カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『朽ちないサクラ』柚月裕子 徳間文庫

2018-08-31 23:08:03 | 和物
 ストーカー相談を先送りし、訴えの受理を伸ばした挙句に被害者が殺された。そしてその時、警察署は慰安旅行に。スクープされた慰安旅行、広報課の泉は友人の新聞記者の裏切りを疑う。主人公は広報課の警察職員。彼女が事件の中に切り込んでいく。広報課の上司、上司の友人の捜査一課長、泉の警察学校の同期磯川。外からの捜査から、事件はカルト集団、そして公安へと広がっていく。少々無理感が強く、電車読みには適しているか。☆☆☆ほ。

『魔女は甦る』中山七里 幻冬舎文庫

2018-08-28 22:43:11 | 和物
 第6回『このミス』に応募されたのがこの本の原型という。『さよなら、ド…』の前の作品ということになる。冒頭は衝撃の殺人現場。経験を積んだ刑事ですら耐え難い程の凄惨な現場。埼玉県警の槇畑は捜査を進める。渡瀬も登場、古手川の若き姿も。元薬物研究員の死から思わぬ方向へ広がる事件。かなり大袈裟な展開があり、嬰児誘拐、無差別殺人という事件がつながっていく。いろんな要素がテンコ盛り。それがいいかどうかであるけれど、中山七里の世界を知るためには必読か。☆☆☆ほ。

『アルファベット・ハウス』上・下 ユッシ・エーズラ・オールスン ハヤカワ文庫

2018-08-26 17:34:52 | 洋物
 特捜部Qのオールスンの処女作。ブライアン・ヤング、ジェイムズ・ティーズデイルというイギリス空軍のパイロット。仲良しコンビの二人がドイツで撃墜され、パラシュートで脱出。何とか逃げ延びて飛び乗った列車は病院列車だった。彼らが潜んだのが精神病患者の車両。そのまま療養所へ。前半は二人の交互の視点から、療養所の世界が描かれる。患者はドイツ軍SSに所属の将校たち。彼らは果たしてそこから抜け出すことができるのあか。後半はその後の物語となる。特捜部Qのファンとしては、腰巻(帯)の惹句は少々大袈裟。青いというか、無理筋多いというか。☆☆☆。まで。

『そしてミランダを殺す』ピーター・スワンソン 創元推理文庫

2018-08-17 23:08:36 | 洋物
 ある日、ヒースロー空港のバーで見知らぬ女性と知り合う。一週間前に妻の浮気を知ったばかりの実業家のテッドは妻を殺したいということを打ち明けることに。テッド、空港で知り合ったリリー、テッドの妻ミランダ、刑事キンポールの独白で物語は進む。過去へ、現在へ。あっ、となるのだよ。途中で何度も。所々で突き落とされ、そして伏線が回収されていく。いやぁ、うまいもんだ。☆☆☆☆ほ。

『生贄の木』キャロル・オコンネル 創元推理文庫

2018-08-14 22:16:22 | 洋物
 NY市警刑事キャシー・マロリーのシリーズ第10作。ルート66の旅から帰ったマロリー、NY市警に復帰後、謹慎中。このシリーズ、少年の手記が各章の冒頭に。セントラルパークの木に吊るされた袋に入れられた三人。既に死んでいる者も。そして妖精の笑顔を持つウィリアム症候群の少女が見つかる。その異様な殺人事件を探る中で、過去の大きな陰謀が現れてくる。相棒のライカー、マロリーの信奉者チャールズ、今回は掃除婦オルテガも重要な役割を。例によって実に読ませる、ぐいぐいと読ませる。これはライカー等の人物像の魅力も大きい。それでいて、結構難しい。本当に自分は理解しているのかとも。マロリー、そして脇役陣、さらに今回の「ゲスト出演者」もまた強烈で、☆☆☆☆☆。


『走れ!T校バスケット部』松崎 洋 幻冬舎文庫

2018-08-12 11:54:38 | 番外
 T校バスケット部の俊介。交通事故から復帰して、突然、上手くなって現れた。というところから始まる。都立T高校。普通の高校でバスケット部のモットーは「和」。三年生3人、二年生5人、一年生1人。陽一は中学時代のバスケエリート。私立のバスケット名門H校に進むが、挫折してT校に。ということなのだが、T校のメンバーがなかなかいいのだ。文句屋のチビ。驚異の脚力のメガネ。ノゾキマは長身のセンター。ともかく、読んで爽快感あり、というところ。☆☆☆。

『明日の子供たち』有川 浩 幻冬舎文庫

2018-08-05 17:28:16 | 番外
 有川浩の働く人シリーズというべきか。三田村慎平はサラリーマンの営業生活三年目で離職、児童養護施設で働くことに。児童養護施設『あしたの家』は大舎制という大規模施設で、子供から高校三年生までが収容されている。慎平の出勤初日、靴箱の乱れを直していた慎平は大目玉を喰らう。普通の感情と、施設に求められるものとの違い。慎平の指導係となったのが、経験三年の和泉和江。さらに先輩の猪俣吉行。『あしたの家』の「問題のない子供」平田久志ヒサ、谷村奏子カナ。児童養護施設というもの、そこに暮らす子供達の心、何にも知らないでいた、と慎平は思うのだろうけれど、それは読み手も同様。感動するのだよね、とても。素直に涙が滲み出し、養護施設の人になろうかと思う。☆☆☆☆ほ。

『アポロンの嘲笑』中山七里 集英社文庫

2018-08-04 22:16:33 | 和物
 東日本大震災の福島。殺人事件が起こる。犯人を護送中、余震の混乱の中で犯人は逃走、担当刑事の仁科がそれを追う。被害者も犯人も原発で下請けの作業員として働いていた。被害者には前科が、犯人はその被害者の一家と親しくしていた。仁科は犯人像を追う中で、単なる殺人とは違うものを感じていく。特別な状況下に起きた事件。追う刑事も子供が津波の被害に行方不明。いろいろな重みの中で、一人の人の歴史の重みも。重いけれど、読み進める。☆☆☆☆。

『東の果て、夜へ』ビル・ビバリー ハヤカワ・ミステリ文庫

2018-08-03 19:58:42 | 洋物
 新人作家で各賞総なめのこの作品。15歳にしてLAでヤクの取引所の見張り役のチーフを務める主人公。手入れにあって大混乱の中で、遠く彼方へ殺人チームとして旅に出ることに。一人は不仲の弟で殺し屋、車でひたすら東へ。旅の中でいくつかの事件。人と出会い、大きな事件。少々暗くて困ってしまっていたが、終盤に持ち直し。15歳の少年の物語として深く没入するならかな。☆☆☆。