カタカナ・ミステリー大全

洋物のミステリーの読書日記。原則は文庫本のみ。

アメリカの警官は、ドーナッツが大好き!

どうぞ、召し上がれ。

『特捜部Q カルテ番号64』ユッシ・エーズラ・オールスン 早川ポケット・ミステリー

2023-11-30 20:13:48 | 洋物
 再読シリーズ。特捜部Qのカール・マーク警部補シリーズ第四弾。「がラスの鍵」賞(北欧)、パリー賞(米)、エル文学賞(仏)、「金の月桂樹」賞(デンマーク)など各国の栄冠に輝いた…というのもうなずける。扱うテーマは実に重い。デンマークのスプロー島、その島では50年前まで、ふしだらというだけで女性が連れてこられた監獄。そこでは強制不妊手術までも。そんな島にいた女性、彼女の物語。特捜部Qではアサトとローセがある時期に何件もの行方不明事件があり、未解決のままであることに気が付く。その捜査の中でQの面々はデンマークのかつての暗い闇に気づく。そしてそれが現在も続き、表舞台に出ようとしていることも。オールスンはこの重いテーマを選び、それを世に知らしめるためにこの小説を書いた。そしてその小説は小説としての出来も出色のもの。アサドの謎はまだまだ深まる。ローセもいいのだ。☆☆☆☆☆

『つまらない住宅地のすべての家』津村記久子 双葉社 LB

2023-11-17 23:14:15 | 和物
 とある住宅地。路地を囲む10軒の家々。そこに住む人々の物語。冒頭に住宅図があり、それぞれの家族構成が簡単に示される。刑務所から脱走した女性がその町付近に来ているとの情報が舞い込み、そこから家々の物語が紡がれていく。町内会で協力して見張りをするということで、普段とは別のうねりが家々に起こる。次第に明らかになる人々の世界、その中で必死に生きる人々。それぞれの過去がつながることもあれば、思わぬ展開に見えてくるものも。不思議な、そしてどこにでもあるような物語か。☆☆☆☆。

『特捜部Q Pからのメッセージ』ユッシ・エーズラ・オールスン 早川ポケット・ミステリー

2023-11-14 22:42:48 | 洋物
 再読シリーズ。特捜部Qのカール・マーク警部補シリーズ第三弾。北欧ミステリの頂点「ガラスの鍵」賞受賞作。帯には「著書の最高傑作!」という惹句も。確かに面白い。それでも第三作で続編もあるのに「最高傑作」というのはいけない。でも面白い、確かに。主人公のカールは有能でひねくれていて。謎の助手アサドは不思議な行動もあれば、思わぬ鋭さとパワーの炸裂も。新キャラのローセとユアサ、今回もそれぞれのことを少しづつ明らかにしつつ、さらに謎を深めながら、ミステリは進む。ボトルメッセージ。海を越えて流れ着く間にかなりが解読不能に、そこから捜査が始まる。もう一方で、キリスト教の中の大きな闇。新興宗教というべきか、分派キリスト教狂信派とでも言うのか、いびつな宗教世界に闇が広がる。視点を変えながら、複雑な物語は展開し、カールらは実に人間的であり、読ませる、読ませるという感じ。☆☆☆☆☆。シリーズの面白さはこういうものという作品。

『特捜部Q キジ殺し』ユッシ・エーズラ・オールスン 早川ポケット・ミステリー

2023-11-11 20:24:59 | 洋物
 再読シリーズ。特捜部Qのカール・マーク警部補。部下のアサドに加えて、ローセという女性アシスタントが加わる。カールは妻のヴィガとは別居中。義理の息子イェスパが同居し、違法である地下の間借り人モーデンが料理の名人。シリア系のアサドの正体は不明、素晴らしいひらめきを見せるかと思えば暴発も相変わらずローセはこれまた変人。ほぼ全身不随状態の相棒ハーディは病院からカールの下へ来たがっている。そんな中、不思議な捜査資料がカールの下に置かれていたことから、事件は始まる。デンマークの上流階級が通う寄宿学校。そこを舞台とした大きな闇。その闇がまたどす黒く、その闇を中心に物語は回る。☆☆☆☆。

『特捜部Q 檻の中の女』ユッシ・エーズラ・オールスン 早川ポケット・ミステリー

2023-11-09 15:33:56 | 洋物
 再読シリーズ。デンマーク、コペンハーゲン警察に新設された特捜部Q。地下のその部屋に送り込まれたのは敏腕刑事カール・マーク警部補。捜査中に襲われ、部下一人が死亡、一人が寝た切り状態となる負傷、そこで精神的に追い詰められて地下送りに。過去の事件の情報を整理するという話から、5年前の政治家の行方不明事件を追うことに。別居中の妻は愛人の画家とのギャラリーにかかる費用を無心してくる、同居している妻の連れ子は我がまま勝手な同居人。アシスタントとなったシリア人のアサドは、謎の過去、特殊な能力を持つと、それぞれの個性がとてもいい味を出している。デンマークのことが見えてきたり、家族の愛がとても大切に感じられたり、驚きの連続で大満足。映画もWOWOWで見たが、やはり本一冊を映画にすることは難しい。本の方が上でした。☆☆☆☆☆。