リチャード・ハーマン・Jr.(新潮文庫はジュニア)の中東三部作の並行作品。主人公に『最終作戦トリニティ』に登場のザック・ポントウスキー大統領が登場した。ハーマン少し持ち直したみたいで、今回は1942年と現在(1993年頃)の物語が並行して進む。番外編としては出来がいい。そしてカミガミとか、前作から登場人物が弾き続き登場するのもいい。あのマドがここではメイドー少将として健在。これに魅力的な悪役も登場する。前作でいささか影の薄かったボビー・バークCIA長官がかなり濃くなっていた。時間軸の違う物語をうまくかみ合わせ、ちょっとした謎を最後まで引き伸ばしてみせ、例によって悪役だけでなく、善玉を死なせてしまう悪癖も健在。前作よりも持ち直しているので、☆☆☆☆としておこう。ちなみにこの後、女性大統領シリーズになるのだけれど、ここから先はもういいやという感じ。残念。
リチャード・ハーマン・ジュニアの中東三部作の最後です。主人公にマット・ポントウスキー中尉。栄光ある第45航空団となるのですが、これが大統領の孫。前作からの登場人物にはジャック・ロックが中佐に、そしてビル・キャロルも中佐でと時の流れを感じます。残念なのはサンダウン・カニンガムが死んでしまっていたこと。そしてあのサイモン・マド(どこにでもいる出世主義役立たず)が健在でした。ハーマンというのは少々サディスティックというか、大事な人材を次々ととっかえたがる。そしてどうもだんだんつまらない人物を大事にし始めた。初期の未整理なれど魅力的な人物群から、典型的造形ばかりとなりつつある。大統領を中心とし始めたのはちょっとねと言う感もあり。ちょっと臭くなってきたな。☆☆☆。
リチャード・ハーマン・JRの中東三部作シリーズ第二弾。前作でワルキャラっぽい登場をしたスタンセル中佐が主人公。相変わらず、人がうまい。それぞれのキャラクターをうまくいかす。ジャック・ロックも登場するが脇役になっている。曹長、軍曹といった下士官の役割も面白い。前作で捕虜となった第45航空団の面々を救出する。いろいろな技の連中が呼び寄せられるのも面白さを増している。まあ、イイキャラとワルキャラに分かれ、一部転向するのが多いが、今回は転向しない連中が増えてちょっと気分悪い。この作者の特徴は結構簡単にキャラを死なせてしまうところという気もするね。これこの人の特徴かも。前作より整理されているようだけれど、前作よりパワーは落ちてしまってちょっと残念。☆☆☆☆ホとちょとサービス。
再読シリーズ。元アメリカ空軍パイロットだという作家のデビュー作にして、<中東三部作>の第一弾。中東を舞台とした航空団の物語。人がいいんですね。キャラクターのはっきりした人々が生きいき。これに航空団自体も人格があるような。主人公も複数ですね。ジャックをはじめ、彼等の成長物語。ヒーロー全開というのと違って、でも男達(女性も頑張ってますが)がぐぐっとくるのです。だもんだから、時々、再読。☆☆☆☆☆。この三部作の頃がハーマンJrも一番良さそうと思うのは僕だけかな。
和物はあまり読まないけれど「この文庫がすごい!2005年版 第1位」にひかれて買った。『クラインの壺』は読んだことがあったなと。死に直面する男の手記という始まり、そしてその息子の時代が舞台となる。筋見えたと思わせておいて、そうでもないところが、いい味なのかも。意外性がなきゃミステリーじゃない。ということで☆☆☆ホかな。
PARANOIA が原題。どうもこの方がぴったりくるような。やる気無しのダメ社員。単なる無能とも違う。それが悪さがばれて大変な事態に巻き込まれる。いかにもアメリカ的な大袈裟世界で面白い。ライバル会社に潜入ということになるが、ダメ社員の筈がかなり能力が高そうで。そこに人間味に溢れるキャラクターなどが登場し、果たしてこれはどうまとまるかと期待大。結末は…。これがかなり意表をつかれるもので、いやぁまいった感があった。これで途中のなんだかんだは無しということになって ☆☆☆☆ ってことで。
角川文庫というのは時々当たりに出くわす。だからなかなか侮れない。単発でこれはというのが見つかるのである。この本もなかなか面白い。ロンドンのタクシー運転手達が主人公。あの黒いタクシーである。ロンドンはタクシー運転手になるのは大変みたいでそんなところも少し分かって面白い。個性的なメンバーが揃い、目的に向かって邁進。典型的な魅力的女性陣が登場するが、これがそれぞれに意表をつく展開となってくる。結構楽しめて、よし。あとで分かったが『AIソロモン最後の復讐』の人だった。これも昔読んだけど、結構楽しめたよね。☆☆☆☆ホ。