坂本司と鳥井のシリーズ第二弾。ゆっくりと変化しつつある鳥井。周りに魅力的な人物が集い始め、ゆっくりと扉が開かれていく。それぞれが何かの重荷を持って登場し、鳥井によって解き明かされる中で次第に鳥井自身も変わる。それが望ましいことでありながら、鳥井にとっての自身の役割が消えていくようで寂しさを感じてしまう坂本。ゆったりとした中に、人間の世界。☆☆☆。
「ひきこもり」のプログラマーを主人公とする三部作の第一作。坂本司のデビュー作。語り手は坂本司。外資系保険会社につとめる真面目で平凡な感じの男。その友人がひきこもりのプログラマー鳥井で、心を開く唯一の扉が坂本司。両者の関係を大きな柱としながら、物語は進む。五つの短編が織り成していく世界は人間関係、そして人、そこにあるもつれを鳥井が解いていく物語。少々気弱な坂本の語りの中でゆったりと進む物語はミステリーという枠とは少々異なるが、次作を読もうと思わせる。☆☆☆ほ。
カーニックの第二弾。場所はロンドン。主役は元傭兵で今は警備会社を共同経営する男と、ロンドン警視庁刑事部の巡査部長。この刑事部は前作でデニス・ミルンがいたところであり、その時の登場人物が数人顔を出す。元傭兵と巡査部長、二人の交互の語りによって物語が進むが、これが効果を上げている。織り成される世界が交錯し、事件と事件が次第にからみあっていく。人物の描き込みも随分と成長しているようで、☆☆☆☆になりました。