カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『優等生は探偵に向かない』ホリー・ジャクソン 創元推理文庫

2023-10-30 22:48:10 | 洋物
 優等生のピップを主人公とする二作目。前作で事件を解決したが大きな痛手もこうむったピップ。犯罪実録ポッドキャストとして「グッドガールの殺人ガイド」を始めた。そんな時に友人コナーの兄ジェイムスが失踪する。コナーからの懇願でピップが再び捜査に乗り出す。前作で明らかになった別件の裁判も進む中、ジェイムス失踪事件を追うピップ達。ネットを駆使し、情報を集め、情報を流し。青春小説の気分もただよわせながら、驚きの展開に。終盤の大きな展開はちょっと意外であったけれど、十分に読ませてくれた。☆☆☆☆ほ。

『このやさしき大地』ウィリアム・ケント・クルーガー 早川書房 LB

2023-10-29 15:14:14 | 洋物
 作者のクルーガーは『ありふれた祈り』でエドガー賞受賞、日本でもこのミス大賞をとった作家。されどこれはミステリーではないですね。作家曰く「『ハックルベリー・フィンの冒険』の「アップデート版」とのこと。そうですね、大ロードムービー。時代は1930年代、舞台はアメリカ。ミネソタ州のリンカーン・インディアン教護院に暮らすアルバートとオディという白人の兄弟。弟のオディの語りで物語は始まる。戦前のアメリカ、インディアンの子供を教護院に収容し、民族の言葉、文化を奪うことが行われていた。そこでは虐待も。そこに暮らす二人の白人の子供も例外ではなく。二人は赤ん坊の頃に舌を切られたスー族のモーズ、未亡人で教護院の教師が夫の残した農場を守る家に生まれたエミーとともに旅に出る。旅というにはあまりに重く、四人の少年少女はカヌーで兄弟の叔母が住むセントルイスを目指す。出会い、別れ、事件、いろいろな中で彼らは成長し、あるいは考えることになる。壮大で圧倒的な物語がここにあるのです。☆☆☆☆☆。


『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン ハヤカワ・ポケットミステリー LB

2023-10-28 20:18:26 | 洋物
 実に面白い。舞台となるのはイギリスにある“イギリス初の高級リタイアメント・ビレッジ”というクーパーズ・チェイスという高齢者施設。そこにはいくつもの棟があり、そこに高齢者が暮らす。2ベッドルームの部屋とか、ルーフバルコニーのある部屋、プールやローンボウリング場などもある。元は修道院で修道女が暮らしていた。今も礼拝堂と修道女たちの墓所が残る。高齢者たちのさまざまなサークルがあり、そのひとつが「木曜殺人クラブ」。元警部のペニーとその友人のエリザベスが始めた過去の事件を解き明かすというサークル。新たに加わった元看護士のジョイスは夫を亡くし、それでも買い物好きで、好奇心旺盛。労働運動の闘士ロニー、精神科医のイブラヒムといった面々。そして地元の警察のクリス主任警部にドナ巡査。個性豊かな面々がそろい、ジョイスの日記、第三者の視点、入り混じりながら物語が進む。実に面白い。イギリスユーモア小説かというような面白さに推理のプロットもこれまた複雑で面白い。新人の作品だというから恐れ入る。☆☆☆☆☆。続編もあり。

『シリウス・ファイル』ジョン・クリード 新潮文庫

2023-10-28 12:45:26 | 洋物
 再読シリーズ。平成16年の本。主人公は英国の秘密組織MRUの情報部員ジャック・ヴァレンタイン。北アイルランドに降下した工作員の死体を探し出し、隠されたモノを回収せよとの指令が下る。時代は20世紀末。アイルランド紛争の末期。その探索の中で、IRAの伝説的な闘士リーアム・メロウズ、ロンドン警視庁公安部刑事ウィットクロフトらがからむ。見つかったファイル、それを狙う謎の敵。さらにIRAの暗殺者らに追われ、トロール船での逃避行も。大活劇なのだけれど、冒険小説全盛期といった時代を感じる。☆☆☆。

『ありふれた祈り』ウィリアム・ケント・クルーガー ハヤカワ・ポケットミステリー LB

2023-10-27 17:29:46 | 洋物
 『このやさしき大地』の作家クルーガーの前作。ミネソタ州の町にくらすフランクとジェイク。牧師の父と音楽の才溢れる母、そしてやはり音楽の才を持ち、美人であるが兎口の姉と暮らす。ドイツ系住民とインディアンのスー族などが住む町は高台と下町とで別の世界があり、郊外には農場が広がる。フランクは吃音症のジェイクと禁止されていた線路の橋に遊びに行き、そこで死体を見る。この作品がミステリーなのかという気はするが、確かに死体が登場し、その謎はあるのだが、あくまでもミネソタの町の少年の物語。そういう思いで実に面白い本と言える。キリスト教の世界というのも見えてくるし。☆☆☆☆ほ。

『今夜』小野寺史宜 新潮社 LB

2023-10-26 22:04:47 | 番外
 夜四部作(2020年の段階では三作まで)の第三作とされる作品。プロボクサー、タクシー運転手、警察官、高校教師。その四人の物語。世界チャンピオンになる男に勝ったことのあるプロボクサー。大卒の女性タクシー運転手でカーシェアの車でドライブが趣味。中学の同級生で高校教師と結婚した高卒の警察官。その警察官と結婚した高校の国語教師。それぞれの物語があり、それぞれの夜があり、少しづつからまりながら。結構、重い。最後に何とかとはなるが、重い。☆☆☆ほ。

『亡国のハントレス』ケイト・クイン ハーパーBOOKS

2023-10-24 22:34:13 | 洋物
 『戦場のアリス』のケイト・クインの次作。主人公は戦場カメラマンに憧れるボストンの女性ジョーダン、ソ連の女性戦闘機乗りニーナ、従軍記者からナチハンターとなったイアン。それぞれの視点から、時代を越えながら物語は進む。少しづつ、背景が明かされていく。ソ連がどう戦い、ソ連がどういう国であったのか。第二次大戦が終わってもヨーロッパに留まりナチナンターとなった英・米の二人。そしてボストンのアンティークディーラーの家に育ち、カメラを愛する女性。螺旋階段を上がるように、物語はクライマックスへと向かっていく。それぞれの人物の魅力が読み手を先へと進ませる。ロシア人操縦士のニーナは抜群。人が面白く、魅力的に動くのでぐいぐい。☆☆☆☆ほ。