冒頭に「視点はふたつ、真実はひとつ。あなたはどちらを信じるか?」とある。物語は不明の語り手、そして「彼女―アナ・アンドルーズ」BBCの元キャスター。「彼―ジャック・ハーバー警部」元ロンドン警視庁で今は田舎の警部。二人は元夫婦。物語は彼女と彼のふたつの視点で語られる。BBCでキャスターを務めた。ただし代打として。育休から元のキャスターが戻ると追い出され、田舎の事件の取材に駆り出される。夫であった警部は都会から逃れ、田舎の警察に。彼もまた事件に。その事件が二人に深く関わっていく。時代を越えながら、事件がさらい事件を呼んでいく。実に不思議。どんどんと引き込まれていく。それが終盤に一気に展開し、大したものであります。☆☆☆☆。
舞台は銀座のミニシアター。上映される映画は二年前に亡くなった末永静雄監督の追悼上映『夜、街の隙間』。20年以上前に撮られたこの映画はDVDにもなっておらず、一週間というこの上映を逃せばもういつみられるか分からない。平日の16時50分からの回。観客は6人。60歳、40歳、70歳、50歳、20歳、30歳。それぞれの観客の物語が映画の場面とともに語られる。この映画というのが、いい映画らしい。銀座の夜、そこに4組の男女と警官と猫だけが登場するという。監督もヒッチコックみたいにちょっとだけ出演。そして6人とは別の語り手と。やられたなぁ。6人の観客が映画で感じたように、最初の内はどうしていいのか分からずに進む物語。それが進んでいく内に、時々、人が交錯するような。そして、いやぁ、まいった。面白い。☆☆☆☆ほ。
主人公秋山善吉、工務店というより大工の棟梁。ただ者ではない。息子夫婦の家が火事に。息子は焼死、残された妻と子供二人が善吉の家にやってくる。息子が生きている頃は、ほとんど寄り付くことのなかった夫の実家。中学生の長男雅彦、小学生の次男太一、そして妻景子。善吉の妻春江。太一の物語、雅彦の物語、景子の物語と進む中で、善吉の輪郭が見えてくる。火事の原因について捜査する刑事宮藤の物語。それぞれの物語の中で、時に「作家とは、どうしてこう辛い世界を作っていくのか」と思わせる。スーパー老人善吉はカッコいい。シリーズにしたかったね。☆☆☆☆。
「本日の上映スケジュール」として10本の短編。悪魔、そして天使。そして霊が登場。悪魔は仕事として人を死の世界へと。失敗許されるのは3回まで。天使は悪魔のやり過ぎを時々防いでみたりもする。そんな10の物語です。☆☆☆ほ。
再読シリーズ。1998年刊。イギリスのSBBの元将校でXF警備社を経営するハワードにお得意先の建築会社社長から依頼が。サダム・フセイン暗殺の計画の立案。ハワードはその可能性を探り、彼を中心としたメンバーが集められる。元SASやローデシア軍のパイロット、そして抜群の狙撃力を持つ鹿猟の猟師。特殊部隊の狼たちが出撃する。そのプロフェッショナルな働きが面白い。これを望遠カメラで撮っているかのような役割をアメリカNROの監視・分析チームの面々。これまたプロで面白い。任務遂行に向け、さらにその後の展開と実に濃密でかつ緻密。さらに意表をつく展開まで持ってくる。☆☆☆☆。この後『暗殺阻止』で北朝鮮にという続編があるようだが、あったかな、この本。