カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『許されざる者』レイフ・GW・ペーション 創元推理文庫

2019-02-28 20:46:30 | 洋物
 作者はスウェーデンミステリ界の重鎮という。主人公は元スウェーデンの国家犯罪局の長官、「角の向こう側を見通せる」と畏怖されていた。第一部が2010/7/5、第六部が2010/10頃までの物語。元凄腕長官ラーシュ・マッティン・ヨハンソンはお気に入りのソーセージを食べようとして倒れる。入院先の女医から、かつてのおぞましい犯罪の話を聞かされる。9歳の少女が暴行殺人の被害者となったその事件は時効となっていた。それでもラーシュは昔の同僚で親友ヤーネブリングらの力を借りて捜査を開始する。一種の安楽椅子探偵型のミステリとして始まる。このラーシュというのが実に魅力的な人物なのだ。ぶつぶつ文句を言って、実に人間味がある。親友のヤーネブリング、この事件の捜査担当であったというベックストレームという無能な警官。兄や妻、介護士や兄から派遣された付き添い。それぞれがとても魅力的。これは金脈発見と思ったら、どうもこの作がラーシュとヤーネブリングを主人公としたシリーズの最後の作のようです。この作者、作中にスウェーデンミステリファンならニヤリとしそうな小ネタを所々。巻末の解説によれば無能な警官ベックトトレームを主人公とするシリーズもなかなかとか。ただ、本作が現在唯一の日本語翻訳。是非、翻訳していって欲しいもの。☆☆☆☆☆。

『暗殺者の復讐』マーク・グリーニー ハヤカワ文庫

2019-02-26 02:11:11 | 洋物
 暗殺者グレイマン第2作。再読シリーズ。第1作を久々に読み、その後、続編を買って読み進めた。本作は買ったのは分かっていたけれど、行方不明。ようやく見つけて読んだ。買い足す前に読めば良かった。グレイマンことコート・ジェントリーのシリーズは登場人物が連続しているので、前作を忘れていると効果が半減してしまう。ということで本作。ジェントリーはロシア・マフィアのシドレンコの下で働き、スーダン大統領暗殺を依頼される。ジェントリー独特の判断基準で依頼を受けることに。そこにCIA時代の上官ザックが現れる。CIAの依頼は大統領の拉致。ここでジェントリーの判断基準でアメリカ国益も含めてそちらを優先に。成功すれば「目撃次第射殺(SOS)」指令も撤回になるという。命令はCIA秘密本部長デニ―・カーマイケルからという。ロシアマフィアの手引きでスーダン入国を図るも別の地点に飛行機は着陸。そこで国際刑事裁判所特別捜査官なるエレンという女性が登場。そこから作戦は迷走に。どうもこの女性が厄介なのだが、途中で姿が消える。このシリーズ独特のアクションシーンはなかなかの迫力。ジェントリーもかつてと同じシエラシックスとしてシエラウィスキーとの協同作戦を展開するが、国際政治が立ちはだかる。本筋の流れにガタガタ感はあるものの、読ませる力は強い。いろんな知り合いも登場するのはシリーズならでは。☆☆☆☆ほ。

『暗殺者の飛躍』上・下 マーク・グリーニー ハヤカワ文庫

2019-02-23 22:30:45 | 洋物
 暗殺者グレイマンのシリーズ第6作。今作ではCIAの雇われとして、中国のサイバー戦略部隊の天才ハッカーにして中国から逃亡した范を追う。中国人民解放軍、ロシアとの争奪戦、香港、ベトナム、カンボジア、タイと舞台は広がる。今回はロシアのSVRの女性将校ゾーヤというスーパーレディも登場する。コートのハンドラーはスーザン・ブルーアが務めているがこれが嫌な奴でというのは個人的な好き嫌い。冒険小説的な怒涛の展開は面白く、コートの善悪判断には少々?と思いつつ、時間は楽しく過ぎるので、☆☆☆☆。

『警視庁53教場』吉川英梨 角川文庫

2019-02-22 23:52:24 | 和物
 警視庁警察学校の1153期。それが題名の由来。なお警察学校ではクラスにその担当教官の名が冠して小倉教場と呼ぶという。警視庁の守村教場で担当教官である守村の死体が発見される。百合は府中署勤務の女性刑事。警視庁捜査一課の刑事を目指す。捜査一課の五味は守村と小倉教場の同期。明敏な洞察力で自殺として済まされそうだった守村の死を捜査の俎上に、立ち上がった帳場では百合を相棒として捜査を進める。現在の守村教場、そして五味、守村らがいた小倉教場の時代とを行き来しながら物語は進む。教場という特殊な世界での人間のうごめきが、大きな渦となっていく。長岡弘樹の教場小説よりも教場のどろどろ感が強く、より人間臭いのか。ミステリーとして、小説としての出来はまだまだで、☆☆☆ほ。

『生か、死か』上・下 マイケル・ロボサム ハヤカワ文庫

2019-02-20 22:03:18 | 洋物
 10年の刑期が満了する前日、オーディー・パーマーは刑務所を脱走する。同じ服役囚で親友のモスにもその理由は分からない。オーディー、モス。そしてFBI特別捜査官のデジレーの視点から物語は進む。オーディーが刑務所で何に耐えていたのか。オーディーの兄の話。捜査にあたるデレジーの感じる違和感。10年前、700万ドルの使い古しの紙幣の強奪事件。そこで頭を撃たれて意識不明となっていたオーディー。彼を撃った保安官。オーディーにはかつて愛した人がいた。ベリータとの恋の物語。逃避行。実に面白い。何が刑期満了の前日に彼を駆り立てたのか。☆☆☆☆ほ。

『あの家に暮らす四人の女』三浦しをん 中公文庫

2019-02-17 21:34:49 | 番外
 杉並区、阿佐ヶ谷駅まで20分にある古びた洋館。そこに母、40間近の娘、その友人と友人の若い同僚という四人の女性が住む。敷地には山田という老人が番人のように住む。鶴代、佐知、雪乃、多恵美という四人、「細雪」の登場人物と同じ名というのが出てくるように、平成の四人の女性の物語。織田作之助賞受賞作。佐知は父を知らない。母と娘、夫で父。ストーカーの青年、内装業の梶、そして山田。男性は彗星のような感じ。そこに父がいたのだよ、ということで話が進むのだけれど、なかなか男性には入りにくいような気も。☆☆☆。

『暗殺者の反撃』上・下 マーク・グリーニー ハヤカワ文庫NV

2019-02-16 16:15:43 | 洋物
 グレイマン・シリーズ5作目。グレイマンことコートランド・ジェントリーが遂にアメリカに帰ってきた。前作でモサドの力を借りてアメリカに向かったコート、自身への“目撃しだい射殺”指令の謎を解くために動き始める。目指すはCIA国家秘密本部本部長のデニー・カーマイケル。そこにはメイズ副本部長やスーザン・ブレーアといった面々が待ち受ける。アメリカに入り、手段を手に入れ、目的地へ。コートは進んでいくが、そこに様々な敵が立ちはだかる。今回のアクションはドキドキ。そこに様々な脇役、それもあ、あの時のと思う人物が何人も登場し、絡み合いながら進む。そして遂にその秘密が…。展開、アクションともにシリーズ中でも白眉。☆☆☆☆ほ。