カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『地検のS』伊兼源太郎 講談社文庫

2020-10-29 20:06:17 | 和物
 五つの短編からなる地検ミステリー。舞台となるのは神戸とおぼしき湊川地検。地裁付きの記者、検察事務官、刑事弁護士、特別刑事部検事、地検総務課員によるそれぞれの物語。犯罪とは、それを裁くとは。そこに関わるのが湊川地検の総務課長伊勢雅行。次席の懐刀と言われながら、謎の中で「S」の異名を持つ。警察の世界で「S」はスパイを意味するが、「正義」がそこに問われていくという物語。視点が変わりながら、少しづつ謎が見えてきながら、物語は進むということで、☆☆☆☆。続編も出ていますね。

『夏の祈りは』須賀しのぶ 新潮文庫

2020-10-28 21:48:35 | 番外
 高校野球小説。須賀氏は女性だけれど、高校野球を題材とする小説もある。5話の短編、埼玉県の公立高校の強豪校、北園が舞台。かつて県予選準優勝をしたことが栄光、それから何十年、ようやくチャンスが巡ってくる。一話、一話、時が流れ、主役が変わり、北園の夏が語られていく。途中、ちょっと飽きかけて、それがどんどん引き込まれる。前の話の登場人物が後からからんできたりね。青春なんだよね、そして人が生きるということは。☆☆☆☆。

『葬られた勲章』上・下 リー・チャイルド 講談社文庫

2020-10-25 21:03:13 | 洋物
 元アメリカ陸軍憲兵少佐であったジャック・リーチャーのシリーズ第13作。『キリング・フロアー』に始まるこのシリーズ、何作か読んだけれど、中期の代表作という評判の高い作品。深夜のニューヨーク、地下鉄に乗るリーチャーの前に、自爆テロリストの要素をいくつも備えた女性が。そこから物語は始まる。190センチを超す巨漢。頭の切れは相当なもの。その女性に突然…ということで事件に巻き込まれていく。上院議員のサムソンの軍隊時代が絡んだかと思うと、真相は二転三転。代表作という期待が大きすぎて、途中、そこまでかと思ったりもしたが、終盤は一気に引き込まれ、☆☆☆☆。

『棲月 -隠蔽捜査7-』今野 敏 新潮文庫

2020-10-21 23:08:41 | 和物
 キャリアから大森署署長となった竜崎伸也のシリーズ第7作。帯に「最後の事件」とあって、ええって思ったが「大森署署長、最後の事件」とあったので念のため。ある朝、私鉄がシステムダウンで止まっている様子。竜崎はITに詳しい署員を所轄外の駅に走らせる。そしてさらに銀行のシステムもダウン。その情報収集も命ずる。一方で札付きのワルだった少年がリンチ殺人に。その捜査が行き詰まっていく。捜査本部にやってきた伊丹刑事部長から異動の噂を聞く。そこで自身が動揺しているのに驚く。例によって、竜崎ペースとそれに抵抗を覚える「カタキ役」。そしてかつての「カタキ役」が竜崎派として登場したりと面白い。戸高は相変わらず、再び登場の少年係の根岸はもうひと頑張り欲しいななどと思いながら読み進む。竜崎伸也の成長物語、殺人事件は少々無理筋もあるが、意外な展開を示してくれて。今作も楽しめて☆☆☆☆。最後のシーンは涙出るね。そうそう、次作、単行本はもう出てましたね。

『天使は黒い翼をもつ』エリオット・チェイズ 扶桑社ミステリー

2020-10-18 21:26:46 | 洋物
 1953年発表というノワール小説。一人称で語られる物語。刑務所からの脱出、相棒の夢にうなされる。石油採掘での稼ぎから町に出たティムが宿のボーイの紹介で出会ったのが、謎の美女ヴァージニア。二人はともに追われる者を持ちながら、共に旅をすることに。時に互いに裏切り合い、そしてかつての相棒の計画の実現に向けて進む。魔性の女ヴァージニアという女性が凄まじい。罪を犯し、罪におびえるティム。そして思わぬ展開が待っている。実にアメリカということか。☆☆☆ほ。


