警視庁キャリア竜崎伸也のシリーズ。スピンオフ短編集。このシリーズの脇役達が主人公をつとめる。副署長貝沼の「漏洩」、竜崎が恋した畠山の「訓練」、第二方面本部管理官野間崎の「人事」、刑事課長関本の「自覚」、地域課長久米の「実地」、強行犯係長小松の「検挙」、警視庁刑事本部長伊丹の「送検」。それぞれの立場から描かれることで、それぞれの人が。野間崎がねえ、とか。強行犯係長が主役か、とか楽しい。戸高は活躍するも、主人公にはならないのだね。☆☆☆☆ほ
調査中に階段から転落して重症の事務所長島岡、彼の部下、間宮、松代、飯田は事務所の危機の中、事件の謎を追う。そこに政治家や企業が絡みという物語。若き探偵の物語というが。☆☆☆。
時は幕末から明治維新への回転期。場所は江戸城。尾張藩の江戸詰めの徒組頭加倉井隼人は官軍の先遣隊長として江戸城に。そこに一人の御書院番士が居座っているのに遭遇する。旗本的矢六兵衛、この男をそこから退去させることができるのか。勝海舟、西郷隆盛、大村益次郎、福地源一郎から明治天皇までが登場。この旗本が何故そこに居座る、この旗本は何者、さまざまな語り手がこの人物について語るが、謎は謎。宿直部屋から次第に上座へ部屋を移しつつ進む物語。幕末という時代、人の生き方、時代が最も大きく動いた中でぐっと迫るが謎はついに謎…。☆☆☆☆。
あの垣根涼介の歴史小説。明智光秀、そこに愚息という僧、武芸者新九郎。二人の人物が動いて行く。光秀、細川藤孝らが近くで動く。それなりに面白いのだが、垣根涼介の歴史小説というのがどうだかはまだこれからかな。☆☆☆ほ。
ニューヨーク市警の刑事マロリーのシリーズ第8作。ウィンター邸で保釈中の殺人犯が殺された。そこにいた老婦人と小柄な姪。そこにはウィンター家の深い闇が…。マロリーが突き進み、58年前のウィンター邸の大虐殺以来行方不明になっていた老婦人ネッダに救いの手を指し伸ばすバトラー。二人の間はどうなってしまうんだろうか。ちょっと心配。☆☆☆ほ。
『悪果』に続くマル暴担当刑事堀内、伊達コンビ。ともに退職し、元刑事の二人。伊達は競売屋の調査員、堀内は東京で女に店出させて無聊をかこつ。再び大阪で結集の二人、パチンコ屋の倒産にからんで事件の中に入り込む。元デカ、とても堅気じゃない二人が極道や元警官、からみに絡む。黒川作品としては桑原、二宮シリーズの方が救いがあるような。☆☆☆ほ。
二蝶会の桑原、建設コンサルタントの二宮のシリーズ。暴対法の施行が影響し、仕事さっぱりの二宮の所に桑原がやってくる。映画への出資話。北朝鮮が舞台ということで取材も受ける。ところがプロデューサーが金を持ち逃げし、桑原が追い込みをかける。例によってぼやきながらも巻き込まれる二宮、悠紀は相変わらず可愛くて、マキという小鳥を愛しながら、すまない思いで母親に借金。セツオに加えて木下という新しいキャラも加わり、走り回る。実に、面白い。☆☆☆☆ほ。
漫画家にして、小説家にして映画監督でもある木内一裕。元ヤクザの探偵矢能シリーズ。養子の栞と暮らす。菱口組の直系燦宮会から呼び出しがかかる。女が相談に来る。そこから探偵の謎解きが始まる。消えたヤクザの理事。消えた女。それを探し、探る。ヤクザだらけの中で、小学生の栞と矢能。不思議な空気を作り出す。ヤクザの論理、ヤクザの世界、カタギとは言ってもヤクザであったことで分け入り、謎が解けていく。ということか。☆☆☆☆ 続編も読むか。
再読シリーズ。京極高次、柴田勝家、福島正則 という三人の武将を主人公とした三本の中編。I戦国の末期、三人の武将を主人公としながら、秀吉、信長から秀吉、家康 という人々の世界が、運命の輪の展開が。時間が有れば小説。☆☆☆。
柴崎令司警部、警視庁総務部企画課係長から綾瀬署警務課長代理に、の第四作。今回は初の長編。小学生の少女が帰らない。誘拐か、あるいは変質者による犯行か。綾瀬署の対応に対して、警視庁捜査1課は別の見立て。署長の坂元、副署長の助川。柴崎も現場へ、被害者宅へと顔を出し、自然と捜査の中に。かつて手帳を紛失した高野が成長しつつある。意外な展開には驚いた。☆☆☆。