5年ぶりにキャロル・オコンネルの作品が登場。今回は、マロリーのシリーズではなく、『クリスマスの日に少女は帰る』以来のノン・シリーズの作品。舞台はアメリカ、カリフォルニア州北西部の小さな町コヴェントリー。そこに一人の男が帰ってくる。故郷には父と不思議な家政婦。その家に弟の骨が届けられていた。塔のある家に住む弁護士とその妻、そこに帰ってきていた鳥類学者の娘。頼りない保安官、かつて小説家だったゴシップライター。その町では誰も行かないという図書館。それぞれが、独特の空気を帯びて登場する。小さかった弟は何故一人で森に行ったのか。どうして帰ってこなかったのか。それぞれの人が複雑に絡み合い、おどろおどろしいけれど、それでいてどこかさっぱりと。キャロル・オコンネルは流石である。解説の人も書いていたけれど、創元推理文庫はどうしてマロリー・シリーズの続編を出さないのだろう。☆☆☆☆☆。もっとつけたいくらい。
黒川作品、例によって大阪舞台とするノアールである。金券ショップ会社の会長の老人が誘拐される。舞台は大阪。社長の息子にかかってきた電話は金塊37キロ。20億。刑事たち、犯人、老人、社長。それぞれのキャラが結構生きている。大阪弁の面白さも。手口は巧妙。おお、そう来たか。老人のキャラがいい。☆☆☆☆。
1995年の小説。講談社文庫からだけで14冊も出ていた。SF新本格とも。確かに設定はSFか。富豪の祖父。長女と三女は家を出た後に、次女と父とが大成功を遂げ財を成す。次女には子供はいない。祖父は遺言を毎年書き直す。会社の秘書と次女の秘書。皆、家に呼ばれて、正月を迎える。そこで祖父が死体となって発見される。長女の息子が主人公。彼には不思議な体質が。時折、訪れる繰り返しの時。九回繰り返される反復落とし穴。丸一日が九回繰り返される。祖父の死体が見つかったところで、反復落とし穴に。どうしたら祖父が死なずに済むのかを繰り返し試みる…。というお話。設定はSF。人間の掘り下げは物足りない。講談社ノヴェルズだったから仕方が無いか。☆☆☆。
スウェーデンの警察小説。主人公はクルト・ヴァランダー。中年のくたびれ気味の刑事。マルティン・ベックが主人公のシリーズは有名とか。離婚していて、精神的に不安定な娘が一人。スウェーデンの田舎町。その農村部に住む老人夫婦が惨殺された。署長はバカンスでスペインに旅行中。クルトと同僚のリードべリ。二人を中心に捜査が進む。北欧の小説は暗めが多いらしい。この小説も、僕の分類では明るい方には入れにくい。スウェーデンという国の状況が、伝わってくるのは興味深いが、ミステリーとして読むにはさほどの感じ。☆☆☆。