カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『片目の猿 One-eyed monkeys』道尾秀介 新潮文庫

2011-11-25 21:12:03 | 和物
 盗聴専門の探偵が主人公。産業スパイの洗い出しを依頼され、企業に社員として入り込んでいた。その仕事の最中に人が殺された。盗聴の探偵から殺人捜査の探偵へ。スカウトされた冬美。エレベーター付きの二階建てアパートに住む住人達。こいつらがそれぞれに個性的で、一種超人的な部分も。物語の中に、伏線がばら撒かれていき、最後にそれがどーんと刈り取られるのはなかなか見事。なるほどね、って感じで☆☆☆☆。

『裂壊 警視庁失踪課・高城賢吾』 堂場瞬一 中公文庫

2011-11-24 22:38:04 | 和物
 失踪課高城シリーズ第五弾。阿比留室長が突然の失踪。公子を含め、全員で捜索に走る失踪課。別件で醍醐たちの追いかけていた少女の事件と絡み合ってくる。このシリーズで初めて六条も捜査に加わり、失踪課の危機に一丸となる。仕事、家族、女性…。その中を高城が突っ走る。長野、荒熊といった脇役も登場。失踪課に新たな世界が見えてきたような一巻。☆☆☆☆。

『漂泊 警視庁失踪課・高城賢吾』 堂場瞬一 中公文庫

2011-11-23 18:23:10 | 和物
 失踪課高城シリーズ第四弾。ビル火災のバックドラフトで明神が吹き飛ばされた。高城が置き忘れた携帯を手に持って。火災現場のスナックには死体が二つ。撲殺されたマスターと背中を刺された男。頸には独特のネックレス。行方不明となっていたミステリー作家。その行方を高城が追う。相棒明神を病院に残し、走る。そこに作家の友人の元作家も行方不明に。小説家の内面に迫るというのも珍しい。そこに自身も投影されている部分があるのだろうか。今回は大逆転の難しいものなれど、作家の内幕編的な面白さはある。高城組、徐々に成熟しつつあり。☆☆☆ほ。

『邂逅 警視庁失踪課・高城賢吾』 堂場瞬一 中公文庫

2011-11-22 23:48:12 | 和物
 失踪課高城シリーズ第三弾。大学理事長が失踪か。母から出された捜索願いに大学側は冷淡に。一方で法月は仙台に遺体の確認に。別の失踪案件は死亡で幕引きとなる。法月は心臓病で倒れ、娘はるかが怒鳴り込む場面も。愛美は一線を引きながらも、高城とのコンビとして成長しつつある。仙台、東京を舞台に捜査は意外な方向に。失踪課という立場が通常のミステリーとは違った展開を作り出しているのが面白い。☆☆☆☆。


『相剋 警視庁失踪課・高城賢吾』 堂場瞬一 中公文庫

2011-11-21 21:08:08 | 和物
 失踪課高城シリーズ第ニ弾。捜査一課から協力要請が。消えた目撃者を探せと。室長は点数稼ぎのために追跡を命ずる。その一方で、高校生から同級生の少女の捜索依頼が。両者が結びついていく。法月、愛美と個性が出てくる。醍醐の悩みも。もう少しこの辺り、えぐっていってくれてもなという思いも。☆☆☆☆。


『蝕罪 警視庁失踪課・高城賢吾』 堂場瞬一 中公文庫

2011-11-20 16:19:27 | 和物
 失踪課の高城シリーズ第一弾。鳴沢シリーズは一冊読んで、あまり好みでないということにしていたが、アナザーフェイスが結構面白かったので、このシリーズに。主人公は元警視庁捜査一課の敏腕警部。娘の失踪から7年間、酒に溺れ、弁護士の妻とは離婚。警視庁に新しくできた失踪課第三方面室に。室長は阿比留真弓、女性で上昇志向。同僚に明神愛美、捜査一課転属の筈があおりをくっておちこぼれの失踪課に。法月大智、元捜査一課のベテラン。心臓病で無理できずと失踪課に配属。娘は弁護士。元プロ野球選手の醍醐。官僚の父と薬剤会社創業者一族の母を持つ六条舞。陰の薄い森田。これに庶務の小杉という面々。かつて捜査一課で高城の勘と呼ばれた男。7年間の酒の日々から事件を通して動き出す。『蝕罪』は結婚の間近に控えて失踪した青年を追う。そこに別の失踪も。捜査の中で時折失踪したままの娘がいろいろな姿で高城の心に現れる。一人称小説で、あまり好きではないが、刑事の心が見えてくる。一人の人間を追い求めながら、その過去を追っていく。☆☆☆☆。

