警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ第8作。高城が動き始めた。酒を控える。情報があれば車で駆けつけるため。物語はアクアラインを車で走る高城から始まる。千葉で見た女性の遺体は娘のものでは無かった。そこにプロ入りが決まった高校球児が行方不明という一報が入る。千葉県出身で東京の高校に通う。甲子園で活躍し、ドラフトでプロへ。才能を努力で磨き、夢をつかみつつある花井翔太。今回は基本筋が出来ている。元プロ野球選手醍醐も脇を勤める。そして最後に…。☆☆☆☆。
警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ第7作。失踪課第三方面室に法月にかわって新人の田口が登場。ベテランだが、刑事は初めて、やる気なし。今回は厚労省の高官で六条舞の父が失踪する。外国人労働の問題に関わっていた六条、同時期にIT企業のインド人が消えていた。果たして関係は。室長は復活するか、明神愛美が見合い?失踪事件は意外な展開を見せ、捜査一課の長野は空回り。失踪課第一方面室の竹永は今後育つキャラかとか、本筋以外の方が興味深くも思える。シリーズとしての作品としてはいいのだが、単発だったらちょっとという感あり。☆☆☆。
トレヴェニアンの名作『シブミ』、その主人公ニコライ・ヘルの日本時代から始まる前時代物語。ドン・ウィンズロウは『犬の力』、『フランキー・マシーンの冬』などで知られるアメリカの作家。『シブミ』ではバスクに暮らすニコライ、日本の「シブミ」を理解する不思議な人物。ロシア人貴族を母に持ち、日本で暮らした。戦犯となった恩人をラサツで不名誉な死から守るために死なせたことで囚われていたのが、解放される。アメリカのために「ラサツ」を使うことを条件に。舞台は中国、東南アジアへ。アメリカ参戦前のべトナムが最後の舞台となる。『シブミ』の雰囲気がうまく活かされており、黒原敏行氏の訳文も『シブミ』の淡々とした雰囲気を伝えているのがいい。☆☆☆☆。
再読シリーズ。「第十二章」から始まることが、誤りでないのだよという不思議な著者メモから始まる。警察の取調べ室、妻が殺され、突然逮捕された夫のニックの所に親友が手配した弁護士にかわって謎の男が金の懐中時計と手紙を持って現れる。そこから不思議なタイムトラベルが始まる。妻を射殺したのは誰か、それを阻止するには、2時間の時を遡り、2時間経過、その次には4時間遡り、2時間。遡行回数は限られており、その中で妻の身を守ることができるのか。一度、一度の遡行の度に、ニックは走り回り、次第に新しい事実が見えてくる。その事実の現れ方がなかなか、なかなか。次々と事態は回転して、意表をつかれることとなる。面白い。☆☆☆☆☆。
主人公は渋川春海。江戸幕府の碁打ち衆、安井、本因坊、林、井上という四家、安井家の二代安井算哲。囲碁を業としながら、算学に没頭する。その春海が平安時代以来使われ続けてきた宣明暦に変わる新しい暦を作り出す物語。脇役陣が良い。憧れの人「えん」。江戸の算学者、村瀬であったり、下馬将軍と呼ばれた大老酒井忠清、家光の腹違いの弟保科正之、水戸光圀、山崎闇斎、和算の関孝和、北極出地をともにする建部、伊藤など無名、有名どころか要所で実に活き活きとしている。大事業に向かって、いくつもの筋が織られていき、そこここに人が動いているという楽しさ。面白く読める。☆☆☆☆。
再読シリーズ。飛行機が墜落。企業買収に関わっていた弁護士のシドニー・アーチャーの夫がその飛行機に乗っていたと知らされる。その飛行機には連邦準備精度理事会議長も乗っていた。ところが飛行機に乗っていた筈のシドニーの夫、ジェイソンがシアトルにいたことが分かる。飛行機墜落事故の犯人とも。捜査するのはFBIの特別捜査官リー・ソーヤ。腕利き捜査官も今回の事件には振り回される。コンビューター関連の大企業が将来を賭けた企業買収。そこに個性的な面々が登場する。実に精緻な構成で、意表をつく展開の連続。手に汗握るアクションも加わり、登場人物も魅力的。流石にバルダッチ。☆☆☆☆☆。