団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

宝くじとギャンブル依存症

2016年12月20日 | Weblog

  佐渡へパックツアーで行った時、バスガイドさんに尋ねた。「佐渡にはパチンコ屋ないんですか?」「ありますよ。お好きなんですか?」「いいえ、どこへ行っても派手なギンギラギンのパチンコ屋にうんざりするのに佐渡でまだ1軒もそういうの見ないので」「けっこうありますよ。でもそういわれれば目立たないですね」 早とちりの私だが、一瞬でも佐渡にはパチンコ屋がないと考え、清々しく思えたのは事実だった。

 3,40年前、こんな話を聞いたことがある。中国語の通訳をしている人が、中国からの視察団を市内と工場を案内した。工場から出て近くのパチンコ屋の前を通った。店内で並んだパチンコ台の前で横のダイヤルを操作しているたくさんの人を見た視察団の一人が「この工場は何を作っているのですか」と。通訳の知人は何と答えていいか言葉に詰まったという。とにかく日本中いたるところに派手な大駐車場を持つ大規模パチンコ屋がある。

 12月15日1時、IR推進法案(一部修正案)は衆議院本会議で採決され、賛成多数で可決されてIR推進法が成立した。パチンコ、競馬、競輪、競艇、宝くじ、などのギャンブルに加えて新たにカジノが解禁となる。現在日本には536万人のギャンブル依存症がいると言われている。参議院議員の山本太郎さんが議場で「パチンコやスロットの規制をせずに、どうして次の賭場を開くようなことをさせるんだよ!おかしいだろって」と叫んだという。おかしい。私もそう思う。カジノの前にパチンコだろうが。

 そもそも世の中ギャンブルであふれている。小学校の時、クラスにとてもかわいい女の子がいた。ある日その子の父親の名が新聞に載った。地方公務員だった父親が賭けマージャンをしたとして逮捕された。早速それを知った男子生徒の数人が彼女に「おめんちの親父は役人のくせして賭けで捕まったのか・・・」 背の低いその子は、座り込んで両手で顔を覆って泣いていた。人のうわさも75日。その後、何もなかったようにその子も元気になった。父親は役所をやめて農業を継いだ。近所にもパチンコ狂いして離婚という家庭もあった。幸い私の父親は賭け事と株などの相場に強い拒否反応を持っていた。母親は金をギャンブルに使うことなど考えてみたことがない人だった。宝くじも買わなかった。ただ数少ない年賀状の番号だけは、二人で目を皿のようにして当選番号を調べていた。

 知人の医師が賭けゴルフをしていて、最後のパターを打とうとしてグリーン上で心臓発作を起こして突然死んでしまった。噂では4人で1人100万円をかけた勝負だったそうだ。住んだどこの国でもギャンブルはあった。人間はイチかバチか、白か黒か、半か丁かが好きなのだ。投資だというが、株もFXもギャンブルそのものだ。自制することは人間には至難の業である。

 日本は不思議な国だとよく思う。憲法で戦争しないと明記して自衛隊を持ち、政教一致を禁じていても宗教政党が存在する。賭博は禁止されても、パチンコの景品交換所は、公然と現金に換えている。こんないい加減なことをしている国が国際的にカジノを運営することができるのだろうか。生き馬の目を抜くようなラスベガスのカジノ会社などと闘えると本気で思っているのだろうか。

 年末ジャンボの宝くじの特賞は10億円だそうな。1等当選確率は2000万分の1。買わなければ当たらない、が以前の私の口実だった。株も資本主義の礎だと大見得きって積極的に参加した。結果は父親言った通り。「自分の手で稼がない金には翼があり、胴元に戻る。その上、国家が印刷した金は、すべて国家に戻る。国家は最強の胴元」 

 たとえ2000万分の1でも夢を持ちたい気持ちはよくわかる。でも私はずいぶん前に宝くじを買うのをやめた。もし当たったら間違いなく私のノミの心臓は梗塞するから。逆転の発想をすれば、2000万分の1の確立で命をなくすことを回避して“今”というリッチな気分を少しでも長く味わいたい。


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