『プラ・バロック』結城充考 光文社文庫

2011-11-18 21:19:22 | 和物
 「警察小説の超新星」ということで、読んでみた。主人公は女性刑事クロハ。神奈川県警(をモデルとした)機動捜査隊に所属。冒頭から仮想空間での物語りという意外な展開。埋立地の貸しコンテナ。その冷凍コンテナから十四人の凍死体が。捜査一課のカガは女性に暴力を振るったという噂の男。それらとのギクシャクの中で捜査が進む。展開は奇抜。そこに仮想空間も入り込む。クロハ、佐藤、原と登場人物も動きが見え始め、カガにも。これはシリーズになるかな。確かに珍しい展開もあるので、☆☆☆☆。


『カラスの親指 by rule of CROW'S thumb』道尾秀介 講談社文庫

2011-11-17 23:50:17 | 和物
 『向日葵の咲かない夏』は読んだ。あまりいい印象が無かったので、『ソロモンの犬』はスルーした。その後、直木賞受賞。今回、この本を手にとった。「ど派手なペテン、仕掛けてやろうぜ!!」という帯に引かれて。詐欺師が主役のコン・ゲーム。HERON BULLFINCHと鳥の名前の章はCROW まで。銀行での場面から始まる。ヤミ金に追い込まれ、その手先となり、今は詐欺師の武沢。イルカ顔のテツが相棒。そこにまひろという少女。さらにチームが加わっていく。復讐劇に向けて進む。それぞれのキャラがいい味を出し、うまく、うまくはめられていく。あっと驚く大転換に最後がまたほおおお。☆☆☆☆ほ。

『シブミ』上・下 トレヴェニアン ハヤカワ文庫

2011-11-16 20:08:24 | 洋物
 文庫が1987年発行、読んだのは94年のもの。最近、ドンウィスロウが続編を出して評判になっていた。再読。実に面白い。上海の租界で白系ロシア人の貴族を母に生まれたニコライ。上海の日本占領で日本人のもとに。日本で囲碁を学び、さらにシブミを身につけていく。占領軍への復讐から裏の世界へ。現在、バスクの山奥の館に住む。友人のバスクの詩人ルカ。ともに住む妾?のハナ。とくにルカが素晴らしい。それぞれのキャラクターがとても良い。これだけの厚さしかないのに、こんな話をしていいのかと、それでもその枝道がそれぞれに面白く、会話がとても◎。マザー・カンパニーとの戦いは敵役のアメリカ人が憎らしい。日本理解がかなりのもの。訳文が少々分かりにくい部分もあるが、面白い。☆☆☆☆☆。


『埋み火 Fire's Out』日明 恩 双葉文庫

2011-11-15 21:46:04 | 和物
 うずみびと読む。『鎮火報』に続く消防士大山雄大シリーズ第二作。ダチの祐二、工務店で働く小柄だがクールな街の哲学者。母親の民子、雄大を消防に引っ張り込んだ仁藤や、赤羽台第一ポンプ隊は藤田のオヤジ、生田の兄貴など健在。前作で活躍の自衛隊上がり星野は特殊消防隊(?)に転任していたが。祐二の工務店の現場に放火が。放火犯を張る所から始まる。そこに老人世帯の失火事件が相次ぐ。そこで出会ったのが中学生の裕孝。お姫様もいたが。それぞれの人間がとても活き活きしていていい。雄大と祐二のコンビはIWGPをちょっと思わせる所もあるが、これがいい。いやいや、そして事務職に上がることだけを目指しながら、現場では命懸けの消防士雄大の活躍。今回は謎解きよりも、人間というものがテーマ。家族とは…、である。☆☆☆☆ほ。