カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『天地に燦たり』川越宗一 文春文庫

2020-07-22 22:06:53 | 番外
 『熱源』で直木賞受賞の川越宗一、第25回松本清張賞を受賞したというデビュー作。時代は16c末から17c初頭。日本、琉球、朝鮮。薩摩の武将樺山久高。琉球の密偵真一。朝鮮の白丁にして儒者となる明鍾。三者の闘いが、生きる世が錯綜する。人とは、王とは、生きるとは。実に大きなスケールで、それでいて三者がそれぞれに生き生きとして。不思議な世界を見た。☆☆☆☆。

『レッド・メタル作戦発動』上・下 マーク・グリーニー&H・リプリー・ローリングス四世 ハヤカワ文庫

2020-07-19 20:34:50 | 洋物
 『暗殺者グレイマン』シリーズのグリーニーと海兵隊大隊長であったローリングス四世の共著による長編冒険小説。冒険小説?壮大な規模の軍事アクションサスペンス?
 中国が台湾に手を出して、その時期をつかまえてロシアが大きな手を伸ばす。それにアメリカは?NATOは?どうする?という大スペクタル。ヨーロッパで、アフリカで、悪役ロシアが大活躍し、アメリカ、ポーランド、フランスと次々と視点を変えながら物語は進む。少々チャンネルが多すぎて、いそがし過ぎの感もありますが、大迫力にして迫真のド迫力です。迫をいっぱい使ってみて☆☆☆☆。

『狂犬の眼』柚月裕子 角川文庫

2020-07-18 14:13:52 | 和物
 あの日岡が帰ってきた。『虎狼の血』で大上の部下であった日岡、県北の駐在所勤務に飛ばされている。久しぶりに寄った呉原の晶子の店、そこに一之瀬と国光との会合に遭遇する。今回の主役は日岡なのだけれど、魅力は国光。実にいいのです、これが。大上といい、一之瀬といい、そしてこの国光。その魅力に絡めとられるというのでしょうか。そんな日岡の物語。ううむ。☆☆☆☆。

『重力ピエロ』伊坂幸太郎 新潮文庫

2020-07-14 22:43:53 | 和物
 兄の泉水と弟の春。春は美形で絵の才能にあふれる。この二人、そして両親にはとても悲しい過去があった。仙台の街に落書き事件が。春はそれを消すことを仕事とする。そして仙台に連続放火事件も。落書き、放火に関係が。病床にある父も含めて、謎解きをすすめると、そこに不思議な連鎖が見えてくる。ここに空き巣の黒澤も出てきてちょっと面白い。「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」ということなのだろうけれど、重い。それでいて話は滑るように展開していくのですね。☆☆☆☆ほ。

『ラッシュライフ』伊坂幸太郎 新潮文庫

2020-07-11 15:30:15 | 和物
 五つの視点で語られる物語。画商戸田と新進の女性画家志奈子。空き巣専門の黒澤。新興宗教の教祖に惹かれる画家河原崎と教団の幹部塚本。互いの配偶者を殺そうとしている精神科の女医京子とサッカー選手青山。失業し再就職に失敗し続ける豊田。かれらの物語が交錯し、それがエッシャーの絵のように壮大なだまし絵のような…。という実に不思議な物語。黒澤は別の物語にも登場するね。☆☆☆☆。