カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『ボックス!』上・下 百田尚樹 太田出版

2011-09-22 23:43:43 | 和物
 母子家庭の子木樽優紀は大阪の私立恵比須高校の進学特別クラスに通う特待生。その幼馴染で同じ高校でボクシング部に属する鏑矢義平。中学時代の同級生にいじめられた優紀は鏑矢と同じボクシング部に。奔放な天才肌と努力型の物語。二人を見守る女教師の高津。体育教師でボクシング部コーチの沢木はかつて学生チャンピオン。体の弱い女子特待生の丸岡。ボクシングジムのトレーナー曽我部。ライト級のモンスター稲村。それぞれがボクシングに向かっていく。まあ、こんなもんといった調子で読んでいたが、ぐぐっと来るんだなぁ、所々で。スポーツ物には弱いので、☆☆☆☆。

『永遠の0』百田尚樹 講談社文庫

2011-09-21 23:18:46 | 和物
 やる気をなくした司法試験浪人の主人公に、フリーライターの姉から、祖父の調査の依頼。二人の祖母の前夫で、二人の母はその前夫と祖母の娘。祖父は特攻で死んだという。戦友会の情報から、祖父を知る人物に会いながら話を聞いていく。百田尚樹はあの「探偵ナイトスクープ」の構成作家だったという。小説としては未完成な感もあるけれど、戦争、日本という部分で、書きたい所は伝わってくる。少々重いが、☆☆☆☆。


『タッポーチョ 太平洋の奇跡』ドン・ジョーンズ 祥伝社黄金文庫

2011-09-20 21:25:59 | 洋物
 映画「太平洋の奇跡」の原作本。サイパン島を舞台に第二次世界大戦で実際に起こったお話。陸軍の大場大尉が主人公。アメリカ軍の侵攻によって、指揮系統が壊滅した日本軍。総司令官らは自決。残った部隊がわずかに抵抗を続ける。民間人も山にこもる集団も。彼等を守り、抵抗を続けた大場の部隊。その一方で、個人的にアメリカ兵への復讐を誓うはぐれ兵も。大場らは終戦後も抵抗を続け、別の島にいた少将の命令書を受けて初めて降伏をする。英雄伝なのだけれど、日本人は書かない世界。国を守る、という為に、命を懸けたという行為までもが否定されるというのは、世界的に見ても不思議な状況か。サイパンにいたアメリカ兵が戦後、大場のもとを訪れて小説化が実現という。映画化に伴い復刊。日本という国の不思議さ、現状の危うさを感じさせるものでもある。☆☆☆。

『警視庁情報官 シークレット・オフィサー』濱 嘉之 講談社文庫

2011-09-19 15:43:18 | 和物
 公安出身の著者が…、という本。「この小説のリアリティに戦慄した。本物です」とあの佐藤優某が言う。これ、小説としては、つまんないものですね。内幕モノというか、暴露モノとしては、ちょっと興味津々でありました。でも、やっぱ、この一作だけでいいや。☆ほ。佐藤さん、これ小説ですか?


『空の中』有川 浩 角川文庫

2011-09-18 17:03:38 | 和物
 有川浩の自衛隊三部作の第二作。この小説が、有川の転機となったような。日本航空業界の夢を乗せた試作機が謎の事故。続いて自衛隊の戦闘機も。一転、高知の高校生、事故死したパイロットの息子と幼馴染が謎の生命体と遭遇する。雲の中に、不思議なものがあった。高校生と幼馴染。試作機の事故調査に加わった技師と女性パイロット。さらに周辺のキャラクターが実にいい味を出す。SF的なる大人のライトノベルというか、それでいて、かなり哲学的な部分を持っていて、この作家、なかなか面白い。☆☆☆☆。

『阪急電車』有川 浩 幻冬舎文庫

2011-09-18 16:44:14 | 和物
 不思議な題名、映画化されるらしい。部隊は阪急今津線。宝塚、宝塚南口、…門戸疫神、西宮北口。八つの駅、宝塚から西宮北口へ、そして折り返して戻る。それぞれにドラマがあって、それぞれが重なりあいながら、電車は進んでいく。図書館で見かけた女性との物語、美しき寝取られ女、女子高生の会話を聞くDV被害の女。これが阪急今津線のどこかのんびりとして、それでいて都会的でもあって、ちょっと文化の香りなどもある中に、広がっていく。上手いものです。楽しく読んで、心地良い。またまた言えば、大人のライトノベルということか。☆☆☆☆。

『塩の街』有川 浩 角川文庫

2011-09-14 21:45:02 | 和物
 有川浩のデビュー作で、『空の中』『海の底』へ続く自衛隊三部作の第一作。自衛隊三部作とか言うので描くイメージとは大違い。塩の結晶が突然地球各地に落下。そこから「塩害」が。人が塩化して死んでしまうという。主人公の真奈、女子高生。細かな話が連続していく。時がいったり戻ったり。重い荷物を背負った男。ほとんど何も食わずに海を目指す。真奈が「大家さんのところ」へ連れていく。秋庭、入江とキャラクターもよくて、単純なんだけど、純粋で。帯に「大学生1位」ってあったけど、なるほどね。大人のライトノベルって言葉があったなあとがきに。有川浩という人が女性だったのも後で分かった。☆☆☆☆。

『敗者の嘘 アナザーフェイス2』堂場瞬一 文春文庫

2011-09-13 20:16:22 | 和物
 警視庁刑事総務課の大友を主人公とするシリーズ第二作。この手のシリーズは第一作が一番ということが多いが、今回はこちらが上。前より面白い。大友という主人公は少々鼻につくが、友人達がいい味を出す。神田での殺人事件。重要参考人が自殺。するとその知人であった女性弁護士が自らが犯人と自首してきた。被疑者死亡で幕引きしたい警察、弁護士の拉致、公安までも登場する。人間が少し魅力を増してきた。それでも嫌みな感じは残るのは、主人公がイケメンだからかな。☆☆☆☆。


『アナザーフェイス』堂場瞬一 文春文庫

2011-09-12 23:35:50 | 和物
 鳴沢シリーズの堂場の新しい警察小説。鳴沢モノは第一作を以前読んで、主人公と相性が悪く、遠ざかっていた。あまり期待せずに手にとったのがこのシリーズ。主人公は刑事総務課勤務という大友。妻を亡くし、息子を育てるために刑事一課から残業の無い刑事総務課に移った。独特の勘を持つ大友、福原刑事部特別指導官は彼を前線に送る。銀行員の息子が誘拐された事件、大友は刑事でない刑事として参加、後ろ向きと前へという想いの中で、事件が解きほぐされていく。新たな主人公の登場、「最も刑事らしくない刑事」ということだが、☆☆☆ほ、かな。

『ジウⅠ~Ⅲ』 誉田哲也 中公文庫

2011-09-09 23:50:46 | 和物
 Ⅰ警視庁特殊犯罪捜査係 SIT、 Ⅱ警視庁特殊急襲部隊 SAT、Ⅲ新世界秩序 の三部作。門倉美咲、伊崎基子。SITに属する二人の婦人警官。門倉は豆腐屋の娘。背が高く、不思議な説得力を持つ。伊崎はレスリング、柔道をやってきた武闘派。謎の中国人、ジウ。門倉、伊崎という二人の対照的な女性は『武士道』シリーズにも共通する設定か。ところどころにホラー作家の香りも漂うが、三部作の大作、大きな流れが描き出されて見事。登場人物の描き込み、キャラクターの設定も確かなもので、なかなか面白い。☆☆☆☆。