カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『天下城』上・下 佐々木譲 新潮文庫

2008-11-29 00:02:24 | 和物
 時代小説です。警察小説、第二次世界大戦物で有名ですが、あるのですね。天下城とは安土城。その炎上から物語は始まり。主人公は信濃の佐久に生まれた市郎太。武田の軍勢に攻められ、金山に売られた。その後、軍師の弟子となり、さらには穴太衆という石積みの職能集団に入り、親方となる。という人物の人生が、戦国時代を舞台に、松永久秀、織田信長、羽柴秀吉などの人物を登場させながら展開するというもの。石積みを主役に持ってきたことで、従来の戦国物と違った目線があり、結構面白い。どうということは無いが☆☆☆ほ としときましょう。

『容疑者Xの献身』東野圭吾 文春文庫

2008-11-26 23:18:35 | 和物
 直木賞をこれで取ったんでしたっけ。ガリレオ探偵の登場する一冊。これは面白い。そう来るかと思わせる。冴えない高校の数学教師が主人公石神。どうも観察力が鋭い人物らしい。弁当屋で毎日弁当を買う。それはそこで働く女性が目当てのようである。その女性とはアパートの隣人。そこに事件が…。湯川が登場。何と、同じ大学の同じ理学部。物理学科の秀才湯川に、数学科の秀才石神。ううむ。そう来たかという展開にやれやれ。そして確かに人間を描いたドラマでもある。脱帽です。東野の傑作なんだろうな。☆☆☆☆☆。
 映画も面白かったらしいですね。観てないけど。


『闇の秘密口座』チャールズ・エッピング 扶桑社ミステリー

2008-11-22 01:14:27 | 洋物
 扶桑社というのは時々大当たりがある。どちらかと言えばマイナーな所が多い気がするが、なかなか味のあるものも。ということで、初めて見るチャールズ・エッピング。考えて見れば題名が変。「闇」の「秘密口座」。ま、いいか。アレックス・ペイトンというイェール大でMBAをとったらしい女性がチューリッヒでスイスの銀行のシステム関係の仕事に携わる。そこで見つけた電話番号から、第二次大戦当時の秘密信託口座にぶつかり、その謎を追って欧米を走り回るという物語。プロットはそこそこだったのだが、追いかけはじめてからのものはあまりにいい加減。甘甘の筋立てで時間潰しにやっと。☆☆ほ。

『ワシントン封印工作』佐々木譲 新潮文庫

2008-11-15 22:53:10 | 和物
 第二次世界大戦直前のワシントンが舞台。佐々木の第二次世界大戦三部作とは時期的に近いが別の作品ということになる。開戦直前の日本大使館。留学生の大竹は学業が続けられず、大使館に雇われる。日本人の父、アメリカ人の母を持つミミは日本大使館のタイピストに。この二人を軸に、国務長官補佐官ホルブルック、大使館の若手葛西、通訳の日系二世安西、これに野村大使などが登場。開戦までの緊迫した交渉、アメリカの謀略、戦前の日本を大竹に精神分析させるのなどは面白い手法か。しかし、これならば、ノンフィクションで当時の在アメリカ日本大使館を読みたかった。何だか、ミミとホルブルック、大竹の三角関係など邪魔な感あり。☆☆ほ。

『キング・オブ・スティング』マシュー・クライン ハヤカワ文庫

2008-11-11 22:56:49 | 洋物
 久々にハヤカワ文庫。「痛快無比のコン・ゲーム小説」という帯の文句に惹かれた。一人称モノはあまり好みではないが、主人公は元詐欺師で、今は時給10ドルとほとんど売れないビタミン剤のインターネット販売をするカリフォルニアの男。別れた妻との息子がロシアマフィアに借金をしたところから、昔の世界に舞い戻る。第一部ザ・ローバー(おとり)、第二部ザ・マーク(カモ)、第三部カックル・ブラッダー(血糊)とかつての映画「スティング」を思い出される。折に触れて語られる詐欺の手口が面白く、コン・ゲームが続いていく。仲間を集めての詐欺、仲間でも分からない筋書き。そこそこ面白いがそこそこ感があって、☆☆☆ほ、くらいってとこ。

『海辺のカフカ』上・下 村上春樹 新潮文庫

2008-11-08 00:51:05 | 和物
 純文学を読むというのは随分久しぶりかもしれない。『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』を読んだのは四半世紀以上前のことになる。村上春樹で卒論を書けば、現代を語ることに、なんて言ってたこともある。その後、ベストセラーになってしまったりしたが、読んではいた。
 どうだったと言われると、実に不思議で、15歳の少年が主人公。ナカタさんという老人がいて、佐伯さん、大島さん、星野くん。15歳の少年はとても難しい話を大島さんとする。
メタファー、メタファー。ナカタさんは昔は頭が良かったが、昏睡状態になった後、読み書きもできなくなり、「知事さんにホジョをもらい」「ネコさんを探して」生活している。
 性同一症候群の大島さんは男装のゲイというし、佐伯さんは50歳を越していて、15歳の少女でもある。ナカタさんはネコさんと話ができる。でもジョニー・ウォーカーを殺さなくてはいけなくなり、アジとサバを降らし、ヒルを降らす。中野区を出た事が無かったのに、大きな橋を渡って、田村カフカの後を追うように、高松にたどり着く。富士川から高松までは、名古屋の星野くんが連れてきた。暴走族から自衛隊、長距離ドライバーの星野くんはベートーベンの『大公トリオ』を聞く人になる。
 何だか分からないし、カフカとカラスの少年がどうなったかも分からないけど、星野くんは最後までやり遂げた。猫のトロから教わったように。そう、星野くんもネコさんと話せるようになっていた。
 どんどん続きを読みたくなった。駅までの道、短い通勤電車、職場までの道、それだけで済まずに、家でも読んだ。でも寝床では読まない。眠れなくなるから。ということで、読了したのだけれど、何だったのかは聞かないで欲しい。分かってないと思う。僕はナカタさんはいい人だと思う。星野くんよ、幸せに。☆☆☆☆?☆。
 そうは言いながら、結局、分からないな。なんでナカタさんは死ななくちゃいけないんだろう。どうして佐伯さんは。田村のとおさんは一体何だ。何も分からない。それでいて、読ませる不思議。


『真相』横山秀夫 双葉文庫

2008-11-03 23:19:54 | 和物
 「真相」「18番ホール」「花輪の海」「他人の家」横山の得意とする警察物ではない。息子を殺された夫婦、村長に担ぎあげられた男、大学空手部時代のこと、前科者の夫と妻。それぞれの人生の中にある、そして飛び出してくる真実。「真相」というのが秀逸。それぞれが謎解きの部分を持ちながら、何と人間とは…という短編集。☆☆☆☆。


『震度0』横山秀夫 朝日文庫

2008-11-01 00:34:46 | 和物
 舞台は関東と思われるN県警。神戸の大地震の日、人望の厚い警務課長の不破が突然失踪する。本部長、警務部長のキャリア組。警備部長は準キャリア。地方と呼ばれる地元のノンキャリアが刑事部長、生活安全部長、交通部長。それぞれが県警公舎に住む。 警務部長の失踪は県警にとって大きな危機。この危機にあたって、それぞれの思惑が蠢き、それによって県警内部、そして公舎、官舎の妻達も含めて大きな渦の中に。
 多少、それぞれの人物像が誇張しすぎの感はあるものの、幾筋もの糸がもつれ、絡み合い、大団円へと向かっていく。警察小説、社会小説、そして人間を描くなどしながら、謎が絡み合って一気に解き明かされる。いやあ、やるね、この人は。☆☆☆☆☆。