カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『最高の銀行強盗のための47ヶ条』トロイ・クック 創元推理文庫

2009-03-27 22:15:12 | 洋物
 久々の鉱脈発見!と言っても、本邦初訳出。アメリカでは第二作も出ているというので、先が楽しみ。9歳で最初の銀行強盗をするタラ、今は22歳でかなりの美女に成長している。その父ワイアットはタラの最初の銀行強盗の時に足を撃たれ、銀行強盗として最高になるための第一条を作る。以後二人は47ヶ条を守り殺人狂になっている。銀行強盗として最高になるために作られた47ヶ条を守り、未だつかまらず。一方、堅物の保安官を父に持つ元不良少年マックス。タラとマックスの人生が交錯し、ハチャメチャな展開に拍車がかかる。映画監督で脚本も書いていたというクック。文庫終わりの解説で書かれているとおり、テンポがいいのはそれもあるのか。西部を舞台に脇役も個性的。登場人物一人一人の絵が描けているのも脚本的でいいのかも。ああ、馬鹿々々しくて面白かった、ということで☆☆☆☆☆と大奮発!
第一条:銃は友達だ!いつまでも変わらぬ親友だ。だから大事にしろ。正しく取り扱えば、きっとおまえを守ってくれる。だがひとつだけ…たったひとつだけ、撃ち方の秘訣がある。撃つときは、目をしっかり開けろ。それから、涙も禁物だ。おまえがことのことをちゃんと守れば、みんなが幸せになる。守らなければ、おれはまたあの獣医のところで縫ってもらう羽目になるんだ。そんなことになったら、みんなが不幸になる。おれが保証する。
第二条:私生活と仕事は切り離しておけ。
第三条:自分の車は絶対に使ってはならない。これは第二条:私生活と仕事は切り離しておけのの附則条項だ。目立たない車を使え。そして、もっと大事なことだが、誰にも気づかれないうちに、元の場所に戻しておけ。捕まえられ、素っ裸にして取り調べられ、ブロープ(探り針)で探られるのは、そのかわいそうなお人好しの役目だ。おまえの穴という穴は、犯されることなく清らかなままだ。ありがとう、神様、守ってくれて。
第三条:自分の車は絶対に使ってはならない。
第四条:自分の頭を使え。
第五条:(梃子の作用は友達だ)P68
第六条:狙うのは、田舎の銀行だけにしろ。ロサンゼルスのような都会では、六十秒以内に、百戦錬磨の特殊部隊に囲まれることになる。その点、ヒックビルみたいな名前の町なら、バッジをつけた、ビール腹の老いぼれがひとりいるだけだ。だがどういうわけか、銀行強盗のメッカはロサンゼルスだ。理解に苦しむ。
第七条:人間というものは、とんでもなく愚かになり得る。利口にさせる唯一の方法は、ぶっとい銃口を顔に突きつけることだ。それでも、まだ用心は必要だ。
第八条:いつでも楽しめ!手には銃を。足取りには春の軽やかさを。爽やかな風が顔にあたる。それこそ人生だ。それから、これは覚えておけ。顔に銃を突きつけられた幸運なやつらにとって、それこそが、くだらない人生で起きる最高の胸躍る出来事になる。ズボンを濡らすようなやつらでさえ、スリルを味わうことになる。だから、おまえもそのひとときを大いに楽しめ!
第九条:顔を覆うようなものをかぶれ、バンダナとかパンティストッキングとか。大事なのは変装することだ。だがもしも、覆面が脱げて素顔を見られたら、目撃者を片づけろ。おまえを見て、何かおかしいと思ったら、そいつらはおまえをしつこく見るようになる。そうなったら、そいつを片づけろ。邪魔したり、いらつかせたり、あるいは、妙な呼吸をしただけでも、遠慮なく片づけろ。ほとんどのやつは大バカ野郎だ。それを忘れないことが重要だ。そいつらを片づければ、世のために尽くしたことになる。そいうろくでなしはそこらじゅうにいる-社会の浄化は善行になる場合もあるんだ。
第十条:相棒にろくなやつはいない。いや、タラ、おまえは例外だ。おまえは実によくやっている。たいていの犯罪者は、神からセンスを授かっていない。まあ、授かっていたら、犯罪者にはなってないだろうな。だがもしも、相棒が必要になったら…運転手とか、金庫破りとか、まあそういったようなものだ…その場合は、身許証明書を要求しろ。保証人になってくれそうなのが誰もいないようなやつは、お払い箱にしろ。
第十二条:仕事をやるときは、正しいやり方-ワイアット式-で行えるだけの十分な人手と武器を用意しろ。追加の人員が必要な場合は、確保しろ。”プロ”の犯罪者は家族みたいなものだ。そうだな…機能障害の家族ってとこで、おまえとおれみたいなのとは違うんだ、タラ。運転手とか、力仕事をやってくれるやつとか、とにかくおまえが必要な人手を紹介してくれるまで、信用できるやつに電話をかけまくれ。弾薬はたっぷり準備しろ。それから自分の武器のことを熟知するように。そうすれば、誰かが間違って足を撃たれるようなことはない。二度とない。あれはほんとうに痛かったんだ、まったく。それに、並外れてど素人っぽかったぞ。
第十三条:愚かな人間は罰しなければならない。仕事の邪魔にならない範囲で、おれたちの貴重な資源を消費している邪悪な生き物を、この世から取り除け。心の奥底で、世間のみんなは感謝するかもしれない。もちろん、声に出しては言わないだろうが。
第十四条:敏感な部分-指、秘所など-に圧力を加える。(134ページから)
第十五条:指紋を拭き取る。(136ページから)
第十六条:下着を取り替えるのと同じくらい、まめに手口を変えろ。警察を楽にさせてやることはないぞ。
第十七条:強盗の最中に記憶に残るようなことを言って、あとではっきり思い出せることを証人に与えろ。面白くて無茶苦茶であること、またはそのどちらか、極端であればあるほど好ましい。
第十八条:できるだけ、あとを追いづらくさせろ。
第二十一条:銃をきれいに手入れしろ。(126ページから)
第二十二条:誰かが殺されたら、目撃者はひとりも残すな。
第二十三条:厄介者は取り除け。隔離するか、動けなくしろ。あるいは片づけろ。おまえの好きなのを選べ。
第二十五条:敵との間に十分な距離をとるように。(164ページから)
第二十六条:気が狂っていると相手に思わせろ。狂気を感じろ。狂人になれ。これはただ面白いからだけじゃない。効果覿面だ。うまくやれれば、仕事はずっと楽になる。だいたい、体重二百五十ポンドの精神異常者の相手になろうというやつがいると思うか。
第二十九条:男は、人間のメスにころりとまいってしまう。嘆かわしいが、厳然たる事実だ。だから、もし警官が、テールライトが壊れているとか、まあ、その手のことを言っておれたちの車を停まらせたときは、お前は神から与えられた魅力にものを言わせて、警官を追い払え。百ワットの笑顔と胸元が大きくあいた服があれば、たいがいのことは切り抜けられる。
第三十二条:相手の頭の正しい殴り方:銃をしっかりと、だが注意深く握る。下に向かって弧を描くように振り下ろす。その際、重力を利用すれば、振りの威力を増すのに役立つ。そして、必ず最後まで振り切ること。この場合、重力はおまえの友達だ。ただし、殴るのは一回限りにとする。殺人罪に問われたくないならな。
第三十三条:(ねえ、支店長のことはわかるわよ。あれは、第三十三条の通りだから。)21ページ。
第三十五条:(運転しながら、どうやって人質をとることに集中できるんだ?第三十五条にある通り、そんなことがでくるわけはない。)241ページ。
第三十六条:相手にはっきるわからせるためには-銃の撃鉄を起こせ。ハンマーが後ろに引かれる音を聞くと、人は反射的に態度を改めるものだ。
第三十七条:絶対に途中で話を変えるな。いったん変えちまった話は、底に糞がくっついた靴みたいなもんだ。いずれデカは、その靴を脱がす。おまえに残されるのはその糞だけだ。
第三十九条:計画を立てるのを怠るのは-失敗するための計画を立てるようなものだ。だがな、たとえどんなに考え抜いた計画でも、うまくいかない場合もある。だから、とんでもないことになったら、必ず、人が考えつかないような方法をとれ。みんながあっというようなことを、その場で考え出せ。
第四十二条:ひとつの籠に、卵を全部入れてはいけない。
第四十七条:疑わしきは片づけろ。


