『エトロフ発緊急電』、『ベルリン飛行指令』といったスケールの大きな小説の佐々木譲による北海道警察シリーズのひとつ。北海道警を舞台として、組織と人間の問題を掘り下げていく面白さが秀逸。道警のヤミを告発しようとする警官。それを追い詰めていく道警組織。その組織の中から、人として立ち上がる刑事達。内情モノとしての面白さ、サスペンスと魅力あり。ただ、『歌う警官』から『笑う警官』としたのはいかがなものかと。著者も語るように『笑う…』には本歌があり、やはり『歌う…』の方が良かったのに。☆☆☆☆。
チャーリー・マフィン シリーズで有名なフリーマントルの最新作ということです。元CIAでKGBのスパイとなり収監された男。刑務所の中で復讐を企てる。相手は彼の元妻と、元KGBで彼の管理官、そして彼をCIAに売った男…というお話。元妻は元KGBと夫婦として幸せに暮らしていた。というのだが、それぞれのキャラが生きてないのです。フリーマントルの作としては残念。☆☆
ボストンのチャールズ・タウン。銀行強盗と現金輸送車強盗を生業とする者達の町。4人組が銀行を襲う。そこで女性の支店長を人質にとったところから物語は始まる。マグとフローリー、強盗とFBI捜査官がその女性を巡って動き出す。断酒中のマグ…。という話。アメリカン・アウトローの青春物語後編みたい。☆☆☆
リンカーン・ライム シリーズ第4作。アメリア・サックスとライムのコンビが今回はニューヨークを舞台に活躍、というところ。蛇頭の仲介によりアメリカに密入国を目指す中国の反体制家。その蛇頭はゴーストの名を持つ札付きのワル。海上での行き詰るシーンから始まりました。中国人が沢山出てきて、中国の格言、風水、漢方と東洋趣味満載。ソニーというけったいな名の中国人の刑事がいい。ライムが心を開く。今回は、伏線が張られ、いい意味の裏切りが沢山。おおう、おおう、というジェットコースター感がいい。ちょっと残念だというのはあるけれど、それがこの作品自体を損なうことはないです。☆☆☆☆ほとしておこうか。
マキャモンの南部を描くシリーズ。田舎町で農業を営むクリーモア一家。ジョンとインディアンの妻ラモーナとの間にビリーという息子。チョクトー・インディアンの母には不思議な能力が。現世に彷徨う死者を冥界に送ることができる。この親子を中心として、南部の深い闇の中に物語は沈む。特に前半がマキャモン独特の世界。後半、やや失速し、おいおいおいという内に終ってしまうのだけれど、マキャモン・ファンとして☆☆☆ほとしておこう。『少年時代』が最高ですよね。
この人の本を最初に読んだのは角川文庫でDKAというダン・カーニー探偵事務所物であったと思う。『死の蒸発』『赤いキャデラック』といった本だったろうか。『野獣の血』というのも記憶にあり、『脅える暗殺者』もあった。やはり良かったのは『ハメット』。映画の原作にもなった、あの探偵小説家ハメットを主人公とするミステリー。さて、この本。ゴアズ自身とオーバーラップする主人公のロードノベル。1950年代のアメリカの気分が伝わり、途中はマッキャモンの世界を思い出させるものがある。原作のせいか、翻訳のせいか、途中ところどころ吹っ飛び感があるけれど、久々にぐいぐいと読ませてくれた。おう、そんなという展開もあり、伏線は流石に見事。ということで☆☆☆☆ほとしよう。
海野さんは若い時に『アール・ヌーボーの世界』という凄い本を書いた人。この人がここまでやるかとこだわって、えいやっと内容を切り詰めて書いたであろう分厚い文庫本。『陰謀の世界史』というのが先に出ているそうですが、未読。プロローグからスパイ前史、第一次世界大戦、二つの大戦の幕間、第二次世界大戦、冷戦、一九五〇年代、一九六〇年代、一九七〇年代、一九八〇年代と書き進む。よくぞここまでという感じで資料を漁り、「○○については『×××』がよくまとめられている」という調子。参考文献に16頁、索引に25頁使う文庫というのもないよね。2003年に単行本として刊行。☆☆☆☆ほ
『サイレント・ジョー』T・ジェファーソン・パーカー ハヤカワ・ミステリ文庫
主役のジョーは幼い頃に父に硫酸を掛けられ、顔はその時の傷を残したまま。施設にいた所をウィルとメアリーの夫婦に引き取られる。カリフォルニアのオレンジ・カウンティー郡政委員の父が、政敵の娘の誘拐事件の最中に殺される。その謎を追う内に、さまざまなことが結びついていく。長編で読み応えがある。一人称型は好みではないのだけれど、プロットのうまさにひきつけられました。☆☆☆☆
主役のジョーは幼い頃に父に硫酸を掛けられ、顔はその時の傷を残したまま。施設にいた所をウィルとメアリーの夫婦に引き取られる。カリフォルニアのオレンジ・カウンティー郡政委員の父が、政敵の娘の誘拐事件の最中に殺される。その謎を追う内に、さまざまなことが結びついていく。長編で読み応えがある。一人称型は好みではないのだけれど、プロットのうまさにひきつけられました。☆☆☆☆
久々の文庫版ということで、読みました。真は相変わらずで、店番とコラム書きと街の掃除人。かつての仲間がそれぞれに巣立っていっているような感じも。ここに来て真の母が元気ですね。☆☆☆ほ