☆☆。
建設コンサルタント二宮と、ヤクザの桑原というコンビ、関西で産業廃棄物処理場を巡るトラブルの中で暴れまわる物語。二宮も堅気であるけれど、ちょっと違う。行きがかりでコンビを組んでの大騒ぎ。ヤクザの世界、ヤクザと堅気のワルの世界、裏の世界がどっぷりと描かれ、それぞれのキャラが実に活き活き。大阪弁の会話のテンポ、「ダイハードやな」って言うのもそうそうと思わせる大活劇。それでもってきっちりと描く裏の構図。面白い。☆☆☆☆ほ。このコンビの第二作は『国境』とか。第三作は『暗礁』。不思議なことに全部違う出版社。
ステファニー・プラムのシリーズが集英社文庫に細美遥子の翻訳とともに引っ越してきて三作目。相変わらずの女バウンティ・ハンター、ステフの活躍である。ルーラ、おばあちゃんは脇を固め、モレリ、レンジャーとの関係はさらにややこしくなる。ロマンス小説の作家だったという著者だけあって、ややこしい関係はお好きなようで。今回はレンジャーがかなり大きな役になり、その過去も絡んできました。お約束のどたばたで、☆☆☆☆か。