『嵐を走る者』T・ジェファーソン・パーカー ハヤカワ文庫

2009-03-26 22:56:04 | 洋物
かつて友人であった男達。それが憎みあう。という話だが、どうということなし。妻と子を爆弾で殺され、自身も片目、小指を失った元保安官事務所の捜査官。今は私立探偵となる。その犯人は刑務所に就役中で、メキシコ系のギャング。彼も妻をその捜査官の陰謀によって殺されたと信じている。捜査官とその妻、ギャングとは高校の同級生。それが憎みあってということだが、いやぁ、僕には面白くなかった。ほ。

『サーカスの息子』上・下 ジョン・アーヴィング 新潮文庫

2009-03-22 21:54:13 | 番外
 久々にジョン・アーヴィングを読んだ。珍しくも主人公はカナダに住むインド人の整形外科医。趣味?で小人の血液から小人となる遺伝の要素を見つけようと研究中で、しばしばインドのボンベイ(ムンバイ)に行く。そこは本来の地で医師であった父のいた場所。ダックワース・クラブに通い、子供達などの手術をしながら、インド映画の脚本を書く。主人公はダー警部。話が紡ぎ出されていく。アーヴィング曰く、インドに一月半いただけとか。それでこうした世界を描く。忙しさの中で読んでいたので、中々一気に読めなかったが、頁をめくらせる。おすすめの本。どう考えるかは、その人に。☆☆☆☆☆。

『信長と消えた家臣たち 失脚・粛清・謀反』谷口克広 中公新書

2009-03-19 23:41:41 | 番外
 谷口という人は戦国史研究家で中学の教師をしながら、戦国、特に信長関係の著書が多い人という。信長という人物をまわりにいて消えていった家臣という珍しい視点でまとめた一冊。第一部挫折、第二部粛清、これを序章、十二章、終章で。最終的には信長論というところか。寝床で少しづつ読むのには良かったが、☆☆☆。

『見えないグリーン』ジョン・スラデック ハヤカワ文庫

2009-03-02 20:52:03 | 洋物
 新刊本と思って買って、復刻だったり新装版ていうことがある。この本がそれで、1985年6月にハヤカワ・ミステリ文庫で出た本だった。この手のものに運がないんだよね。この位前の本でも面白いのはあるのだが、相性が悪い。ちなみにこの作家ラウゼイあたりと同世代だそうな。探偵クラブ、そのメンバーが数十年後に謎の死を遂げる。メンバー唯一の女性、彼女の知り合いの作家が私立探偵と称して登場する。いかにも四半世紀以上前の「本格派」というのか、それぞれの人物の描写が浅いと解説にもあったが、キャラがつまらなくて、ちょっと退屈。こうなるとなかなか読み終わらなくて、謎解き自体はほう、そう来たかだけれど、☆☆でいいところ。