カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『ラストマン・スタンディング』デイヴィッド・バルダッチ 小学館文庫

2008-09-29 00:32:03 | 洋物
 バルダッチと言えば『目撃』、『運命の輪』などがあり、僕にとって鉱脈作家の一人。久々の新作(と言ってもアメリカでは2001年)に喜んで分厚い本を手にとった。FBIの中のエリート強襲部隊HRTのメンバー、ウェブ・ロンドンが主人公。麻薬の取引現場を強襲し、会計士なども生きたまま捕まえるというミッションで幕が開く。ところが、HRTでも最優秀のウェブが原因不明の硬直で倒れている間にチームが全滅。面白いのはこうした部隊にアメリカでは一流大学を出て、弁護士資格を持っているような人物が入っていたりすること。久々のスーパーヒーローで、HRTでのライバルの力を借り謎を追う。FBIの善玉、悪玉、精神科医、ストリートの麻薬ボスなどいろいろなキャラクターがそれぞれに活き活きと動く。ただ、全体の印象としては、バルダッチだったらもっと、と思わせるものがある。☆☆☆ほ。

『ぼくと、ぼくらの夏』樋口有介 文春文庫

2008-09-27 22:33:36 | 和物
 樋口のデビュー作でサントリーミステリー大賞読者賞受賞作。1988年というから20年前。確かに解説にあったが、その割に古びていないかな。刑事の息子のぼく。テキヤの娘の彼女。同級生の死から、二人はホームズとワトソン(ぼくがこっち)となる。青春小説ですねえ。マイペースの彼女。「ぼく」は離婚した父と住み、父のご飯まで作る。確かに今時ではないかも。謎解きもそれなりに面白く、最初の作の持つパワーがある。『彼女はたぶん…』で書いていたが、こうした第一作レベルを続けるのは確かに大変だ。☆☆☆ほ。


『臨場』横山秀夫 光文社文庫

2008-09-24 23:58:02 | 和物
 『半落ち』で有名になった横山秀夫を初めて読んだ。短編集。ジャンルは警察物。倉石という検視官を中心に話は巡る。「終身検視官」、「倉石学校の校長」と言われる第一課調査官の、職人過ぎる職人技とそれを持った男の強烈な個性の物語。実に上手いものだ。短い中で起承転結。上質の落語のような読後感がある。時に、その意が汲みにくい場合もあるにはあるが、和物の鉱脈作家であることは間違いなさそう。このシリーズ、もっと読みたいと思わせる。☆☆☆☆ほ。

『ハイ・フィデリティ』ニック・ホーンビィ 新潮文庫

2008-09-23 00:09:32 | 番外
 ミステリーではない、再読モノ。『ぼくのプレミアライフ』がデビュー作。その二作目。三作目が『アバウト・ア・ボーイ』三作とも映画になっているとか。『アバウト…』だけ観たことがある。ホーンビィは1957年生というから同い年。中古レコード店のロブ、同棲中の彼女が家を出たところから始まる。これ、全編、英米音楽、それも中古レコード店で探さなくちゃいけない音楽がBGMで鳴り続け、ロブの大人になれない症候群みたいな世界が延々と続く。前に読んだ時こんなんだったかなと思いつつ。訳者は森田義信。この人がとてもいい。訳文と註釈が最高にいい。その後、二冊も文庫が出ていることを知った。読んでみようかな。手に入れば。☆☆☆ほ(だと思う。)


『裏切りのスパイたち』ゲイル・リンズ 二見文庫

2008-09-20 22:05:47 | 洋物
 「R・ラドラムの後継者」というゲイル・リンズ。1985年の東西ベルリンの境界から物語は始まる。捕虜交換が一転、暗殺の場に。舞台は2005年のスイス。そしてアメリカの刑務所に。元CIAの腕利きで二重スパイであったジェイ・タイスが脱獄。行方を追うハンターとしてエレーヌ・カニンガムが呼び出される。そこから一転、二転、三転とどんどんと事態がぐるぐるまわり出す。沢山の登場人物に次々と変る視点。集まるかつての腕利きたち。ということなのだけれど、どうも、訳が悪いのだろうか。腑に落ちない所が時々。それでもって、これだけ広げといてこれはねというのがあって。☆☆ほ。ちょっと厳しいけれど。


『笑い犬』西村 健 講談社文庫

2008-09-15 22:48:11 | 和物
 オダケン・シリーズの西村健によるノン・オダケンモノ。主人公は乙石銀行の元支店長。東大受験に失敗、早大から銀行入り。バブル時代に場末の支店からスタートし、猛烈銀行員となって同期のトップを切って支店長に。そこでバブルが崩壊し、貸し剥がしの最中に自殺者が。それをきっかけに懲役刑となる。塀の中の暮らしが描かれていく中で、何かが変わっていく。そこまでは何がミステリーかという感もあるが、時折、オダケンモノの西村健らしい世界もある。後半になってオダケンモノの重要キャラの一人が登場し、一気に終盤へ。ミステリーとしては今ひとつだけれど、それでも結構面白くもあった。☆☆☆ほくらいかと。

『彼女はたぶん魔法を使う』樋口有介 創元推理文庫

2008-09-14 23:03:08 | 和物
 樋口の人気シリーズで、元刑事にしてフリーライターの柚木草平ものの第一弾だそうで。別居中。娘一人。彼女は警察のキャリアで法務省のダンナ持ち。それでいて、まわりに素敵な女性が次から次へ現れる。この本、最後の解説で「ええっ、ここで終わりなのか?!…とそう思ったでしょう。今アナタ、そう思ったでしょ。」にひかれて買ってしまった。
『ぼくと、ぼくらの夏』でデビューし、作家としてやっていくにはシリーズ物がいるんだよということで生まれたそうな。たまたま手にとり、そこそこ読めて。時間があれば。☆☆☆。ということだも。

『屈折率』佐々木譲 講談社文庫

2008-09-04 22:25:56 | 和物
最近、警察小説が好評の佐々木譲。今回は元商社マンが親族経営のガラス会社の社長となる物語。そこに女性ガラス工芸作家登場。こうやって書くとなんだかだが、再建ネタはちょっと面白い。☆☆☆。とは言え、この小説、ジャンルは何だろう。別にいいかもしれないけれど、勿論ミステリーではないし、読むのに飢えている時にはお勧めです。ということかな。

『鎮火報 Fire's Out』日明恩 講談社文庫

2008-09-01 22:49:07 | 和物
 警官モノでデビューの日明恩の消防シリーズ第一作。主人公の消防士大山雄大。理想に燃えるどころか、「九時五時の日勤に早くなって、楽に消防稼業で金貰う」という元不良。母一人、子一人。母の民子は生保レディで、年の割りにいけているとか。友人の祐二は高級官僚の息子だが、ガテン系で頑張る元不良。中年ヒッキーの守とは不思議な三人関係。雄大の父は殉職した消防士。その父に少年時代、命を助けられたレスキューサイボーグ工藤。隊にはオヤジ、富岡、兄貴生田、自衛官出身星野など。いやいや、いい加減に消防士を務める主人公の独白で一週間とちょっと。謎の連続放火。水を掛けると燃える謎。などなどで、消防の実態を明らかにしつつの青春物語。結構楽しい。☆☆☆☆。