カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『カーラのゲーム』上・下 ゴードン・スティーブンズ 創元ノヴェルズ

2006-07-23 19:06:19 | 洋物
 実にいいです。昨年、『七月の暗殺者』が出たG・スティーブンズの傑作です。主人公は内戦下のボスニア・ヘルツゴビナの都市、マグライに住むカーラという女性。彼女のゲームの物語。包囲された町マグライ、その旧市街に住むガーナ親子。配給を得るには子供を抱えてスナイパーの前を橋を渡らなければならない…。SASのフィンが登場、彼らを救うガーラ、しかしフィンには彼女を救えない。手を貸すが、救えはしない。「君のルールでゲームをやらなくてはいけない」と。実に凄まじい。それでいて実にクールに進むのですね。原文の持ち味か、藤倉秀彦さんの文章のリズムが作にあっています。
 このところ、サッカーの日本代表監督にオシムを、という声があがっています。私も大賛成。オシムは我々とは全く次元の異なった厳しい世界を生き抜いてきた人。川渕CPあたりが自分のためにセコイことをしたけれど、川渕CPも『オシムの言葉』を本当にちゃんと読んでいたら恥ずかしくてあんなことは(わざとオシムの名を漏らすような)できないだろうにね。このオシムの生きていた世界が少し分かります。
 冒険小説としても一流、それ以外でも、一流。☆☆☆☆☆に☆をつけて、早く残りの作品の翻訳をお願いします。

『よい子はみんな天国へ』ジェシー・ハンター 創元推理文庫

2006-07-17 20:42:58 | 洋物
 帯に(かつて腰巻大賞というのがあったの憶えてますか?雑誌面白半分に)キャロル・オコンネルの『クリスマスに少女は還る』の宣伝がついていたけど、ちょっとそれを思わせる。シングル・マザーのローリー、その娘のエミリー。チョコレートマンという少年ばかりを狙う連続誘拐殺人犯。それを追う二人の警官。それぞれがうまく描かれていて、時間を追いながら、事態が動いていく。少年ばかりを狙うはずが、少女エミリーが誘拐されてしまう。決まりきったパターンを描くはずの連続犯のどこかが狂っていく。そこに何人もの人々がそれぞれの味を持って登場するのですね。ミステリー好きには承知の背景が犯人にはあり、え、これでは話が終わっちゃうと思った展開の時はまだ本の半分位。どうするの、と余計な心配をしてしまったりしたが、どんどん広がっていきました。『クリスマスに…』には敵わないけれど「注目の新人」であることは間違いない。この作品はお勧めで、さらに次回に期待。☆☆☆☆。

『グルメ探偵、特別料理を盗む』ピーター・キング ハヤカワ・ミステリ文庫

2006-07-13 18:12:57 | 洋物
 一人称小説は苦手だけれど、この本では軽さが出て丁度いい。原題は"THE GOURMET DETECTIVE" ミステリーでは色物になるかも。グルメ探偵は私立探偵ではなくて、食材・レシピのコンサルタントというところ。イギリス・ロンドンの名フランス料理店、そこからの依頼でライバル店の特別料理のレシピを探り出す。それが物語の始まり。主人公のグルメ探偵(彼には名前が無い!)は大のグルメ(当たり前か)でおまけに大のミステリーファン。かなり詳しい。所々にその薀蓄が登場、これでフランス料理に詳しくて、ワインが好きだったらもっと面白いだろうね。(ついでに音楽も)スコットランド・ヤードの警部が登場するがこれもミステリーファン(警察物の)で何と殺人課ではなくて、食品捜査班。それにしてもグルメ探偵は食と素敵な女性に縁があるらしい。一体彼が何をしたのか分からないけれど、おいしそうな料理を食べ、自らも作っていたのは確か。結構読めます。続編が出てきたら、これはこれで面白いかも。日本料理も一度だけ登場。☆☆☆☆。