本屋に平積み、表紙の写真に惹かれた。幕末に日本に来た宣教師フルベッキを中心とした日本人達の群像写真、「フルベッキ写真」。そこに岩倉具視、西郷隆盛、坂本龍馬、勝海舟など幕末を駆け抜ける人達すべてが写っているという。主人公は歴史小説家望月。明治維新にフリーメイソンが関係していたと、歴史小説の側から解き明かしたという人物。このフルベッキ写真の裏側には、明治という時代の大きな大きな謎があるという。歴史家には解けない謎がここに明かされるという。小説としては拙い。謎解きとしては結構面白い。☆☆☆☆。別の本も読んでみようか。
再読シリーズ。トミーは一流のシェフを目指すニューヨークのリトル・イタリーにあるフレンチレストランのスー・シェフ。叔父のサリーはマフィアの下っ端、その紹介で入ったのが今の店。シェフは腕は良く、トミーとも親しいのだが、麻薬に溺れる。レストランは潰れかけ。オーナーは元歯科医、連邦検察局との取引で、おとり捜査に加わっている。マフィア、連邦検察局などが入り乱れ、そこに料理の話も少々。ただ、いまひとつ料理の世界も物足りず、ミステリーとしてもそれはないよ感があり、☆☆ほ。
落語専門誌「季刊落語」の編集部長牧大路と新人編集部員間宮緑。間宮を主人公として落語界に起こる様々な事件を解決していく…。この人、福家警部補という新たな名探偵を生み出し、コロンボ、古畑に並ぶ…ということだったので、まず最初の作品をと読んでみた。落語界という舞台が面白い。ただし、謎解きがもうひとつ壮快感に欠ける様な。最初の作品ということで、仕方が無いのか。福家シリーズを読んだものか、どうしよう。☆☆ほ。
こんな題名の本があったような、冒険アクションも久々にと手に取った。舞台はアフガン。捕虜のタリバンの聖職者を乗せたC130輸送機が撃墜される。航空士マイケル・パーソンは、通訳の女性軍曹とともに捕虜を連れて逃げることに。空のプロ、ただ彼はスーパーマンではない。動揺のあまりの暴走を軍曹に止められることも。しかし、ケンタッキーの山で育った山のプロであったようで。冬のアフガンの厳しい山中で、歩き、戦う。ということなのだが、文章と相性が悪く、☆☆ほ。
有川浩の図書館戦争シリーズ③。今回のテーマは言葉狩り。舞台は茨城県。県展で良化委員会の制服を使った「自由」という作品が優秀賞を。屋外に展示の「自由」を守るために、特殊部隊が茨城に派遣される。ところが茨城は大変な事態になっていた。自己規制という名のメディア統制、「差別語」という不思議な言葉。これらの問題を分かり易く差し出してみせる作者の手腕は流石。本当に危ないよ!って所を、郁の不器用な恋とともに描く。あの手塚も次第に変わっていくのも面白い。この巻でお仕舞いと思ったら、もう一巻あるとかで、☆☆☆☆。
有川浩の図書館戦争シリーズ③。今回のテーマは言葉狩り。舞台は茨城県。県展で良化委員会の制服を使った「自由」という作品が優秀賞を。屋外に展示の「自由」を守るために、特殊部隊が茨城に派遣される。ところが茨城は大変な事態になっていた。自己規制という名のメディア統制、「差別語」という不思議な言葉。これらの問題を分かり易く差し出してみせる作者の手腕は流石。本当に危ないよ!って所を、郁の不器用な恋とともに描く。あの手塚も次第に変わっていくのも面白い。この巻でお仕舞いと思ったら、もう一巻あるとかで、☆☆☆☆。
再読シリーズ。筆者の二作目がこの本。ウォール街の弁護士事務所で信託・遺産の分野のジュニア・パートナーの弁護士ベン・ブラッドフォード。かつてカメラマンを目指した。妻はかつて小説家を目指したが、今はニューヨーク郊外に暮らす。二人目の子供の夜泣きに悩まされながら。ベンはカメラマンの夢を捨てきれず、高いカメラを買い、豪華な暗室セットを持つ。妻はかつて嫌悪した郊外の妻であることに不満を抱く。そんな夫婦の間に隙間風。それが大きな事件をもたらした。そこから場面は一気に変わり、東海岸から大陸分水嶺の西側、モンタナへと場面が移る。少々強引な展開は二作目たる所以か、それでも皮肉な運命に頁をめくる。おいおいおい、と言いながら、最後まで。後半から持ち直し感があり、☆☆☆ほ。
ファーシング三部作の最終作。今回の語り手はエルヴィラ・ロイストン。そしてカーマイケル監視隊隊長の視点から。時は流れ1960年代となっている。ソ連は崩壊し、アメリカは内部に問題を抱えている。イギリスはドイツと歩みを同じくし、ファシズムの中にいる。エルヴィラは友人とともに、女王への謁見による社交界デビューを目前に控える。そうした中で、イギリスの階級社会が描かれていく。カーマイケルは監視隊隊長として、裏の組織を作り、ぎりぎりの活動を続けている。前半、イギリスの社会の嫌ったらしさが、流石に鼻についてきたが、広げられた枝が収斂されていき、完結となる。イギリス的に。☆☆☆☆。
ファーシング三部作の第二作。今回の語り手も二人。一人はスコットランド・ヤードのカーマイケル警部補。もう一人はヴァイオラ・ラーキン。サー・ラーキン子爵の六人姉妹の三女。貴族の世界から飛び出し、演劇に生きる。彼女の追憶の記録から始まる。一人の女優が爆弾で死亡。その知人でもあったヴァイオラは当時流行の男女入れ替わりによるハムレットで主役ハムレットを演ずる。その稽古の最中に、妹のシディが現れ、人生が大きく変わっていく。捜査するのはカーマイケル。女優の爆死から次第に新しい事件へ。今回も現実とは微妙にそれた時間軸の中の20世紀を舞台に、イギリスの上流階級の世界が描かれる。解説はネタばらしになってしまいそうだが、展開は期待を裏切らない。☆☆☆☆ほ。カーマイケルに思いもかけぬ事態が起こり、第三部へ。☆☆☆☆ほ。
ファーシング三部作の第一作。評価が高かったが、「1949年、ヒットラーが生きていて…」といった内容というので、何となくスルーしていた。読んでみたら、これが面白い。語り手は二人。一人はルーシー・カーン。サー・エヴァズリーの娘で、ユダヤ人の銀行家と結婚している。1949年、ヒトラーは生きており、イギリスとは講和を結び、ドイツはソ連と戦っている。この講和をまとめたのが、ファーシング一派。サー・エヴァズリーにその妻、レディ・エズヴァリー、ジェイムズ・サーキーら貴族達。もう一人の語り手は、スコットランド・ヤードのピーター・カーマイケル警部補。第二次大戦の際に従者であったジャックと暮らす。二人の語りによって、舞台が別の角度から描かれていく。大きな陰謀。ファーシング講和を結んだサーキーの死体が発見され、カーマイケルが捜査に当る。異なった時間軸を扱ったものだが、実に面白い。史実から連なりながら、離れながら。そこにイギリスの階級社会、さらに上流階級の世界が描かれる。謎が次第に明らかになっていく。へっ、こんな結末?っということで、第二作へ。☆☆☆☆ほ。