小泉今日子が文庫本の解説を書いていた。かつては家具製造の会社を経営していた主人公の東口、今は空き地で半ばホームレスの暮らし。ホームレス仲間の中で暮らしながら、家具修理で暮らす。そこに謎の女性が現れる。東口は子供を失い、離婚し、会社がつぶれ、疫病神を見ながら生きる。不思議な物語である。仲間が自殺。その背後に闇が。明るくふるまう中に人それぞれの世界があって。☆☆☆ほ。
50過ぎで作家デビュー、松本清張賞、直木賞を受賞した時代小説作家葉室麟のデビュー作短編集。表題作で歴史文学賞を受賞したという。「乾山晩愁」「永徳翔天」「等伯慕影」「雪信花匂」「一蝶幻景」という絵師(乾山は陶工にして絵師だが)を主人公とした短編が収まる。光琳と乾山。永徳と天下人と等伯。等伯と…と主人公の絵師たちの生きざまが描かれていく。☆☆☆ほ。
ルメートルのゴンクール賞受賞作。ミステリではないのだけれど。舞台は第一次世界大戦。停戦直前。アルベール・マイヤールは戦友が味方に撃たれたのを知る。ブランデル中尉のたくらみに気づいた所で生き埋めに。それを助けてくれたのがエドゥアール・ペリクール。そこから物語は回っていく。不思議な物語です。実に。☆☆☆。
ピエール・ルメートルの第二作、そしてこの本が日本で最初に翻訳されものとか。カミーユ警部シリーズではないノン・シリーズ。ベビー・シッターのソフィー・デュゲ、子供が死んでいる。そこから話は深く、深く沈み込んでいく。続いてフランツを軸に進む。驚きの展開となる。そして二人の第三章となる。大きなどんでん返しに翻弄されながら、それを楽しむ自分がいるという感じ。☆☆☆☆ほ。
カール、アサド、ローラの特捜部Qシリーズ第6弾。デンマークの離島からの電話、警官が特捜部Qに依頼。これを断ると突然の自殺。そこからQが捜査に乗り出すことに。事故死とされた少女の死を追った警官、その手がかりを再調査しながら、物語は進む。カールの闇、アサドの謎、少しづつ情報は増えるが、まだまだ。チームとしての絆は強まりながら、複数の事件が進んでいくのでした。☆☆☆☆。
『その女アレックス』のピエール・ルメートル、処女作というのがこの本。ルメートルの四作目という『その女…』で登場するフランス司法警察の警部カミーユ・ヴェルーヴェンが主人公である。驚きの作品、というのが第一の感想。これは読んでいただかなくてはいけない。読み進めて、「えっ」という感じで、今までの足元が崩れるのを感ずるに違いない。不思議な連続殺人事件、調べを進める内に次々と事件が増えていく。そこここに伏線が張り巡らされ、登場人物の人物像がしっかりと描き込まれ、すべてが収斂していき、おお、なんと、という不可思議な読後感を記すこととなる。とにかく、読んでみられることをお薦めする、というしかない。☆☆☆☆☆。