団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

JR北海道とセネガルの鉄道

2014年01月07日 | Weblog

   昨年、鉄道脱線事故や車両トラブルが北海道で連続して起こった。原因はJR北海道の維持管理の不徹底だった。

 アフリカのセネガルに2年間暮らしたことがある。首都ダカールから隣国マリへ鉄道があった。一日に一列車が運行されていた。

 私は、ほとんど毎日魚市場へ獲れたての新鮮な魚を買いに行った。セネガルでの生活に天気の心配はなかった。毎日が“晴れ”だった。雨は雨季の数週間だけにしか降らなかった。年によってはまったく降らないこともある。子供のころから機関車が大好きだった。魚市場へ行く途中、線路と平行して走る道路があった。ダカール駅の前も通った。鉄道の駅が持つ独特の雰囲気は、どこの国でも私の心をとらえた。

 セネガルの鉄道はディーゼル機関車を使っている。驚いたことに線路に砂利が敷いてなく、土がむき出しだった。枕木もフランス植民地時代のものがそのまま使われている。レールもそのままだと聞いた。運行本数が少ないのでもっているのだろう。脱線は日常的に起こる。だましすかしてそのままで使っている。ダカールにあった火力発電所もフランス統治時代のものをそのまま使っていたのでタービンの故障による停電も恒常化していた。発展途上国がいくら故障修理に長けていても、それには限度がある。繰り返す故障による不便を当たり前のことと受け入れる。

 日本人にはセネガル人のような諦めからくる忍耐強さや悠長なものの受け止め方はできない。日本の鉄道、特に数分おきに運行する大都市圏では、維持管理にも多額な費用と人材を充てている。それができるのはやはり資金があるからだ。レールの下に敷く砂利も砂利の角が取れ振動を吸収できなくなり、乗り心地が悪くなると新しい砂利に取り換えられる。以前は人力でやっていたが、今ではロボットのような機械がこの微妙で困難な作業をやってのける。枕木やレールの繋ぎ目の点検も厳しく管理されている。2本のレールの間隔は日常的に検査計測され安全運行に貢献している。

 JR北海道とセネガルの鉄道が私の中で重なる。民営化で国鉄は4つの民間会社に分割された。これはフランスから独立したセネガルが自力で鉄道を運営維持しなければならなくなったのと似ている。北海道もセネガルも気候が厳しく、利用者も少ない。安全性はどこの鉄道でも同じく求められる。気候が厳しい分、保守点検は更に厳重に行わなければならない。これでは赤字は膨らむばかりである。しかし自らの資金には限度がある。資金不足が安全管理に手抜きを生む。JR北海道の脱線や列車トラブルは必然である。民営化とはある種の切り捨てである。どこかで線を引かなければ、無理に無理を重ねれば、鉄道事業は人命に関わる。解決策はあるのか。安くて安全な鉄道に代わる交通手段はあるのか。

 広い北海道の鉄道の旅は、魅力がある。だからと言って維持し続けて、列車が走るたびに赤字を増やし、それを国が補てんするわけにはいかない。私は安全を最優先したい。セネガルでも鉄道は使わなかった。見るだけで終わった。

  今は一日のほとんどを部屋にこもっている。あらゆる人的ミスによる事故がないよう願い、祈るしかできない。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 高梨沙羅選手とサケのオムスビ | トップ | 親戚・知人・友人がいない国... »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事