ATTFアメリカ連邦統合テロリスト対策特別機動隊に所属する元NYPD刑事ジョン・コーリーのシリーズ第5作。第2作『王者のゲーム』で登場したリビアのテロリスト、ライオンの異名を持つアサド・ハリールが帰ってきた。ジョンとFBIで同じATTFに所属する妻のケイトはスカイダイビングに。ジョンの嫌な予感が当たり、ケイトが襲われる。ライオンが帰ってきた。ジョンの例によってのジョーク満載。これ翻訳大変だろうが、白石朗訳は良いですね。スーパーマン的なハリールに挑むジョン。9.11が色濃く現れた一作。☆☆☆☆ほ。
再読シリーズ。『リピート』を読んだら、その本歌というべきこの作品を読み返したくなった。ジェフ・ウィンストンはラジオ局のニュースディレクター。妻からの電話で「私たちに必要なのは…」と言われている最中に突然の死。気がついた時には大学の寮にいた。十代に戻った自分、そこでもう一度人生を始める。タイムトラベル物としては出色の出来。既に古典なのかも。これは読んでもらうしかない。☆☆☆☆☆。
乾くるみという人の本は初めて読みました。なかなかの驚きです。帯の紹介にあるとおり、ケン・グリムウッドの『リプレイ』があって生まれた作品かと。突然の電話、これから起こる地震を予言。タイムトラベル?過去への、別の世界への誘い。集められた9人。過去への飛躍。突然起こる死亡事件。続いてリピーターに被害者が。『そして誰もいなくなった』のように、一行の中から一人、また一人。そこにさらなる大事件が。という感じで、ぐいぐい来ました。しょうしょう重い気分にもなりまして、最後もワッときました。☆☆☆☆。
スウェーデンが舞台の警察小説。最近流行の北欧モノ。スウェーデンの実業界の大物が連続殺人の被害者に。その捜査に国家刑事警察に特捜班Aが作られる。スウェーデンの各地の警察から、人種も立場も違う刑事たちが集められる。大河となる警察小説の始りで、刑事たちの姿が描かれながら、事件は進む。移民がらみの事件を銃で解決して査問にかけられていた刑事、南米からの移民の刑事、フィンランドからの移民刑事、女性刑事などなど。それぞれの個性が面白いが、本当の面白さはこれからか。☆☆☆ほ。今後に期待。
再読シリーズ。流石にバルダッチは面白い。ルアン・タイラーはハイスクールを7学年で止め、未婚だが同棲中の男との間に娘がいる。トレーラーで暮らし、カフェで働く。母は既に亡くなっている。その母と同じ不幸の連鎖の中にいる。謎の男ジャクソンが取引を持ちかけられ、断るつもりが、急展開、引き受け、宝くじ一等当選となる。ルアン・タイラー、7学年でハイスクールをドロップアウトするが、容姿端麗、抜群の身体能力。そこに救世主のように現れる男。いささかハリウッド的ではあるが、展開は面白く、ぐいぐいと読ませてくれた。☆☆☆☆ほ。
高村薫のデビュー作。日本推理サスペンス大賞受賞とか。1990年の作品なのですね。「北」とか「南」とか、公安とか青銅社とか。今だと、何だこれは?というのが当たり前の時代だったんですね。主人公の幸田、謎の男モモ。幸田の友人北川。彼らが平気で越えていく。そう、越えていくのですね。これは時代というものでしょうか。黄金を狙って、そこに過去のしがらみがいっぱいからまってきて、ハラハラ、ドキドキ。最近映画になったけど、どうしたのだろう、説明しないと分からない部分多そうだけど。☆☆☆☆。
今野の「隠蔽捜査シリーズ」からスピンオフ。竜崎の幼馴染で警視庁刑事部長の伊丹を主人公とする短編集。小学生の同級生で、警視庁のキャリアとして再び顔をあわせた二人。東大法学部出身で堅物の変人という竜崎と、私立大からキャリアとなり、いつも颯爽として現場主義を貫く刑事部長の伊丹。竜崎には小学校時代、伊丹の仲間にいじめられていたことしか思い出に無く、伊丹は勉強でかなわない竜崎に一目置いていたという。「隠蔽シリーズ」の中で語られてきた伊丹の内面、過去、今が各話の中で明らかになっていく。そして本編の内幕も。スピンオフとして楽しめる。これが独立することは無さそうであるけれど。☆☆☆☆。
三羽の作品は、オムニバス形式のものがしばしばあるが、公園を舞台にそこに集う人々の物語。以前、読んだがここに書いてなかったので。一戸建ての新興住宅街、そして団地もある古い住宅街。その間に瓢箪型の公園がある。それぞれの住民が、それぞれの場所に集まる。古い住宅街から集う幾人かのママとその子供たち。同じ光景が、それぞれの視点で描かれ、それぞれの人生が明らかになっていく。これ、とても良い。☆☆☆☆☆。
路地裏に立つ雑居ビル。その名も「辻堂ビルヂング」。築50年くらいという古いビル。そこを舞台とする六つの物語。健康食品会社に勤める加藤とその同期達の「道祖神」。無認可保育園に勤める初老の女性種田先生が主人公となる「紙飛行機」。司法書士を目指すと言いながら漫然と塾講師を務める大貫の「サナギマン」。不動産会社のテレホナポインターの桜井の「空回り」。大学野球を怪我で止めた広告会社の江草の「風穴」。それぞれの中に、少しづつ人が登場し、雑居ビルの一階の店は、居酒屋だったり、カレー屋だったり、おでん屋だったり。ガンジャというあだ名の不思議な外国人が働き、じいさんが一人。辻堂ビルにその前史から関わる公吉の語る「居残りコースケ」。縄をなうように、すべての物語がからみながら、人の生きるということを形っていく。三羽の中では『公園で逢いましょう』の系譜をひく物語。☆☆☆☆ほ。
博多探偵ゆげ福シリーズの第二作。博多の私立探偵弓削の8つのお話。例によって九州ラーメンの歴史が語られ、ラーメン屋を舞台とした事件が起こる。そこに地元の暴力団の抗争や警察の暗部などなど。第一作を読んで大丸南の赤のれん節ちゃんラーメンに幾度か行った。久留米にも行きたいし、北九州にもという気分にもなる。話が進む中で、弓削の父失踪の謎に近づいていく。第三作を待とう。☆☆☆ほ。