『忍ぶの城』という脚本が城戸賞を受賞、それを小説化したのが本作。直木賞候補となったとか。本屋大賞の2位とも。舞台は今の埼玉県行田市にある忍城。戦国末期、武蔵の名族成田氏が北条氏の下、忍城をおさえていた。豊臣秀吉の北条攻めが始り、忍城も石田三成の軍に攻められる。「のぼう」とは成田氏の城主家の一族、城主とは従弟にあたる成田長親。百姓仕事に加わりたいが、不器用なので領民からは避けられながら、それでいて愛されている。「のぼう」とは「木偶の坊」の意味。忍城には、のぼうと幼馴染で一の家老をつとめる正木丹波守利英、丹波と並ぶ豪の者の柴崎和泉守、若年ながら兵法を極める酒巻靭負といった家老達、これに武勇と美貌の甲斐姫といった面々。圧倒的な三成軍には三成の友、大谷吉継、勘定高い長束正家らがいる。成田氏の当主は小田原城に詰めながら、秀吉との内通を計るが、のぼうのひと言で一戦に。不思議な物語。視線は丹波、三成など変わっていくが、のぼうの視線は無い。なかなか面白い。☆☆☆☆。