カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『張り込み姫 -君たちに明日はない3-』垣根涼介 新潮社文庫

2012-05-24 22:06:11 | 和物
 久々の「君たちに…」シリーズ。垣根さんは体調を崩していたようですね。今回もリストラ請負会社の村上真介を中心とする四つの物語。英会話学校に勤める夢追い人、旅行会社につとめる「やどかり」の男。一番良かったのが垣根本人も登場?の車のメカニックの物語。これいいなぁ。そして表題作の大手出版者の突撃取材記者の物語。真介とその恋人陽子の仲も健在。描かれる真介と陽子の眼の中の真介の微妙なズレも面白いな。☆☆☆☆。


『蒸発請負人』トマス・ペリー 講談社文庫

2012-05-23 21:18:31 | 洋物
 再読シリーズ。トマス・ペリーは『アイランド』というのがあって、これがなかなか面白かった。主人公ジェーン・ホワイトフィールドはインディアンの血をひく女性。男性の暴力から逃れようとする女性などの逃亡を助ける。そこに一人の男がやってくる。かつて蒸発させた共通の知り合いがいた。そこからその男を蒸発させるが、事件が起こる。アメリカ、カナダを舞台にインディアンの生活も見えてくる。さてこの本、どうも文章が読みづらい。翻訳のせいなのかな。我慢して読み続けた。☆☆ほ、となってしまいました。


『ゲートハウス』上下 ネルソン・デミル 講談社文庫

2012-05-22 23:40:51 | 洋物
 『ゴールド・コースト』の続編。弁護士のジョン・サッター。その妻スーザンはゴール・コーストの大富豪の一家スタンホープ家の長女。前作ではスタンホープ家の隣に越してきたマフィアのボスとスーザンが浮気をし、スーザンがボスであるフランクを撃ち殺した。それから10年。ゲートハウスとは、大邸宅の門脇に建てられた家。スタンホープ家の最後の召使であった夫婦が終身居住権を得ていた。夫は死に、その妻エセルの最後が近づき、スーザンと離婚しロンドンにいたジョンがエセルの遺言執行人としての役割を果たすために戻ってきた。かつてのフランクの屋敷は、政府に差し押さえられた後に、分割した分譲地に。(それでも一区画はかなりの大きさのようだが)。スタンホープ家の邸宅はイラン人が買い取っていた。そのゲストハウス、これもかなりの大きさだが、にスーザンが住む。かつてのフランクの家の一部に、フランクの息子アンソニーが住んでいた。ジョンはスーザンと復縁することに。アンソニーはスーザンに復讐を誓う。そんな中で物語は進むのだが、アメリカの上流階級の世界というのはこういうものかと、興味深い。その思考パターン、人との接し方、いろいろと実に不思議な世界。ジョンの軽妙な調子に少々呆れもするが、終盤にぐっと緊迫感。多少、「それは無いだろう」というものもあるが、終盤の追い込みで途中までの長い長い道のりも由ということか。☆☆☆ほ。

『半端者 -はんぱもん-』東 直己 ハヤカワ文庫

2012-05-16 21:05:00 | 洋物
 ススキノ探偵シリーズ第十作、文庫オリジナル。年代を追って展開してきたこのシリーズだが、今回は便利屋の「俺」の学生時代。北大文学部哲学科の俺。高田は農学部の大学院でナチスの農業政策を研究中。家庭教師の最中にフィリピン女性と知り合い、そこから巻き込まれていく。ボロアパートから後のススキノ端の部屋に移るが、アパート壊しにからんで、老人達の追い出しに立ち向かう…。アキラさんがいたり、若き桐原がいたり、学園紛争の時代が終わった後の「終わっていたんだよ」感が漂う。☆☆☆☆。

