カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『変身』東野圭吾 講談社文庫

2008-12-24 00:10:22 | 和物
 『容疑者…』が面白かったので、買ってみた。脳外科医のノートから物語は始まる。脳移植手術。不動産屋で強盗に出くわし、少女を守ろうとして撃たれてしまった主人公の成瀬。脳移植手術で蘇る。ところが、次第に自分が変っていく。かつて愛した恋人のそばかすが嫌になり、昔大笑いした映画に笑えない。絵が好きだったのに、音感だけが発達していく。ドナーは善良な青年の筈だった。どうして。謎を追い、その間にも自分が失われていく。そんな悲しい物語。読ませるのは確かであるが、『容疑者…』に較べて重いのが少々気になって、☆☆☆ほ、というところか。

『漂う殺人鬼』ピーター・ラヴゼイ ハヤカワ・ミステリ文庫

2008-12-17 23:49:19 | 洋物
『最期の声』で妻を失ったダイヤモンド警部。かわいそうにまだ、引きずっているようで。それでも魅力的な女性警部ヘン・マリンが登場。よその警察の主任警部で、葉巻を吸いながら、食べられる時は沢山食べる。彼女がなかなか良くて、この先の重要な人物になっていくといいね、ダイヤモンド警部!ビーチで女性が殺されていた。その被害者がバースの女性。ということで、ヘン警部の事件にダイヤモンドもからんでいく。その女性はプロファイラーでもあった。扱っていた事件を調べる内に、連続殺人が…。伏線の張り方、いつにもまして、巧妙。新しいキャラクターも育ちつつあるし、シリーズ物としては実にこの次までも期待させる。少しづつ大人しくなってしまうのは年のせいかもしれないが、頑張れダイヤモンド警部!で☆☆☆☆☆。


『死ぬことと見つけたり』上・下 隆 慶一郎 新潮文庫

2008-12-14 21:48:46 | 和物
 隆慶一郎は時代小説の中で最も好きな作家。その絶筆がこの本。あと少しで完結ながら、シノプシスと編集部との話を残して終った。『影武者 徳川家康』というのが代表作。網野史観をベースにした独特の時代小説は実に面白い。この本は『葉隠』から生まれたもので、鍋島の武士の凄まじい生き様が描かれる。物語の始まりは虎に殺されるシーン。いきながら「死人」となる「いくさ人」斎藤杢之助、その友人求馬が主人公。かっこいいのだなぁ。こんな男にはなれないと思いつつ、その爽快さは別格。佐賀県の人、何人も知っているが、こんな血が流れているのかしらん。それにしても、隆さんにはもう少し生きて欲しかった。☆☆☆☆☆。勿論再読シリーズ。

カタカナミステリー大全

2008-12-13 23:41:57 | 番外
カタカナミステリー大全と称してますが、和物も結構多いです。おまけにミステリー以外も入っています。
もともと、同じ本を買わないようにと始めたのですが、このブログの中に、何故か同じ内容が入っていることもあるのでして、いやはや、何のためか。
個人的な趣味の☆の数ですので、あまり参考にならないかと思いますが、☆☆☆☆以上は、読んでみて損はないんじゃないかと思います。 亭主ケイハク。

『風の歌を聴け』村上春樹 講談社文庫

2008-12-13 00:31:54 | 和物
 空港の本屋で『1973年のピンボール』を見つけた時から、この本を読むのは必然だった。次に飛行機に乗った時、伊丹空港からバスで京都に行き、最初に入った本屋で買った。巻末に、1979年5月とあった。30年と5ヶ月と半月前。最初に読んだのが文庫本だったから、この時読んだわけじゃない。それでも、同僚の女性が、この頃はまだ生れて半年で、はいはいしていたということに気がついたりすると、まいったなぁって気分になる。
 「僕」は鼠の友達で、ジェイズ・バーに通う。沢山ビールを飲み、煙草を吸い、右手の指が4本しかない女の子と知り合い、おまけに彼女は双子の片割れ。鼠は本を読まない筈だったのに、本を書こうとしており、やっぱりビールを飲み、ジェイズ・バーに通う。
 「僕」の車には、何故か牛の絵が描いてあり、それは前の持ち主が描いたらしい。それでも「僕」は大学で動物について学び、沢山の犬猫を解剖し、牛の胃に入っていた草を持っている。
 村上春樹という人は、やっぱり凄いと思う。とてもシンプルに、とても深遠な世界を描き、ぐいぐい読ませて、何が分かったんだろう。うん、純文学っていうのはこういうもんだ。☆☆☆☆☆。

『ナイチンゲールの沈黙』上・下 海堂 尊 宝島社文庫

2008-12-09 23:25:49 | 和物
 あの『チームバチスタの栄光』の海堂、第二作。歌う看護婦という二重の意味のナイチンゲールが主人公。この人は登場人物の作り方がうまく、どんどん読ませる。謎解きとしてはすごく優れているというのではないが、今回は歌、凄みのある歌、脳、といった仕掛けで読ませる、読ませる。白鳥に加えて加納が登場、病院の看護婦、猫田看護師長などの脇役がとてもいい。アツシもいいね。白鳥などの「論理」というのは少々鼻につくが、どんどん読んでオシマイまで突っ走った。☆☆☆☆。

『腕利き泥棒のためのアムステルダム・ガイド』クリス・イーワン 講談社文庫

2008-12-06 01:26:43 | 洋物
 作者はイングランド生まれ、主人公もイングランド生まれのミステリー小説作家で兼泥棒。アムステルダムで小説を書いていたが、泥棒を依頼される。どうも小説よりも泥棒の腕の方が確からしい。ミステリーは謎解きのポイントとなる鞄(だったかな)がどうしてその場にあるのか、これが解決しないと完成した筈の小説は真の完成を見ない。そこに「見猿、言わ猿、聞か猿」を盗んでくれという依頼。断っておきながら実際には盗みに入る。アムステルダムの街を思い出しながら読んで、ちょっと面白い。まあまあ読めるので時間つぶしにはOK。評価は☆☆☆ほ、くらいかな。

『1973年のピンボール』村上春樹 講談社文庫

2008-12-02 00:56:26 | 番外
 懐かし、懐かしの再読シリーズ。一体どれだけぶりだろう。たまたま空港の本屋で見つけた。持っていた本を読み終わりそうで、かつ厚い本は重いしという時に見つけた。残念だったのは『風の歌を聴け』じゃなかったことかな。主人公、彼は唐突に双子と暮らすことになる。名前も知らないままに。たまに近くのゴルフコースを散歩して、ロストボールを拾う。翻訳の仕事をしながら。もう一人は鼠。一人で暮らす。トライアンフに乗り、ジェイズ・バーでビールを飲む。二人とも煙草を沢山吸って、鼠はビールを飲んで飲酒運転で帰る。かつて読んだのも文庫本。最初に読んだのはいつだったろう。結局、何だか分からないのは相変わらずで、でも主人公二人がついに交わらないので、やっぱり『風の…』を読み直してから読むんだったかなと思う。ピンボールに再会し、話しただけで帰る。そういえば、高校時代、学校帰りにラーメンを食べ、ピンボールで遊んで帰った。そんなんやこんなんで、昔を思い出したということもあり☆☆☆☆。