カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『川は静かに流れ』ジョン・ハート ハヤカワ・ミステリ文庫

2009-09-28 01:03:32 | 洋物
 ジョン・ハートを読むのは初めて。「期待は絶対に裏切られない」「久々の★★★★★満点だ」といった惹句が帯に並ぶ。アメリカ探偵作家クラブ賞 最優秀長編賞受賞ということだが…。主人公のアダム・チェイスが5年ぶりに故郷ノース・カロライナに帰る。数代続く農園主の家に生まれ、殺人事件で継母の証言から殺人犯として逮捕。裁判で無罪となった、故郷を出てニューヨークで過ごしていた。かつての不良仲間からの連絡に帰郷を決意。そこから事件が広がっていく。という話。死体がひとつ、ふたつと出てくる。地元の警察に疑われながら、家族が崩壊していく。父親、義理の弟、妹の双子。父親の親友。その孫娘。刑事になっていた昔の恋人。友人の父親。ミステリーであり、家族の物語である。結局は好きか嫌いかというと、☆☆☆。第一作目の大評判だったということだけれど、ま、いいか。

『奇跡のタッチダウン -報酬はピッツァとワインで-』上・下 ジョン・グリシャム ゴマ文庫

2009-09-20 18:23:32 | 番外
 ジョン・グリシャムと言えば、リーガル・ミステリーの大家だが、こんな小説を書いているとは知らなかった。スポーツ小説である。主人公はNFLのいろんなチームを渡り歩く3番目のクォーターバック。レギュラーでなく、二番手でもなく三番手。病院のベッドで目覚めるところから始まった。「なんで、おれが試合に出場していた?」という言葉が彼の位置を見事に示す。最高の試合を完璧にぶっつぶし、(何せ、パスはすべて敵に投げられて)、挙句にサックされて脳震盪でダウン。それが運が良かった(意識を失えて)というくらい。エージェントが見つけた先がイタリア。あのフッチボールの国にアメフトのリーグがあり、スーパーボウルもあるという。パルマ・パンサーズというチーム。判事のフルバック、レストラン経営者のランニングバックといったチーム。そのチームの中での再生の物語。正直、こういう話、好きです。楽しく読ませてもらった。あとがきにあったいくつかの彼の小説、読みたくなった。ということで、☆☆☆☆。

『解雇手当』ドゥエイン・スウィアンジンスキー ハヤカワ・ミステリ文庫

2009-09-16 22:30:13 | 洋物
 ドゥエイン・スウィアンジンスキーの二作目。この『解雇手当メアリー - ケイト』を本屋で見かけて買おうとしたが、前作『メアリー - ケイト』が出ているのを見てそちらから読んだ。それは正解。初めてこの作家をこの本で読んだら、読了しなかったに違いない。フィラデルフィアの高層ビルのオフィス。土曜に開催される緊急会議に招集されたスタッフたち。彼を待っていたのは、ボスの言葉。もう出られないと。そこからの展開はとんでもない。よくぞここまで、どうしてここまで、といった感じかな。何とか最後まで読んではみたが、一体なんだったのか。ふうっと。☆☆。

『チャイルド44』上・下 トム・ロブ・スミス 新潮文庫

2009-09-13 18:03:57 | 洋物
 1933年、ソビエトのウクライナの村、飢えに苦しむ村、少年が猫を捕まえに出かける所から始まる。時代は戦後に。大祖国戦争の英雄で国家保安省捜査官の主人公。部下の子供が亡くなる。殺人と訴える被害者の家族に、ソビエトでは犯罪は無いという「事実」を押し付ける。前半はソ連の不合理が延々と描かれて、ちょっと疲れる。陥れられた所で、かつての部下の子供と同じ事件に出くわす。ソ連では犯罪は無いということの不合理が見えてくる。伏線は密かに張られ、それが終盤に効いてくる。そいういう意味ではなかなか面白くもあるが、人間の描きは少々くたびれて、☆☆☆。評判は良かったけどね。


『ゴッホは欺く』上・下 ジェフリー・アーチャー 新潮文庫

2009-09-12 14:48:09 | 洋物
 アーチャーの「胸のすく名画サスペンス」。どうしてこう美人の女性がアートの専門家なんだろうって思うが、まあ小説だったらそんなものか。ルーマニア出身の美術史博士。その雇い主のルーマニア出身らしき銀行家。FBIの捜査官。それぞれがいささか典型すぎるきらいがあって、少々物足りない。ただ、どこかいい意味の軽さがあって、その展開は心地いいのだが、☆☆☆くらいかなと。


『コンラッド・ハーストの正体』ケヴィン・ウィグノール 新潮文庫

2009-09-07 23:16:33 | 洋物
 ベルギー生れでイギリスの大学で学んだというケヴィンの長編としては初紹介か。コンラッド・ハーストという殺し屋が、足を洗うことを決意する。彼の仕事を知っている四人の人間を殺すことに、というところから物語は始まる。カメラマン志望の青年がユーゴスラヴィアを旅行し、そこで内戦に巻き込まれる。恋人の死、そこから殺し屋の道へ。一人目を殺した後に、事態は制御不能の世界へ。ルクセンブルグ、スイスと国を渡り歩き、そこで不思議な出会いと違和感の中、徐々に大きな闇へという話。正直すっきり感がない。映画化されるそうだが、内面の表現が難しいだろうなって感じ。☆☆☆。


『誇りと復讐』上・下 ジェフリー・アーチャー 新潮文庫

2009-09-05 19:57:53 | 洋物
 アーチャーの『百万ドルをとり返せ』が新潮文庫から出たのが1977年というから、もう30年以上前。政治家、小説家、囚人実に数奇な運命を辿る作家の最新作。当方としては久々のアーチャーである。幼馴染との結婚。ダニーはベスの兄で親友三人とともに祝いの酒を。三人はロンドン下町育ち。そこにいたアッパークラスの酔っ払い四人と出合ったところから、話は一気に展開する。ベスの兄バニー、アッパークラスとの喧嘩のはずが、ダニーが殺人罪で逮捕。裁判の後に刑務所へ。ダニーの復讐が始まる。どこか、古めかしい感じがする。デーヴィット・コッパーフィールドみたいな善玉と悪玉。マイ・フェア・レディみたいなアッパーとミドルもしくはその下の言葉までも違うイギリス。これにイングランドとスコットランドという別の国。アメリカより馴染のない裁判制度。知っているつもりでいろんなこと知らなかったなぁ、という気になる。時々、インターネットとか出てきて、ああ、これは現代、21世紀の小説なんだと思い出したり。一種古典的な展開だが、流石に読ませる。おかげで寝不足となった。☆☆☆☆。

『ブレイクスルー・トライアル』伊園旬 宝島社文庫

2009-09-01 22:55:09 | 和物
 2007年第5回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。セキュリティー会社が建てたビルを攻略するというトライアル。そこにいくつかのチームが参入し、セキュリティー突破を競いあう。設定は奇抜。これにチャレンジする三つのチーム。管理人とその娘とその婚約者。冒頭にトライアル対象の建物の見取り図が登場し、期待をあおる。さて物語であるが、次第に登場人物の背後が明らかになる。それぞれの人物の持っている過去も。人物もそれぞれに描き込もうという努力もあるが、いかんせん、それが消化しきれていない。あの設定は結局何だったの?感が沢山残る。それなりに面白く読めもするが、やはり大賞受賞作ということは、アマが始めて認められたものということで、それなりではある。折角蒔いた種を刈り取れるようになったらと今後の期待。☆☆☆。