『旧友は春に帰る』東 直己 ハヤカワ文庫

2012-05-14 22:12:42 | 和物
 ススキノ探偵シリーズ第九作、なのかな。暁の次。あのモンローが帰ってきた。かつて20代の頃、ススキノで同じ時代を生きたモンロー。かつての事件の後、沖縄に行った。それが帰ってきた。四半世紀という時はいろいろな意味を持つ。東直己はうまく作品の時代を持ってきたな。ユーミンがいつまでも「若者」の歌を歌っても、それはそれでかまわない。でも、50代の人生を絵画的に描いてもいいじゃないか。「俺」はデブになり、それでも便利屋で、それでもって不思議なこだわりを持ち続け、ケータイは持たないがネットカフェでネット検索から情報を取る。それでもススキノの同じ時代を生きた女のために、動く。沖縄ヤクザが絡み、桜庭に代わって越前という新たなキャラが登場した。警察官も元のつく種谷に加えて、茂木というキャラも登場。じーんと来て、それと新たな展開の香りが出てきて、何だか楽しみだ。☆☆☆☆☆。

『探偵、暁に走る』東 直己 ハヤカワ文庫JA

2012-05-13 16:32:42 | 和物
 ススキノ探偵シリーズ第九作。どうもこれは第八編長編小説ということらしい。地下鉄で偶然出会ったイラストレーター近藤。豪快な酔っ払いと意気投合し、友達となるが、彼が殺された。その真相を追いかける「便利屋」。今回、彼の名が「高橋」でないことだけは明らかになった。北日の松尾、そしてヤクザの桐原が活躍し、病気の相田が重要な役割を果たす。「おれ」はケータイは持たないがコンピューターを使い、ヘボン式を嫌い、YOSAKOI SORANと札幌に来る「マナーを知らない」田舎者を嫌う。読み応えのある長編ということで、☆☆☆☆ほ。

『煙霞』黒川博行 文春文庫

2012-05-10 23:18:13 | 和物
 今回は大阪の私立女子高常勤講師である美術教師と音楽教師が主人公。理事長の不正を突いて、正職にという誘いを受けて、理事長と愛人を連れ去った。そこから事件が広がっていく。例によっての関西弁の会話がテンポ良く、事件は大阪から三重県にまで広がっていく。女性音楽教師の思い切りの良さはいいのだが、美術教師はちと不甲斐ない。いつもの疫病神シリーズのような面白みには及ばない。☆☆☆。

『プリズン・トリック』遠藤武文 講談社文庫

2012-05-07 22:42:57 | 和物
 千葉市原にある交通刑務所。そこで殺人が。顔と手を酸で焼かれた死体に、犯人の残した「声明文」。次々と視点が変わる。刑務官であったり、刑事であったりと。その中で次の殺人も起こる。信州でも同じ手口の殺人が起こり、ついに安曇野の政治腐敗にまで及んでいく。江戸川乱歩賞受賞。一種の問題作であったとも。新人の第一作としては面白い。☆☆☆ほ。

『オイアウエ漂流記』荻原 浩 新潮文庫

2012-05-06 17:08:33 | 番外
 トンガからラウラ諸島へ飛んだ旅客機が墜落。建築会社の一行、新婚旅行の夫婦、戦跡訪問の祖父と孫らが無人島生活へ。部長、課長、主任、平とお得意さんの御曹司、お見合いパーティで結婚をしたカップル、ぼけかけた祖父と孫。そして謎の欧米人。場面によって視点を変えながら、人間関係が描かれ、そして変化をしていく。不思議な漂流記。漂流記というか無人島滞在記なのだけど、何故か昔から漂流記なのだな。☆☆☆ほ。


『悲鳴』東 直己 ハルキ文庫

2012-05-05 21:12:31 | 和物
『悲鳴』東 直己 ハルキ文庫
 元新聞記者で札幌の私立探偵、畝原が主人公の第三作。浮気調査の筈が、ストーカーの女性からの依頼。そこから闇が始まった。元刑事の悪徳私立探偵の登場。謎のホームレス。「困ったもんだ」の高橋。不思議なキャラクターが次々登場し、例によって北海道、そして警察の闇が深まっていく。終盤の一気展開に少々飛びがあるが、警察アンダーグラウンドは深くなっていくなぁ。☆☆☆☆。