カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『第三の時効』横山秀夫 集英社文庫

2008-10-29 00:55:48 | 和物
 これまた横山秀夫の警察物短編集。カタカナミステリーはどこに行ってしまったんだろうと思いつつのF県警強行犯シリーズ。課長の田畑、一斑班長朽木、二班班長楠見、三班班長村瀬といった強烈な面々。彼らを軸に六つの短編。これがそれぞれにいい出来なのだ。主人公を替え、それによって視点を変えながら、蠢くF県警。横山の傑作のひとつと言っていい。やはり、純粋な読み切り短編物よりも、同じ舞台で描いていった時に、一番いきいきしている。☆☆☆☆☆。

『動機』横山秀夫 文春文庫

2008-10-25 00:46:14 | 和物
 横山秀夫の警察短編集。2000年10月に単行本が出ており、『陰の季節』に次ぐ第二弾というところ。相変わらず上手いもので、警察手帳紛失事件などの四篇がそろう。人のつながりの無いシリーズなので、読み飛ばし向きか。犯罪物なので、少々暗くなるが、流れから裏があって、終局へという辺りは流石。☆☆☆ほ。


『ジャンプ』佐藤正午 光文社文庫

2008-10-22 23:45:08 | 和物
 ミステリーではないかもしれないが…。一杯半のカクテル。飲めない主人公が彼女に連れられていったバーでアブジンスキーというカクテルを一杯半飲んだ。酔って彼女のアパートに着くが、彼が毎朝食べるリンゴが無いことに気がつき、彼女が買いに走る。そして翌朝、彼女が帰ってこなかったことに気がつくが、出張に出かけてしまう。帰ってもまだ彼女が戻ってないことを知り、彼女探しが始まる。謎解き風でもあるけれど、確かに青春小説です。それで人間を考えてみたり。映画になって原田泰三クンが主人公やってました。男性と女性では捉え方違うみたいです。☆☆☆☆。


『蜂起』森巣博 幻冬舎文庫

2008-10-19 23:07:43 | 和物
 懲戒免職となった元警視、セックス依存症のアート・ディレクター、塾生のない伝統右翼主宰者、自傷癖のある女子高生、彼らの生活を活写するところから物語は始まる。この前半がすごく面白い。壊れ始めた日本の姿がそこに描かれ、暴走し始めた日本、壊れた指導者達、後半にどうそれがまとまるかと思ったら、前半の人々は後半で役を持たない。何で?折角なのに…。前半分は☆☆☆☆ほ。後半は☆☆。で、期待込めで☆☆☆ほか。

『狼の血』鳴海 章 光文社文庫

2008-10-18 22:40:10 | 和物
 「あなたが、もし、サラリーマンであるならば、この小説を読むことを断じてお薦めできない。…」というのが推薦文であったそうな。一部上場の化学企業の総務課に勤める山本甲介。地方から東京の三流私立大法学部に進み、東京にいたいということで会社を選んだ。何という仕事はなく、新聞の切り抜きをコピーして配布するのも重要な仕事。
 未来は無い、群れないで生きている所へ、同郷でヤクザとなった男が現れる。鞄を託して姿を消したその男が死体となって発見されたところから、何かがはじけていく…。という話。何とも。☆☆☆。


『くろふね』佐々木 譲 角川文庫

2008-10-17 21:35:14 | 和物
 第二次世界大戦三部作や最近では警察小説で知られる佐々木譲。彼は歴史小説も書く。僕が初めて読んだのが、幕末の中島三郎助という人物を主人公とした小説ということになる。浦賀奉行所の与力の息子として生まれ、最初に黒船に乗る日本人の一人となる。彼が幕末の動乱の中を生きていく。あまり知られていない人物。脇役に榎本武揚や勝海舟が登場する。北海道視点というものも感じられるが、歴史読み物というより小説らしい小説ということか。☆☆☆。


『フロスト気質』上・下 R・D・ウィングフィールド 創元推理文庫

2008-10-15 22:02:48 | 洋物
 やっと出たフロスト・シリーズ第四作。ところで、著者のR・D・ウィングフィールド氏は亡くなられたとか。残念。未翻訳は長編2作。未読で短編が1作。例によってのフロスト警部。マフラーを頸に巻き、くすね煙草をポケットから出してくわえる。「浣○は好きかい」の台詞も懐かしい。マレット署長は相変わらずフロスト警部を毛嫌いしながらも、どこかペースを外される。ウェルズ巡査部長やハンロン部長刑事といった常連さんも元気。今回のカタキ役はデントン署に出戻ってきたキャシディ警部代行。これがまた陰を持ちながら嫌な奴で。誘拐事件、少年行方不明事件、少年殺人事件と次々と事件が起きて、フロスト警部は何故かそのすべてに巻き込まれていく。うっかりしたり、人間洞察力の凄さを一瞬見せたり、それでいてあっさりと手柄を渡し、ボロクソ言われても平気。理想の人物なのだ。あんな人に私もなりたい。☆☆☆☆☆。
 このブログは、実際の読書と随分タイムラグがあって、ようやく『フロスト気質』の登場でした。

『ユニット』佐々木譲 文春文庫

2008-10-12 20:27:13 | 和物
 佐々木譲は『エトロフ発…』の第二次世界大戦物や、北海道県警物といった警察物で有名。広島の事件の傍聴を続けていたような記憶が。この物語の冒頭でそれを思い出した。妻子を殺された男、夫の暴力に脅える女。二人の人生が交錯する。そこで生まれた二つのユニット。それなりに読ませるのだが、カタカナミステリーに走った原因を思い出させるものがあった。あまりに現実が近くウェットなのだ。何だか暗い気分になるので☆☆☆でおしまい。

『陰の季節』横山秀夫 文春文庫

2008-10-09 23:23:49 | 和物
 横山秀夫のD県警シリーズ第一作。4作の短編集。表題作「陰の季節」、警務課の二渡が天下り人事の掟を破ろうとする元刑事部長に鈴を付ける話。「地の声」監察課監察官の新堂が一通の告発文書の処理にあたる話。「黒い線」警務課婦警担当係長七尾。婦警のリーダーである七尾が婦警の失踪を追う。「鞄」警務部秘書課の柘植。議会対策を担当する柘植が、県警に爆弾質問をするという議員に迫る。それぞれの立場、しかも刑事は常に主役でないという立場で、警察が描かれていく。確かに新しいタイプの警察小説であり、読ませる。☆☆☆☆。