カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『神南署安積班』今野 敏 ハルキ文庫

2009-06-26 01:19:23 | 和物
 安積モノ。ハルキ文庫では最初の安積モノのようだったが、どうも最初に読むべきでないような。湾岸分署・ベイエリア分署モノの後に続く。臨海署が廃止され、当時の刑事課が移ってきたのが、これも新設の神南署。メンバーは安積警部補、村雨部長刑事、須田部長刑事、黒木刑事、桜井刑事。ちなみに、湾岸分署の初期に登場の大橋刑事がいなくて、その役割は桜井刑事になっている。9本の短編。内省型の安積のもと、抜群のチームワークの安積班。人間物語で進む。☆☆☆☆。

『触発』今野 敏 中公文庫

2009-06-25 10:23:56 | 和物
 再読シリーズ。最近、警察小説を読んでいた今野敏の本、随分昔に買って読んでいた。それがこの『触発』。主人公は自衛官。元傭兵の日本人。久々に帰ってきた日本に愛想を尽かし、特技の爆弾で事件を起こす。母がカンボジア人、父はカンボジアに医療協力に行っていた日本人という主人公、母親を地雷で無くしている。自衛官になり、独特の感覚から爆弾処理のスペシャリストに。このほかに、横井という不思議なキャラが味を出すのも、今野作品らしい味。日本版、不思議なテロをどう追い詰める…。人間ドラマになっているのは今野作品の味なんだろうな、もう少し事件が、と思いもするが。☆☆☆ほ。

『ロックン・ロール・ウィドゥ』カール・ハイアセン 文春文庫

2009-06-20 02:23:52 | 洋物
 主人公はフロリダの地方紙で死亡記事を担当する中年新聞記者。敏腕記者としてステップアップをしてきたが、業界再編の波に株主総会で反旗を翻し、そのポストに追いやられた。しかも亡き父と同じ年に死ぬのではないかという強迫観念にさいなまれている。エマという上司とはウマが合わず、所属する地方紙は利益主義の中で牙を抜かれという所。そこにロックスターが突然の死、その死亡記事を担当する内に、殺人事件の気配が…。『復讐はお好き?』ほどのハチャメチャ度は無いが、記者、元恋人、その娘、死んだロックスターの妹、ロックスターの妻で歌手など癖のある登場人物が走り回る。もっとはじけて欲しいけど、読める本ということで☆☆☆ほ。

『向日葵の咲かない夏』道尾秀介 新潮文庫

2009-06-17 23:24:24 | 和物
 マッキャモンの『少年時代』という小説が大好きだ。少しだけ似ている気がしたが、ううむ。ミチオという小学4年生。その同級生のSが死んでいた。それを見つけたところから物語は始まる。3才の妹ミカ。母親は少々常軌を逸しており、父親はそれに対して何も言わない。Sの遺体が行方不明になっていた。Sは何と、蜘蛛に生まれ変わってミチオの所に。Sに頼まれ、遺体探し、さらに犯人探し…。という、途中、何だか嫌な気分になり、それでも読んだが、マッキャモンのマの字もない。個人的に嫌いな本。ということで、ほ。

『蓬莱』今野 敏 講談社文庫

2009-06-15 00:50:44 | 和物
 今野敏という作家は実に多作な人のようで、ジャンルも幅広い。ノベルズ系から本格警察小説へと展開しているよう。さて、この『蓬莱』である。主人公はゲームソフト会社の社長渡瀬。会社といっても渡瀬、プログラマー3人、女の子1人という小さな会社。プログラマーの一人大木が企画し開発した「蓬莱」というシュミレーションソフト、そのスーパーファミコン版販売にあたって事件が起こる。ヤクザの恫喝、大物政治家の影、大木の突然の死。手がかりは「蓬莱」というソフト。日本の古代らしい場所から国づくりが始まる。そこに徐福伝説が背景としてあることが分かってくる。神南署の安積が登場。まだ彼のシリーズを読んだことが無いが、これもその内、読んでみようか。なかなか面白い展開、「蓬莱」というゲームもやってみたくなる。一気に読了。☆☆☆☆ほ。


『ビート -警視庁強行犯係・樋口顕一』今野 敏 新潮文庫

2009-06-13 20:50:40 | 和物
 警視庁強行犯係・樋口顕一シリーズ第三作。警視庁捜査二課。銀行の不良債権飛ばしの内偵を進める。銀行は大学柔道部のOB関係を使い、刑事から情報を脅し取る。刑事の長男もまた同じ大学柔道部。次男は不良となって引きこもりがちに。そんな家庭が舞台となって柔道部OBの銀行員が殺される。家庭、ダンス、そんな中で樋口は相変わらず自信の無さそうで、他人に気を使う男で。著者のあとがきも力が入っていたが、快作。☆☆☆☆ほ。

『復讐はお好き?』カール・ハイアセン 文春文庫

2009-06-12 00:51:03 | 洋物
 『大魚の一撃』扶桑社ミステリー、『トード島の騒動』といった作品のハイアセン。昔、読んだことあると思うけど。舞台はフロリダ。そしてエヴァーグレーズという湿地の環境問題も。冒頭で、クルーズ船から女性が一人落とされる。犯人は夫。ところがこの妻は大学時代水泳をやっていたとかで、無事に生き延びる。遺産で大金持ちの妻、怪しげな生物学博士の夫。妻はどうして殺されかけたのか分からない。そこに元検察局捜査官の中年(初老)男、さらには悪徳農園主、そして毛むくじゃらの大男などが次々と登場。アップテンポで登場人物がそれぞれにアクが強くて面白い。あれまあれまの展開で、殺人場面がある割りに、ほとんど人は…。という不思議な展開。楽しく読ませてくれたので、☆☆☆☆。

『切断』黒川博行 創元推理文庫

2009-06-06 17:44:53 | 和物
 大阪府警捜査一課シリーズの第7弾ということだが、この作品が大きなターニングポイントになるようで。警察小説、それも大阪弁のしゃべりを中心にしたものから、ハードボイルドに。あるいは犯罪小説というのか、犯人側の視点が加わった。これまでの軽妙さは薄れたが、警察、犯人と視点が切り替わりながら進む展開はなかなかどうして、読ませてくれる。このテンポと人への観察が加わっていき、『疫病神』といったあたりに来たのかなと。☆☆☆☆。

『海の稜線』黒川博行 創元推理文庫

2009-06-05 22:41:14 | 和物
 「黒川博行初期の最高傑作!」と帯の惹句。大阪府警シリーズ、総長こと総田部長刑事とブンこと文田巡査部長のコンビ。これに東京から来たキャリアの警部補が加わる。高速道路で自動車が爆発、男女二人が死んだ。その身許が割れない。そこから次第に闇が広がる。現場の大阪人とキャリアの東京人、というのが裏テーマであるのだが、これ、面白くないのだなぁ。「初期の」ということか。☆☆ほ。