『もういちどベートーヴェン』中山七里 宝島社文庫

2020-10-17 16:43:04 | 和物
 岬洋介のシリーズ。司法試験にトップ合格し、司法修習生となる。語り手は同じ司法修習生の天生。高校時代までピアニストを目指し、挫折の後、司法を目指した。修習生の中で抜群の力を示す、それでいて人を引き込む魅力を持つ岬。天生は嫉妬にかられながらも、見守ってしまう。その嫉妬が岬の別の面を引き出すことに。修習生の生活、取材しなかったとのことだが、実際の修習生が「懐かしく」思ったという描写。そして今回はベートーヴェン。またしてもか。静おばあちゃんが登場しているのが何だか嬉しい。☆☆☆☆。

『黒と白のはざま』ロバート・ペイリー 小学館文庫

2020-10-05 22:44:51 | 洋物
 もとアラバマ大ロースクール教授にして弁護士のトーマス・ジャクソン・マクマートリーのシリーズ第二作。アラバマ大では伝説のアメフトコーチ、ブライアントのもとでプレイした。前作を読んで待ち遠しいと切望の次作ということ。KKKの発祥地というテネシー州プラスキ。そこに教え子でフットボールプレイヤーで、前作でトムを助けたボーセフィス(ボー)・ヘインズが弁護士を営んでいた。ボーは5歳の時にKKKによって父を殺されていた。KKKの一人がプラスキの有力者アンディ。父の命日に酒場でアンディに会ったボー。そこから事件が始まる。殺人事件の被告となったボー。トムは教え子のリックとともに助けに駆け付ける。南部という所、人種の問題、その闇の部分。ということなのだけれど、ミステリーとして、法廷物として、少々難あり。期待外れ。既に4作まで出ているといい、第3作では第1作の伏線も回収とのこと。こちらを待つのかな。☆☆☆ほ。

『新任刑事』上・下 古野まほろ 新潮文庫

2020-10-03 21:18:00 | 和物
 舞台となるのは前作『新任巡査』と同じ、四国と思われる愛予県。今回、新任刑事の物語。愛予県警の上原亜梨子(これで ありす)と原田貢、共に28歳の同期。上原は巡査部長に合格し、専務で筆頭署である愛予署の刑事課勤務。原田はまだ巡査長は地域課所属で交番勤務が突然の愛予署刑事課勤務となる。愛予署管内では10年弱前に警察官障害致死事件が起こり、時効が迫っている。この事件をめぐっての物語。刑事としての実戦が序盤で語られていくのは前作と同様。先輩、上司、それぞれにキャラがいいのです。刑事と警備の対立であるとか、政治的な部分も含まれてくる。後半に怒涛がやってくるのも前作同様で心地よく、☆☆☆☆ほ。次作は『新任警視』だったかな。文庫はまだ先か。

『新任刑事』上・下 古野まほろ 新潮文庫

2020-10-03 21:18:00 | 和物
 舞台となるのは前作『新任巡査』と同じ、四国と思われる愛予県。今回、新任刑事の物語。愛予県警の上原亜梨子(これで ありす)と原田貢、共に28歳の同期。上原は巡査部長に合格し、専務で筆頭署である愛予署の刑事課勤務。原田はまだ巡査長は地域課所属で交番勤務が突然の愛予署刑事課勤務となる。愛予署管内では10年弱前に警察官障害致死事件が起こり、時効が迫っている。この事件をめぐっての物語。刑事としての実戦が序盤で語られていくのは前作と同様。先輩、上司、それぞれにキャラがいいのです。刑事と警備の対立であるとか、政治的な部分も含まれてくる。後半に怒涛がやってくるのも前作同様で心地よく、☆☆☆☆ほ。次作は『新任警視』だったかな。文庫はまだ先か。

『新任巡査』上・下 古野まほろ 新潮文庫

2020-10-01 11:33:33 | 和物
 東大卒の元警察キャリアという著者による警察ミステリーという触れ込みで、前半はひたすら新任巡査、警察学校卒業後の実務実習の中での詳細な描写が延々と続く。それが一転、場面が動き始めた瞬間に、怒涛のような急激な展開、おそろしいまでの緊張感とハラハナ、切なさと、ううむ。びっくり。前半の詳細な描写があればこその怒涛。帰りに『新任刑事』を買ってしまった。☆☆☆☆ほ。