第一回パピルス新人賞受賞作。幻冬舎の雑誌『papyrus』で2007~11年までの新人作家を対象とした賞。ちなみに大賞は2本、あと特別賞が4本とか。都営芙六第二団地の6棟502号室に住む渡会悟。何十棟もある団地のための新設の芙六小に通い、卒業式の日、事件が起こる。隣の席に座っていたマヨネが少年に殺される。悟は団地を出ないことに決め、107人の同級生の見回りをすることにする。看護婦の母と二人暮らしの悟。団地の外にある中学にも通わない。見回りに最初同級生も付き合ったが、次第に一人に。コミセンの本を読み、映写会の映画を見、大山倍達を尊敬して腕立て、指立て、指立ての逆立ち歩行、眼突きと金的蹴りといったトリーニングをこなす。団地の皆を守るため、同級生を守るため。隣の501号室に住む同級生で女子生徒の松島とベランダで話す。引きこもり気味の薗田とも親しい。中学卒業の免状をもらい、団地のケーキ屋に就職。師匠のもとでパン屋修行とパトロールの日々。次第、次第に団地から同級生が去っていく。家の引っ越しや大学、就職と。そして団地自体も何度かの補修工事の後に、人が減り、さびれていく。同級生との恋もあったが、団地から出る事ができないまま、時が流れていく。少々残酷なほどに。映画にもなったそうです。日本の戦後、それが見える。そしてそれを団地の中だけにいた悟から見えてくる。☆☆☆☆ほ。
再読シリーズ。第3回『このミステリーがすごい』大賞受賞作。久保寺健彦さんの本を読み、そこで水原秀策さんの名前を見ての再読。主人公は人気球団オリオールズ(巨人がモデル)の左腕投手沢村。東大出出身らしい、それでアメリカに留学の後、オリオールズにドラフトされて入団。クールというか、頭脳派の投手。その沢村が突然、謎の男達に襲われ、『暴力団との癒着』という投書が球団やマスコミに寄せられる。その謎に沢村本人が挑んでいくという話です。受賞作に手を入れての作品ということですが、今読むと☆☆☆までか。
サンケイスポーツの記者から作家に転身、その第一作で第1回サムライジャパン野球文学賞大賞した作品。メジャーリーグで活躍するジャスティン・キング、キム・ギボンという韓国系アメリカ人スラッガー。彼が実は日本人であり、その彼を日本の球団に入団させるために球団系列の敏腕記者が派遣される。仲村篤、沖縄で売春婦を母に生まれ、その後大阪に。高校野球で一度だけピッチャーで登板、ノーヒットノーラン寸前まで行きながら姿を消した。仲村の高校時代のチームメイト、在日朝鮮人ユン・ヒョンス、その影がジャスティン・キングのまわりに。野球小説ではないけれど、元メジャーリーガー香川の話などは面白い。少々、設定が込み入って、飛び過ぎで未消化で☆☆☆。
父と長男と次男、三人の男たちと家族の物語。笠間哲治は東都スポーツ(スポーツ報知がモデル)の記者。同期に二歳年下の伊庭がいる。スクープを抜きまくり、社内でも孤高の伊庭、人との関わりの中で仕事をし、伊庭にくいついていこうとする笠間と二人は同期のライバル。伊庭が野球部長となった時、笠間は営業局即売部次長に出される。駅売りがまだ大きな意味を持ち、それでいて時代の変化が現れ始めていた平成という時代、記者からの転身を命ぜられくさる笠間。しかしそこで活路を見出し、自身の在り方を探っていく。次の主人公は長男の翔馬。小さいころから頭が良く、野球のセンスもある。県立進学校から6大学に進み神宮での野球を目指したが、高校受験で挫折。野球強豪の私立高校で活躍、しかし野球特待生で入った大学ではレギュラーをとれなかった。それが父と同じスポーツ新聞の日日スポーツに入社。記者を希望するも即売部に。そこで頑張り、記者となり、独自のやり方で頭角を現す。そこに伊庭の影が。続いて次男薫の物語。小さい頃から人見知り、中学でやった野球もやめてしまい、高校でも何もせず。大学はあきらめてIT系の専門学校も中退。それが父と同じ東都スポーツにアルバイトとして勤めることに。
親子二代、三人の物語。スポーツ新聞というもの、記者というもの、そして親子、夫婦。いろいろな問題がそこにある。☆☆☆☆。
親子二代、三人の物語。スポーツ新聞というもの、記者というもの、そして親子、夫婦。いろいろな問題がそこにある。☆☆☆☆。