連作短編集。妻が家を出てしまった藤間、その後輩で街頭アンケートをする佐藤、その友人の織田夫妻。美容師の美奈子とその客で友人の板橋とその弟。電話だけの結びつきの美奈子と板橋弟。最終日に免許の更新をする藤間。そこで10年前、5年前に出会った女性。英語教師の深堀。その教え子の久留米と同級生の織田の娘。…と6つの短編の中で人が交錯し、時間が行き来し、エピソードが重なりあう。まさに楽しき伊坂ワールド。そしてどこか楽しくなるのがいいのだな。☆☆☆☆。映画も面白かったです。
映画がテレビでやっていて、録画したまま観ていなかった。本屋で見つけて読んでみた。これは先に本で読めて良かった。面白い。三人の青年。強盗からの逃走中、ナミヤ雑貨店でしばし隠れることに。そこから始まる物語。浪谷雄治の営むナミヤ雑貨店。子供たちがいたずらでナヤミ雑貨店として悩み事相談を。それに応える内にいろいろな相談が持ち込まれる。悩み事、それに対する答え。その背景やその後の人生。そうしたことが連なりあって進んで行く。それもSF調に。とても面白い。好きなタイプ。☆☆☆☆ほ。
AX、BEE、Crayon、EXIT、FINE という5つの短編からなる短編集。主人公は“兜”の異名を持つ殺し屋にして文具会社の営業職。恐妻家にして息子が一人。一流の殺し屋、なのだけれど、家ではひたすら妻に気を遣う。妻がどう考えるかをひたすら考え、かいくぐることに全精力を傾ける。それをシニカルに見る息子。それでも“兜”は妻を愛しているのだな、これが。「仕事」の仲介は医者。次第に「悪性」の場合の「手術」のみを引き受けるように。「悪性」とはプロを標的とすること。一話、一話進む中で伏線が張り巡らされ、展開の中で主人公も変わっていく。面白いなぁ。時々、伏線確認のために前の頁を探してみたり。☆☆☆☆ほ。
『同期』、『欠落』に次ぐ同期シリーズ第三作にして完結編。警視庁捜査一課の巡査部長宇田川。同期には公安から懲戒免職となったとされる蘇我、SITに抜擢された大石がいる。お嬢こと大石の誘いにボンこと宇田川、そしてその先輩植松らが赤坂のスペインレストランに集う。その数日後、殺人事件に大石の影が。潜入捜査の大石、救援体制が崩壊し、蘇我の呼びかけで特命班として宇田川、植松、土岐。そして臨海署のベテラン荒川、若手の日野が加わる。荒川がいい。渋い先輩刑事。同期の絆の物語に宇田川の成長、そして部署を越えるという珍しい警察小説。☆☆☆☆。