歌野作品を初めて読んだ。主人公成瀬将虎は「何でもやってやろう屋」を自称し、、ガードマンなどをしている。妹と暮らす。かつて明智探偵事務所にいたことも。愛子から霊感商法の調査を依頼され、自殺しかけた麻宮さくらを助け、過去、そして今と時間軸を飛び越えながら、物語は進む。かつてヤクザの組織に潜入していたエピソードもあかされる。そうして最後にええ!っていう大どんでん返しも。それにはまるかどうかだが、うまいことは確か。☆☆☆。
ススキノ探偵シリーズ、久々の登場。ススキノの便利屋俺がソウル旅行に行くという「まろうど」のママから猫を預かることに。当日、ママ塚本美奈子が殺された。そこから事件を追う俺。種を蒔き、情報を集め、ススキノの町を飲み歩く。華とは続いていて、かかわりになるのを喜ばない。それが少し、束縛に感じているようでもあるが。学生時代以来の友人高田、元刑事の種谷、やくざの組長桐原といったメンバーもしっかりと登場する。殺されたママの高校時代が浮かび上がり、次第に絞られていく網。少々説明不足の展開もあるが、猫に話しかけては、まずいまずいと思う俺など、なかなか味がある。☆☆☆☆。
舞台はスペインのバルセロナ。内戦の後の混乱の中。古書店を営むセンベナーレは息子ダニエルを「忘れられた本の墓場」に連れて行き、本を一冊選ぶように言う。そこで選ばれるのを待っていたのが、フリアン・カラックスの小説だった。そこから始まる物語。時代を前後しながら、フリアンとその物語が謎を呼ぶ。読み応えがあるのだが、少々辛い感もあった。☆☆☆。
テレビで見た。原作が有川浩と知って、読んでみたいものと思った。有川作品らしく、出張の間に読み終えてしまうが、それはそれで心地よい。人間、家族と言ったもの、うまく描く。有川作品というのは、映像化しやすいのだろうか、『阪急電車』の時もそうだったのだが、映像化された作品も小説も、いい味を出す。☆☆☆☆。
再読シリーズ。2001年に第7刷。初版は1981年。アメリカでの出版は1975年。ううむ、随分前。アメリカ情報局の腕利きエージェント、マイケル・ケディング。引退を迫られ、閑職へ。結局、退職となる。パリに遊ぶ彼のもとに元宿敵のソ連のスパイから伝言が。出会った後に、在フランスのアメリカ・エージェントが探りを入れにくる。そんな中で、ケディングにスイッチが。過去の秘密世界を暴露する本を書き、世界中の出版社に送り出した。アメリカ、ソ連、イギリスなどのスパイ組織が追う。これをゲームとして逃げる。そして敵の懐の中に飛び込む。東西冷戦の中でスパイ小説華やかな頃、そんな時代の物語。それでも結構面白く、老いというテーマも興味深いものもある。☆☆☆ほ。
書店員の応援で花開いた作家とか、ヤッさんといってもヤクザではなく、不思議なスーパーホームレス。独特のホームレス美学を持つ中年男のヤッさん。彼に性根を叩き込まれる若きホームレスタカオ。ダンボールハウスはご法度。身奇麗にして、体を鍛え、野宿。魚河岸とレストラン・料理屋などを行き来して、情報を伝えて賄い飯のご馳走にあずかる。そこでいくつかのお話が生まれる。ということで、何となく、いい気持ちになるにはいい本ということでしょうね。☆☆☆ほ。
警視庁刑事総務課のシングル・ファーザー大友を主人公とするアナザーフェイスの第四作。今回は捜査三課のスリ逮捕の手伝いから始まる。老齢のスリを追う定年間近の刑事。その手伝いで現行犯逮捕目前、そこから物語が始まる。単なるスリから姿を消した被害者、そして殺人事件が。元捜査一課のスゴ腕。子育てもあって閑職についた筈が、捜査に引きずり出される。元役者という話は今回は出てこないが、「お前だと、何故かみなしゃべっちまう」と言われている。少々、かったるい気分になりました。子供とかはもう筋から離れてしまったし、ということでシリーズ力が衰えて☆☆☆。