法廷検事ブッチ・カープとその部下で恋人のマルレーネ・チャンピのシリーズ、第二作らしい。NYの検事局刑事裁判課課長のカープ、ユダヤ人で元バスケットのヒーロー。その部下で恋人がマルレーネ。麻薬ディーラーが次々と殺される。その背後にはどうやら警官が。NYの腐敗部分に立ち向かう。NYPDの刑事フルトン、その部下キングコールトリオと呼ばれる三人。役者がそれぞれにいい。ただし、多くの登場人物がもうひとつ躍動しきらない感もあり。マルレーネの追うレイプ事件、これももっと絡んできて欲しい。結構面白くて、第一作を読みたくなった。ただ、面白くなってきた頃に頁はもう終盤。おいおい、これで終れるのと心配したくらい。期待込みで☆☆☆☆。
久々に降りる筈の駅を降り損なった。主人公というか、主人公の一人、大阪の大学生イズミ。彼女が海外旅行に行きたがるのでバイトを変えて木枠解体業につく。圧倒的な肉体労働の中の疲労による陶酔感、気が付けば、彼女とは分かれ、学校からも足が遠のく。マルショウ解体には、破壊屋カン、赤面症イケメンのクドウ、リストラされたサラリーマンハカセ、親方のマルヤマ、昔からの仲間ミヤタ、マドンナのメロンちゃん、その友達でハデハデぶっ飛びのミヤコちゃんなど多彩な面々がからむ。肉体的な限界の中で青春物語というか、不思議な群像劇。神戸っぽい港町にいたハルキ・ムラカミの世界より、この大阪弁のムチャクチャ活力が心地いいかも。☆☆☆☆☆。ちなみに不思議な野球小説『イレギュラー』も読んでいた。三羽省吾という名前、やっと覚えた。『厭世フレーバー』は早速注文したよ。
本屋でこの人の新作の文庫が出ていた。まず、文庫第一作となっているこの本を読んだ。ニューヨークのチャイナタウンに住む中国人の女私立探偵リディア・チンが主人公。相棒はアイルランド系のアメリカ人ビル・スミス。チャイナタウン・プライドにある美術館に寄贈された中国輸出磁器が盗まれた。警察沙汰にはせずに探すということで、リディアの登場である。アメリカにいる中国人社会がそこそこに描かれているが、もうひとつでした。ということで、鉱脈になるかと思ったものがこの本にて終了。☆☆☆
日本でのジェイク・ラシターシリーズ、文庫版の第二弾。どうも第4作目あたりらしい。この間が出されていないのは何故か分からないが、愛すべき老検死官チャーリー・リッグスがすっかりラシターの父親代わりのような友人となっていた。コンピューターのチャットを絡めた連続殺人。美人の英国精神科医。元ベトナムの英雄の州検事。ラシターは検事からの依頼で特別捜査を担当するが、次々と死体が増えていく。それぞれのキャラはそこそこなのだが、やはりこのシリーズ、プロットの掘り下げが足りず、展開が強引過ぎて、やっぱ翻訳が続かないわけかという気分。☆☆ほ。そう思うと『マイアミ弁護士…』は成長を見せていたということかな。
元プロ・フットボール選手で元公選弁護人、今は法律事務所のパートナーとなっている弁護士、ジェイク・ラシターが主人公。『マイアミ弁護士 ソロモン&ロード』のポール・ルバインの本。これが結構面白く、アメリカで1990年、日本で1996年に出ていたこの本を読んでみた。整形外科医の医療過誤裁判の弁護を引き受けたラシター、この事件がどんどんと複雑な様相を呈していく。原告の義理の娘、怪しい義母、そして外科医も。ラシたーの有力証人というのが検死官を長くつとめたチャーリー・リッグス。愛すべき老検死官がいい味を出している。そこそこにキャラクターは面白いのだが、どうもこの解決はよく分からんというのが正直なところ。☆☆ほでいいかも。
リンカーン・ライムシリーズの第三弾。ようやく文庫化。ディーヴァーは好きな作家の一人で、新作は待望、待望。四肢に障害をかかえる科学捜査専門家ライム。その相棒で元警察官のアメリア。ライムが南部の町に手術を受けるためにやってくる。そこで発生した誘拐事件の解決に手を貸すのだが、二転、三転。おうこれをどうやって救うのだと思わせ、終ったと思わせ、裏切る、裏切る。少々たるみ感を感じたりもしたが、いやいやなかなかやってくれます。考古学専攻の女子大学院生、昆虫少年、乳癌だった保安官補、多彩な顔ぶれでこれもまた裏切る裏切る。ということで、やっぱうまいもんだなで☆☆☆☆☆。
荻原作品の中でも秀作だと思う。主人公は田舎町から東京の大学に進み、一般企業に就職しながら田舎町の市役所にUターンした男。なかなか魅力的な奥さんがいて、息子と娘。しょぼい田舎町の公務員の世界とそれを取り巻く世界は戯画化されているようで、実は上段でないところがまいる。一見それらしくて実は虚構というのより、流石にそれは、と思わせる部分がかなり本当で、登場人物に軽さを与えることでサラリと流していくのはこの人実にうまい。何というか成長ドラマであり、応援したくもなり、それでいて現実があって、また奇麗事の現実がぐさっとかつさりげなくえぐられ、限界かなと思いつつ、最後がぐっと。何だか分からなければ読んで下さい。☆☆☆☆ほ。
旗氏という店を持たない骨董商冬狐堂宇佐美陶子シリーズ第一作。この人の凄い所は、描かれている世界が虚構に見えない所かもしれない。大英博物館の鑑定のプロ。オールジャンルの贋作専門家。博物館のお仕事など、実際の世界とは違うことなのだけれど、それがもっともらしく思えるのは腕なのだろうな。ということで、達者だとは思うけど、湿っ気が相容れないので、☆☆。
旗氏という店を持たない骨董商冬狐堂宇佐美陶子が主人公。骨董業界を舞台としたミステリーということになる。このシリーズの二作目ということで、友人のカメラマン硝子、異端の民俗学者の助教授とか、国立美術館につとめ、鉄の研究者という男(国立美術館で国立博物館ではないらしい。そこに古代の鉄の研究者がいるのかね。)などが、まわりに集まる。カタカナ好きの私としては、この妙にウェットな感覚がちと違うよね感がある。非常に細かなデータを積み重ねていて、おう、この世界はこうなのだ、と思いそうだけど、こりゃ随分違う。それらしいだけにそうは思ってしまうだろうけどね。☆☆。とりあえず、このシリーズの第一作は読んでおくことにしとこう。
『アルアル島の大事件』のクリストファー・ムーア、デビュー作。この本、何かの書評で見かけて、お取り寄せで買ってあった。ははは、面白い。登場人物、いっぱい。どれも個性的。途中で悪魔に食われてしまう奴、それがまたちょっと出てきたり、ネットオカマのホテルマン、90歳の青年、さらに魔神も登場。田舎町にわんさかやってきて、あの筋、この筋が複雑にからまりながら話は進行。どうということはないけれど、明るく、楽しく、破天荒さが面白い。この世とどこかとの境目の無さは『アルアル島…』と同様。☆☆☆☆ほ、ですね。まあお読みあれ。