カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『掃除屋クィン1 懸賞首の男』ブレッド・バトルズ ランダムハウス講談社文庫

2009-10-29 23:49:46 | 洋物
 この作家は初めて読む。主人公ジョナサン・クィンはアメリカ系の秘密組織「オフィス」の仕事を請け負うフリーランスの「掃除屋」。現場の準備、監視、さらには後始末などを引き受ける。師匠の下で修行し、今は弟子を持つ身。ある人物が焼死体となって見つかった。その後始末から自身も懸賞を懸けられる身に。オフィスの工作員が次々と狙われる。アジアに逃げるが魔の手が迫る。久々に引き込まれて読んだ。掃除屋という割りに、並の工作員以上のスーパーなクィン。かつての同僚と力をあわせて大活劇となる。現代的な工作も登場し、なかなか大袈裟に暴れてくれて、☆☆☆☆。既に3作あるそうで、翻訳を待つ。


『数学的にありえない』上・下 アダム・ファウアー 文春文庫

2009-10-21 21:13:00 | 洋物
 アダム・ファウアーのデビュー作。第一回世界ミステリ作家クラブ新人賞と。小さい頃は病床で小説の朗読テープを「濫読」。統計学を学び、MBAもとったとか。双子の兄弟。兄は精神病院に入院。弟はガンブルに溺れ、ポーカーで巨額の借金を。大学で統計学を学び、教えていたこともあったが、精神的なもので挫折。この主人公に、CIAに属しながら、海外のほかの機関に情報を売る、美貌のエージェント。マッドサイエンティストのような科学者などなど。量子物理学やら統計学やら、いっぱい入っていて何だか難しいのだが、これが読ませる。量子物理学はまさにミステリーであるなと。それ自体が伏線のいっぱいの世界であって、この小説の伏線も流石に、やりすぎくらいだが。次作が楽しみ。☆☆☆☆ほ。


『Gボーイズ冬戦争 池袋ウエストゲートパークⅦ』石田衣良 文芸文庫

2009-10-18 11:59:48 | 和物
 石田衣良のIWGPシリーズ第7弾。先日、DVDを借りてきて、テレビ版を全部見た。これがなかなか面白かった。Gボーイズが妙にしょぼい感じがしたり、タカシの窪塚クンは違うような気がしたけれど、あの中ではとても良い。でももう続編はできないね。30過ぎの長瀬クンのマコトでは。さて、このシリーズ、マコトも20代を越えていて、段々「ガキ」たちとの間が開きつつあるが、石田のメッセージが沢山あるようで。タカシとマコトの友情物語もあって、シリーズならではの感じ。☆☆☆ほ。

『謀略法廷』上・下 ジョン・グリシャム 新潮文庫

2009-10-17 00:27:36 | 洋物
 「グリシャム久々の本格リーガル・サスペンス!」という惹句が帯(昔、腰巻と言って面白半分という雑誌で腰巻大賞ってやってましたよね)に踊る。舞台はミシシッピ州。そこのとある町には化学工場が。そこが汚染の垂れ流しで地下水脈が汚染し、癌の大量発生をまねく。企業を訴える民事訴訟、損害賠償とアメリカお得意の懲罰的賠償金。夫婦の法廷弁護士がすべてを投げ打って裁判に取り組み、ついに勝訴を勝ち取った。そこからいよいよ物語である。企業側は州の最高裁へ上訴をする。勝つにはどうするか。ミシシッピでは州の最高裁裁判官も選挙で選ばれるという。大企業は金で裁判官を送り込む戦略へ。これでもかという戦いに。その一方でこれに対抗するのが、法廷弁護士達。彼らは大企業から守るという旗印だが、一方で、巨額な懲罰的賠償や、それ以前での巨額の和解金をとりつけることで大金を目指す。いろいろな意味で、民主主義というものの裏のアメリカの不思議な歪みが延々と語られる。情報というのを知るには面白いが、小説として読む楽しみはどこにあるのかという気がして、☆☆ほ。ちょっと残念。

『ペインテッド・ハウス』ジョン・グリシャム 小学館文庫

2009-10-15 23:50:58 | 番外
 ジョン・グリシャムの十二年目にして十二作目がこの作品だったという。リーガル・ミステリの寵児が発表した一人の弁護士も出てこない小説。舞台はアーカンソ州の北東部ブラックオークという小さな町。そこで80エーカーの綿畑農家の7歳の少年ルークが主人公。秋の収穫の時期。山地民とメキシコ人の出稼ぎを探す所から物語は始まる。南部であるが、黒人は一人もいない。農家だが土地は殆ど借地。7歳児にして綿摘みを手伝い、カージナルスのスタジアム・ジャンパーを買うことを夢に見る。祖父、祖母、父と母。朝鮮戦争に従軍中の叔父。そんな南部の物語である。☆☆☆☆。


『死神を葬れ』ジョシュ・バゼル 新潮文庫

2009-10-11 11:27:17 | 洋物
 これは少々ぶっとぶ。ピーター・ブラウンという研修医。それがなんとマフィアの殺し屋。アメリカの病院事情、そのぶっとび具合(フィクションということですが)、いやあ、面白い。ノアール物ということになるのだろうか、一人称小説は好みじゃないが、これだけテンポよくぶっとんでくれたら、いやあ、まいった。ご飯食べながらは読まないこと。新星現るってのは当っていそうです。☆☆☆☆。

『スキッピング クリスマス』ジョン・グリシャム 小学館文庫

2009-10-06 00:21:40 | 番外
 ジョン・グリシャムのリーガル・ミステリでない作品。税務専門の会計士ルーサー・クランク。彼は毎年のクリスマスに6000ドルもの経費がかかっていることに恐れおののく。カリブ海へのクルーズでもその半分くらいということで、クリスマスをすっぽかしてクルーズに行くことに。これが大騒ぎ。中流の新興住宅から熟成した住宅になっていたヘムロック・ストリートでは、毎年巨大フロスティを町内中で屋根に飾る。それを拒否!で大騒ぎ。アメリカ人のクリスマスというのはこうなんだという興味は◎。されど、少々くたびれる。海外ボランティアに出かけて不在のはずの娘が帰国するということでまたまた大騒ぎ。アメリカを知るには面白いが、☆☆☆がいいところ。