カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『デスゲーム 24/7』ジム・ブラウン ハヤカワ文庫

2006-09-23 21:50:32 | 洋物
 再読シリーズ。2003年物です。小説の舞台はテレビ番組「サバイバー」の強烈版。無人島に集められた12人。残った一人だけが賞金と、願いが叶うという。そこに補欠で送り込まれた重病人の娘を持つシングル・マザー。もう一方で、一人のカメラマンが手に時限爆弾を貼り付けられ、死の時を迎えようとしている…。「サバイバー」のはずが突然の本当の死。正体不明の病気、それを防ぐのはワクチンのみ。視聴者からの投票により、最も得票の多かった者にはワクチンが手に入らない。その得票を減らす力を持つ不思議なボール。それを得るためには恐怖の克服。と次々と繰り出される演出がえぐい、というか面白い。しっかりと作り込まれていましたね。途中で以前読んだネタを思い出してしまった部分もあるが、それでも楽しませていただいたので、☆☆☆☆ほ。

『ナイト・フォール』上・下 ネルソン・デミル 講談社文庫

2006-09-21 18:22:46 | 洋物
 お待たせしました。ジョン・コーリーが帰ってきた。『プライムアイランド』『王者のゲーム』で大活躍の元NY市警刑事にしてFBIと組んだ連邦統合テロリスト対策特別機動隊の男です。TWA800便の事故というのは知らなかった。この飛行機が実はミサイルの攻撃によって撃墜されたものだが、その事実が隠蔽されている…。妻ケイトに連れられて追悼5周年に参加したところからコーリーはどっぷりとクソにつかる道に。相変わらずのコーリー節、意外な人物の登場、おなじみの元同僚ドム・ファネッリNY市警刑事も登場。(ただし、電話だけなのだ今回も)意外な展開、驚きの推理、見事な伏線、読ませる、読ませる。もう寝る時間…と思いながら読み進めてしまう面白さ。ただ、ただ、この結末はいかがなものか。これじゃ、今まで読んだのは何というべきか。実に面白く、流石にデミルと思わせながら、これはないんじゃないのという気がする。デミルには早く続編を書くか、思い直して改作をしてくれないか。☆☆☆(に☆☆も加えたいような、なんとも悩ましい)

『神様からひと言』荻原 浩 光文社文庫

2006-09-19 00:07:56 | 和物
 荻原浩という人を知らなかった。普段とは違う本屋に行くといいこともある。目につかない本に巡り合う。荻原浩という人、何冊も出ていた。ということで、最初に選んでみたのがこの本だった。『神様からひと言』という題名からは、ちょっと想像のつかない展開となる。主人公は電通とおぼしき広告代理店を辞めて、二流半の即席麺メーカーに就職した佐倉。もと、ミュージシャン、彼女は家を出て何ヶ月。販売促進課に配属されるが、あっという間にお客様相談室という名のリストラ部屋送りとなる。そこに登場する人物が皆それぞれに個性的。一番は相談室の先輩篠原か。苦情を受け付け、処理するというのが仕事なのだけれど、ううむ、どこかで聞いたような会社の中身、そのやりきれなさ、そして苦情処理に他人事ならではの笑い。どうということはないが、読みやすく、どんどん読めて、まあ、いいか。再読するほどのことはないが、荻原作品をもう少し買ってみようと思った次第。☆☆☆☆(最後はややおまけ)

『記憶なき殺人』ロバート・クラーク 講談社文庫

2006-09-16 22:50:22 | 洋物
 これも再読物。いやぁ、記憶になかった。舞台はミネソタ州のセント・ポール、時代は1939年。第二次世界大戦にアメリカが参戦する直前というところ。三人称で書かれる刑事、日記によって語られる記憶障害の男。女優志望の女性殺人事件が起こる。刑事のウエスリー・ホーナー、これが切れ者かと思ったら、怠け者のぼんくら。悪徳警官っぽい風俗課の刑事、いかにも悪そうに登場。そこにハーバート・ホワイトという汚れ無き記憶障害、やや足りない大男。第二の殺人はホワイトの写真のモデルをつとめていたダンス・レディ。ホーナーのもとには15,6歳の少女、マギーが一緒に暮らすようになる。悪徳刑事に陥れられるホワイト。ただ、彼には陥れられたという確信はない。なんだか、とても不思議な話。さらに第三の殺人…。予想外の結末であり、なんだかこんなのありかとも思うけれど、不思議な外され感があってまあいいのかも。ちなみに、『記憶なき嘘』という本もあったみたいだけれど、読んだ記憶ないな。☆☆☆☆。

『悪魔の涙』ジェフェリー・ディーヴァー 文春文庫

2006-09-14 21:41:35 | 洋物
 これまた再読シリーズ。それにしても、これが再買本というから我ながら呆れる。ディーヴァーは好きな作家。全部読んでいると思いつつ、本屋でこの本が一冊だけあった時に、買ってしまったのだよな。読んでない訳ないのに。ということで、主人公はパーカー・キンケイド。文書検査士にして二児のシングル・ファーザー。そして元FBI。冒頭がワシントンのデュポン・サークルでの大量殺人。ああ、これはあそこの地下鉄へのエレベーター、15年以上前だけれど、一月半ほどその辺りにいたことがある。
 大量殺人、そこに脅迫状が届く。その一方で犯人の一人が交通事故で死んでしまう。殺人実行犯を止めるには捕まえるしかないのか。脅迫状を調べるために、古巣FBIから頼まれて、事件に巻き込まれるパーカー。『悪魔の涙』は手書きの脅迫状のiの字の独特の点。いやあ、予想外に面白い。予想外というのは、何度目かなのに「意外」な展開に驚き、「やられた」と思ったから。あれ、まだこんなに残っているのに、と心配する必要はないです。まだまだ後が続いています。ということで、この本、もう買ってはいけないけれど、また読むのは良い。忘れた頃に。☆☆☆☆☆。

『ゴールド・コースト』上・下 ネルソン・デミル 文春文庫

2006-09-11 20:03:01 | 洋物
 『プライムアイランド』の前に出ている本で、やはりロングアイランドが舞台。弁護士のジョン・ホイットニー・サッターが主人公。(あの詩人ホイットニーの家系だそうな)アメリカの旧家(というのだろうな)そしてオールドマネーという銀のスプーンをくわえて生まれてきた妻スーザン。前半はまあワスプの典型のジョンのというか、ワスプの嫌らしさに少々辟易するが、マフィアのドン、フランク・ベンローザがいい、カシッピ?後半、このドンが大きく出てくる中で、ジョンに中年クライシスとワスプ自体の階層的中年クライシスが合わさって襲い掛かり、一気に展開していくと読まされる、読まされる。デミルのものとしては前半の嫌ったらしさなどから出色ということでもないが、☆☆☆☆は差し上げたい。

『あのころ、私たちはおとなだった』アン・タイラー 文春文庫

2006-09-01 23:38:54 | 洋物
 『ブリージング・レッスン』、『ここがホームシック・レストラン』などで知られるアン・ターラー。文春文庫の白い背表紙シリーズです。レベッカ、ボルティモア郡に住む女性。二人の義理の娘と一人の娘。それに義理の叔父。気がついた時に、中年になっていた女性。彼女がふと、自分は何だったのかと思う話。大きな事件があるわけでもなく、ただ、いろんなパーティがあり、(それが彼女の家の仕事でもあり)気がついたら、自分が違う人になっていたような、という話。☆☆☆☆になるのかな。