待ってました文庫化を。ベストセラーとなりさらには映画化もされた作品。舟を編む、というのが一冊の辞書を作り上げること。その物語。主人公の馬締光也はその名のとおりの真面目。辞書編集部一筋の荒木によって営業部から辞書編集部に引き抜かれる。辞書作りにすべてをかける松本先生、今時若者だけれど、どこか馬締も認めるセンスの良さもある西岡、契約社員の佐々木さん。これらの面々に馬締の恋も織り交ぜながら、目的に向かって進んでいく。舟を編んでいく。こういう仕事好きです。途中、辞書編集部を離れる西岡の心情が分かるよなぁ、いい味出すよな。彼らの肉付けがいいのです。人間好きになれる本、かな。☆☆☆☆。
リストラ請負面接官木村真介を主人公とする「君たちに明日はない」シリーズ第4作。今回はキャビンアテンダント、団塊の世代、ロクコン準優勝の課長、そしてファミレス界のエリート。リストラであったり、その中で引き止め誘導であったりと。例によって、その人で描かれる。今回はディーバ、いいですね。ノー・エクスキューズも味があり、ふむふむ。☆☆☆☆。
ヴィクトリア朝警察小説という不思議なジャンル。これを書いているのがアメリカ中西部の人であるというから不思議。切り裂きジャックによって信頼が地に落ちたスコットランド・ヤード。そこに新たに赴任したディ警部補が主人公。ヤードは殺人捜査専門部署を作り、新たに警視総監となったサー・エドワードのもと、奮闘を続ける。何と言ってもヴィクトリア朝の時代ということで、不思議な時間が流れている。指紋捜査に着目するキングスリー博士、見どころのある巡査ハマースミス、それぞれにキャラがしっかりと作られていて、またその背景までも、なかなか面白い。霧にかすむような雰囲気が漂い、独特の警察物になっており、☆☆☆☆。早速続編も出ましたし。